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きれいをつくる
先生たちのちょいカツ!
第10回 宇津木妙子 先生(NPO法人ソフトボール・ドリーム理事長)
 先生が自分に“カツ”に入れる場面にスポットを当てた連載企画「先生たちのちょいカツ!」もいよいよ第10回! 今回は、女子ソフトボール元日本代表監督の宇津木妙子さんの登場です。長きにわたりソフトボール界をけん引し、普及活動や指導のために国内だけでなく世界をも飛び回る宇津木さんの“カツ”とは? 指導者魂に燃える熱いインタビューに注目です!

覚悟の中で生きています!



 指導者は教え子としっかり向き合う覚悟が必要です。私にとって、3時間3000本のノックが“カツ”の象徴でした。こっちが倒れるか選手が倒れるかの真剣勝負。気合いと気合いのせめぎ合いです。クタクタになってでも伝えたかったのは、“もう一歩を踏み出す勇気”。「しんどくて止めたい」という試練のときにこそ、「もう一歩踏み出せば、自分にも相手にも勝てる。そうやってうまくなるんだ」ってことを全力で教えてきました。本気でぶつかり合えば選手との絆も生まれるはず。決して厳しいだけの場ではありません。

 現役を引退してから指導者として38年間、教え子たちにはずっと自分の背中を見せてきました。そのことを強く意識してきたせいか、普段の生活にも自然と“カツ”が入ります。例えば、食事は朝と夜のみの1日2回。現役時代に一度、試合前に食べた物が原因で体調を壊してしまい、それがトラウマに。以後、「昼は食べない」と決めて何十年にもなります。スケジュールに関しても、1週間ごとに1日のタイムテーブルを事前に組んでおく。あらかじめ決めた時間に起きたら2・3時間のトレーニングをし、その後でシャワーを浴びて予定どおりの時間に外出する。ちなみに前夜は、明日1日の動きや講演で話す内容をイメージして、翌日着る洋服を準備してから就寝……。こうすることでペースを崩すことなく、常に全力で物事に対処できていると思っています。自分でも「すごく緊張して生きているな」って思うけれど、人生に夢や目標がある以上、まだまだ頑張らなきゃ。365日、自分にムチを打っています(笑)。

2015年11月に千葉県習志野市で開かれたスポーツ教室
写真提供:宇津木妙子さん
 現在は実業団と大学にかかわりながら、普及活動や海外研修、2020年の東京オリンピックに向けた取り組みなど、さまざまな活動に携わっています。その都度、現場を経験した者として「どんな助言をするべきか?」「どんな意見を求められているのか?」と自問自答しています。先日イタリアで行われた指導者研修では、基本的な技術のほかに「監督はちゃんとした理念を持つべきだ」というチームづくりの姿勢も教えてきました。押しつけではなく、その国ごとのソフトボール文化が根づいてくれることを願っているからです。また、全国で開催するソフトボール教室では子どもたちにノックやキャッチボールを体験してもらい、一生懸命に努力することの大切さを伝えています。走・攻・守を併せ持ったソフトボールは、道具を使いこなして先を読んで行動するチームスポーツ。その特性を活用すれば、社会性や人間力を養う手段として生かせると思います。将来を見据えて、全国の教育現場や人材育成の場で積極的に取り入れてほしいですね。

 ソフトボールを出発点に、いいチーム、いい組織、いい世の中をつくりたい。これからも置かれた立場と役割の中で、ソフトボールの楽しさや醍醐味を精いっぱい伝えていくつもりです。きれいごとや理想論だけでは前に進めません。責任を持ち、覚悟の中で生きています!

カツナンバー
『加山雄三ベスト40』

価格:2857円(税抜き)
発行元:ドリーミュージック・

現役時代から日本代表監督のころまで、好きで聞いていたのが加山雄三さんのベストアルバム。ハードな練習中はもちろん、遠征のバス移動や試合中までもBGMで流していたほど。「とにかく波の音が落ち着くんですよ」




福山雅治『わたしは風になる』

『5年モノ』(通常盤)に収録
価格:3086円(税込み)
発売元:ユニバーサルJ

2004年のアテネ五輪のとき、テレビ朝日のオフィシャルカメラマンとしてソフトボールチームを取材していた福山雅治さんが、代表監督を去ることを決意した宇津木さんのために制作した思い出の一曲。「次の代表に託して、私は風になって応援する」という思いが歌詞に込められている。その後、2008年の北京五輪で、当時解説者を務めていた宇津木さんの目の前で悲願の金メダルを獲得!


カツめし
そうめん
「体調を崩して人に迷惑をかけたくない」と、なるべく食べ慣れた物しか口にしないようにしている。そのため、食事も好きなそうめんでサラッと済ませることが多い。体力的に精神的にも過酷だったシドニー五輪とアテネ五輪は、日本から持参した「そうめん」で乗り切ったという思い出も。

カツアイテム
バイザー&ノックバット

どこへ移動するときもバイザーとノックバットは欠かさない。選手と激しく向き合った速射砲ノックもこのバットから。血のにじむような練習の日々やチームで育んだ楽しい思い出など、約50年分の思いが染みついている。「これを被ると頭がキュッと締まって力が入る」と、バイザーを被るタイミングはまさに気合いを入れる瞬間。






カツ語
「努力は裏切らない」
いつもサイン色紙に書き添える言葉で、もはや宇津木さんの人生訓。「やった結果は必ずついてくるんじゃないかな。人と向き合うことを意識しながら常に自分を鍛える。そうすると、いろんなことが報われるはず」

【宇津木妙子オフィシャルブログ「心」】
http://utsugitaeko.aspota.jp/

取材を終えて
 自身に“カツ”と“気合い”を入れて立ち向かう情熱は、選手時代と変わらず今も現役。ソフトボール道を走り続ける姿はまぶしいくらいに輝いています。どんなときも「油断しない」「弱音を吐かない」を貫く真っ直ぐな生きざまは、カッコよくて憧れてしまうほど。自分を犠牲にする芯の強さには頭が下がります。亡き両親に毎日手を合わせるのが習慣になっているという宇津木さん。「今日も頑張るからね。みんなを守ってね」。ご両親に語りかけるひとときは、いつも全力投球の宇津木さんが唯一ホッとできる時間のように思えました。

(構成:狭間由恵、撮影:前田光代)
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【うつぎ・たえこ】
1953年埼玉県生まれ。ユニチカ垂井で選手として14年間プレーした後、日立高崎の監督に就任し、数多くの優勝に導く。1997年から日本代表監督を務め、2000年のシドニー五輪で銀メダル、2004年のアテネ五輪で銅メダルを獲得。2005年に日本人初の世界ソフトボール連盟の殿堂入りを果たす。現在、NPO法人ソフトボール・ドリーム理事長、東京国際大学の特命教授・女子ソフトボール総監督、ビックカメラ女子ソフトボール高崎シニアアドバイザー、世界野球ソフトボール連盟理事を兼務しながら、普及活動などに務める。著書は『ソフトボール眼』『宇津木魂 女子ソフトはなぜ金メダルが獲れたのか』など多数。
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