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きれいをつくる
先生たちのちょいカツ!
第6回 藤田智 先生(恵泉女学園大学 教授)
 学生が実習で栽培する野菜や花は約30品種。秋には採れたての野菜で豚汁を作ったり、杵で餅をついたりと、藤田智先生は園芸の魅力をさまざま角度から学生たちに教えています。そんな藤田先生が考えるカツとは? 「先生たちのちょいカツ!」第6回は野菜・花づくりを学ぶ今どきの大学生にカツを入れます!

人生どこかでカツを入れないとダメになる




 卒業論文のときは「カツ」だらけですね。短大で20年、大学で10年指導してきましたが、いつも厳しく学生たちにカツを入れています。大学で学ぶからには卒論を出すくらいの気概があってほしいし、そこに4年間の意義を見つけてもらいたいですね。だって、卒業するまでに一度は本気にならないと社会に出たらマズイでしょ。人生どこかでカツを入れないと、人間ダメになるんじゃないかな。

 以前、「園芸教室で地域のコミュニケーションは成り立つか?」をテーマに卒論を書いた学生がいました。主婦を対象にしたアンケートにいくつか抜けているところがあって、私に指摘されては何度もやり直しに。途中くじけそうになっていましたが、結局、最後まで頑張って優秀な卒論を完成させました。やりきった自分に「感激してしまいました」と涙ぐんでいたあのときの学生は、今はもう立派な社会人の一員です(笑)。

大学での実習風景
写真提供:藤田智先生
 6年前には「ゴミが散乱している場所に、花を植えたらどうなるか?」を卒論のテーマに提案した学生がいて、実際に自分たちで試してみることにしました。調査対象は厚木付近の高速道路の高架下や南多摩尾根幹線沿い付近。不法投棄された一画やゴミのポイ捨てが目立つ場所に花を植えてみたところ、4~7月の4カ月間はゴミを置く人は一人もいなくてゴミがゼロに。周辺でもゴミがなくなっていく現象が見られました。ところが、夏休みの8月に入って手入れができないと、また汚れ始める。このことから「“美しい場所にはゴミを捨てられない”という日本人の国民性があるのではないか?」という気づきに結びついたのです。人目につかないような場所でも、美しい花を植えるという行為が伴えば、もしかするとゴミは消えるかもしれない。活動を通じて学生たちが結論づけてくれました。

 卒論では「現代社会が抱える問題を園芸と関連づけてどう解決するか」を研究テーマに取り上げていますが、授業の中では、園芸が心の癒やしやコミュニケーションの手段として成り立つという点を身近なところから教えています。実習で育てたキュウリが「生涯で一番おいしいキュウリだ」とお父さんを感動させ、ぎくしゃくしていた父娘の関係を修復するきっかけになったり、初めて収穫した野菜に「私が育てた最初の命なんですね」としみじみ思ったりと、学生の心温まる体験談もたくさん。園芸の魅力を肌で感じてくれているようです。
 もちろん、栽培を疎かにしたときは「何やっているんだ!」とカツを入れることも。でも、ただ怒るだけではお互いに気まずい雰囲気が残るだけ。一歩下がって、できるだけ相手の気持ちに立って話をして、気持ちがそちらに向くように心がけています。怒るのとカツを入れるのとは違う。ちゃんと説明すれば相手に伝わり、うまくいくものなんです。
 虫に食われたり病気になったり横に伸びてしまったり……。手入れをうまくしないと、私も野菜にカツを入れられます(笑)。

カツナンバー

中島みゆき『時代 -Time goes around-』

価格:2900円+税
発売元:ヤマハミュージックコミュニケーションズ

「中島みゆきさんのお父さんが亡くなられたときに作った曲だと聞いたことがあって、あの中島みゆきが悲しいときを乗り越えてきた曲だから俺も!」と、不調なときにカツを入れる曲。




山下達郎『RIDE ON TIME』

価格:2286円+税
発売元:アリオラジャパン

好調なときに聞くお気に入りの曲。上京して最初にお付き合いした彼女にもらったカセットテープに録音されていた。山下達郎の優しい歌声を聞くと、当時の甘くて切ない思い出がよみがえる(!?)。



カツめし
カツ丼
受験する大学に迷い、究極の選択を迫られたとき、母が「こんなときこそカツ丼を食わなきゃだめだ」と言って作ってくれた。その日、父が呼んだ神主に拝んでもらい、出願する大学を決定。その甲斐あってか、見事希望する大学に合格した。その後もカツ丼は藤田家ゆかりのメニューに。今でも公開講座の前はカツ丼でカツを入れる。「社会人が相手ですから、気合いを入れないと!」

カツ語
愛は根づく
お見合いの連敗を打破しようと、幸せを呼ぶよつばのクローバーを押し花でなく、水を入れたコップに挿してみたところ、10本中6本から根が生えるというサプライズ現象が! その後すぐに生涯のパートナーに巡り会ったというラッキーな実話から生まれた言葉。

【藤田智オフィシャルサイト「野菜日和」のホームページアドレス】
http://fujitasatoshi.jp/

取材を終えて
 インタビュー中、ユニークなエピソードで笑わせてくれた藤田先生。大らかで飾らない人柄が印象的で、テレビ番組での活躍や公開講座での人気ぶりもうなずけます。学生たちの卒論テーマは、社会問題と園芸とを関連づけることが絶対条件。園芸を身近な人・町・暮らしと絡めて考察させることは、社会に出てきっとためになるはず。社会人デビュー間近の若者たちを、先生流のカツで後押ししているように思えました。
(構成・狭間由恵)
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【ふじた・さとし】
1959年秋田県生まれ。岩手大学大学院農学研究科修了。恵泉女学園大学人間社会学部教授として野菜園芸学・植物育種学・農業教育学などを学生に教える傍ら、社会人を対象にした講演や市民公開講座で野菜づくりの指導や普及活動にも務める。NHK「趣味の園芸やさいの時間」をはじめ、日本テレビ「世界一受けたい授業」にも出演し、園芸の魅力を全国に発信。『藤田智の野菜づくり大全』『菜園から愛をこめて』など、野菜栽培に関する著書は100冊以上。
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