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子どものこれから
勘違い個性論 NPO法人ソフトボール・ドリーム理事長
宇津木妙子
第3回 チームの一員として

一人ひとりの個性を尊重しながら
チームが一つになれるように導いていく


チームを一つにまとめるために「目標を持つ」

写真提供:宇津木妙子さん
 個性豊かな選手たちをどうやってまとめていくかは、指導者の采配にかかっています。いろいろな問題を抱えていても、いざ試合になるとみんなが同じ方向を向いて戦える。これがよいチームの条件です。
 では、チームを一つにまとめるには何が必要でしょうか? それは目標を持つことです。目標はたった一つ、勝つこと。勝つためには自分が何をしなければならないのか? チームにどんな貢献ができるのか? それらを選手にどこまで理解させられるかがカギになります。

一人ひとりの役割を決める
 日本代表チームの監督を務めていたとき、勝利を目指して戦うために、私は選手一人ひとりの役割を明確にしました。たとえば、打順オーダーやピッチャーの起用をすべて決めて選手に公表。いくつかのゲーム展開を想定し、そうなったときの攻め方・守り方を具体的に提示しました。すると、選手は自分に求められるプレーを盛り込んだ練習メニューを自主的に考え、一生懸命に取り組んでくれるようになります。自分の役割をしっかり認識し、その中で自分の持てる力を精いっぱい発揮しようとする。それは自分の持ち味、つまり個性を磨くことにもつながるのです。

 また、選手には練習以外でも役割を課しました。ソフトボールを離れれば、スター選手を特別視する必要はありません。私が監督だった日本代表チームでエースといえば、やはり上野由岐子投手です。若手ながら別格の存在感を放っていた選手でしたが、合宿や遠征先でも他の選手と同様に雑用や後輩の仕事もやってもらいました。上野は「なんで私がこんなことをしなくちゃいけないの?」という不満を持っていたかもしれません。けれど、彼女は文句一つ言わないで素直にやってくれました。だからこそ、いざ本番で上野がピンチになれば「助けよう」と、みんなの心が一つになれたのです。

全員にチームビジョンを説明する
 どのチームにもスター選手という核となる存在がいるものです。持って生まれたセンスや抜きんでた技術は戦力としては欠かせません。しかし、花が美しく咲くためには葉や茎も必要です。私はそのことをどの選手にも理解してもらうために、「こういうチームを作りたいんだ。だからお前にはチームのためにこうしてもらいたい」と、一人ひとりに言葉を選びながらチームビジョンを繰り返し説明してきました。監督はグラウンドだけでなく生活面においても配慮が不可欠。叱るタイミングや取材を受ける選手のセレクト、裏方選手へのフォローなど、私ができる万全の注意を払いました。すべてチームづくりのためです。

―実業団チームや日本代表チームと監督業に没頭してきた宇津木さんですが、引退後はソフトボールの普及活動にも力を入れ、子どもたちの指導に全国を飛び回っています。第4回は、そんな宇津木さんが子どもたちの個性を見極めます。

【宇津木妙子オフィシャルブログ「心」】
http://utsugitaeko.aspota.jp/

【先生たちのちょいカツ!】
 宇津木妙子さんが自らに入れるカツとは?
http://www.tokaiedu.co.jp/kamome/contents.php?i=332

(構成:狭間由恵)
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【うつぎ・たえこ】
1953年埼玉県生まれ。ユニチカ垂井で選手として14年間プレーした後、日立高崎女子ソフトボール部(現・ビックカメラ女子ソフトボール高崎)の監督に就任し、数多くの優勝に導く。1997年から日本代表監督を務め、2000年のシドニー五輪で銀メダル、2004年のアテネ五輪で銅メダルを獲得。2005年に日本人初の世界ソフトボール連盟の殿堂入りを果たす。現在、NPO法人ソフトボール・ドリーム理事長、東京国際大学の特命教授・女子ソフトボール総監督、ビックカメラ女子ソフトボール高崎シニアアドバイザー、世界野球ソフトボール連盟理事を兼務しながら、普及活動などに務める。著書は『ソフトボール眼』『宇津木魂 女子ソフトはなぜ金メダルが獲れたのか』など多数。
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