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TOKYO銀座めぐり
イラストレーター(文と貼り絵)
きりたにかほり
最終回 はなやぐ街、銀座
地下鉄の階段を駆け上がると、広い歩道が目に入りました。

高くて青い空。
昨日までの雨がうそのようです。


待ち合わせた和光本館の前、
ショウウインドウを覗き込んでいたのは編集さん。
視線の先にはイグアナのオブジェと器たち。
磁器でできた作品が飾ってありました。




「じゃあ、まずは『銀座発祥の地碑』に行きますか」

この日訪れたのは、東京都中央区「銀座」。
最寄り駅はもちろん、東京メトロ銀座駅。
これまでいくつもめぐってきた
各地の「○○銀座」、はじまりの場所です。

銀座四丁目の交差点から中央通りを京橋方面へ。

アップルストアの先、銀座二丁目交差点を越えた
ティファニーの前にそれはありました。

江戸時代に銀貨幣鋳造のため、
銀座役所を設置したこの地を「新両替町」と名付けたものの、
「銀座町」の通称で親しまれるようになり、
明治に入って正式な地名となったことが刻まれています。
そのころ、このあたりは銀貨幣を鋳造する職人たちの住まう町人地だったそう。

当時の景色を想像しながら
ブランドショップをぐるっと眺めてたのしくなりました。



そのまま進んで京橋駅へ。

首都高速の高架下には『ガス灯の碑』、
大火の末にレンガ敷となったことを記す『煉瓦銀座之碑』。
道向かい交番のとなり、このあたりが川だったことの証、『京橋の碑』。

銀座の歴史を一歩ずつ知るなか、さらに気になる碑を求めて、
待機中の警察の方におうかがい。

「すみません、『銀座柳由来の碑』というのを探しているのですが」

銀座の街路樹と言えば柳。
その由来について書かれた碑が近くにあるようなのです。

うーん、と短くうなったあと、地図を見せてと一言。

「知らないけど、この地図が正しいのであれば、この角を曲がってすぐだよ」

教わった道を行ったり来たり。
小さなギャラリーや、画材屋さんなどいくつか通り過ぎましたがみつけられず、
歩道のオアシスで立ち止まってスマートホンに問い合わせ。

「柳通りにあるんじゃない?」

編集さんの検索結果をたよりに、来た道を戻ります。


先月の西荻窪は、毛糸の帽子が恋しくなる寒さでしたが、
今日の銀座は、ぽかぽか陽気。
あたたかい午後の散歩は遠回りもなんのそのです。

ましてやここは世界有数の繁華街、銀座。
歩くたびに発見があるというのもたのしみのひとつ。

「あれ?」

店先のガラス越し、早速の発見に
声をあげておもわず二度見。
そこにあったのは、子どもが乗った象の像。
特徴的なこの像は金色ではあるものの、
先月、西荻窪で見つけた像にそっくりなのです。


さっそくお店で写真を撮らせていただきながら
この像がここにある理由をうかがいました。

「ご依頼をして先生につくっていただいた作品です」

作品のタイトルは「花祭り童子」、
お釈迦様誕生の姿だと知り、
感動とともに仏壇屋さんを後にしました。



ようやくたどり着いた銀座柳通りの入り口で、
探していた『銀座柳由来の碑』を見つけたあと、
昭和通りへ向かいました。

歌舞伎座から出てくる道幅いっぱいの人々とすれ違って、
晴海通りを有楽町方面へ。


かつての川の流れを体感しようと、
三原橋の辺りをたどっていると、
古びた飲屋街の存在に気づきました。

傾いて連なる茶色い建物。
細く薄暗い道から食欲そそるよい香りが漂ってきます。
一番奥は明るい雰囲気のあなごやさん。
店内にはお客さんらしき姿もみえました。
なんだかほっとして見上げると、2階に麻雀の看板。
そこで繰り広げられたであろう
語り次がれることのないドラマをおもって
にやにやしながら通りを後にしました。


街灯に鳳凰が掲げられたみゆき通りをしずしずと歩き、花椿通りへ。
外国人観光客でにぎわうSHISEIDO THE GINZAに寄り道をして、
路地裏から、金春通りへ。


能楽、金春流の役者たちの住まいに由来した
金春通りは130メートルほどの短い通り。
江戸時代には芸能の街として、
後に花街として栄えたそうです。

現在ではこの周辺一帯がそうであるように、
飲み屋街の一角といった風情ですが、
現在でも毎年8月には、
路上能を奉納しているそうです。

この地、もうひとつの名物、
金春色の看板、江戸時代から続く金春湯を外から拝見。
いい気分。

最後に銅でできた風情豊かな記念碑をたしかめ、
レンガづくりの石畳を歩き終えると
博品館の前の屋台で
大きな食パンを購入。


夕暮れが近づき、
パンはおいしいうちに食べきる、という
貴い目標を携えて
いっそう華やぐ銀座の街を後にしました。



〈最終回は「銀座」をめぐりました。ありがとうございました。〉

* * * * * * * * * * * *

1年間、東京の小さな銀座を歩いてめぐりました。
月に一度、たのしい散歩のおかげで
遠くの銀座も気になるようになりました。
おつきあい、誠にありがとうございました。(きりたにかほり)



※きりたにさんのホームページ「たいようのみやこ」
http://taiyonomiyako.com/index.html
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【きりたに・かほり】
1984年秋田県生まれの香川県育ち。熊本県立大学卒業後に上京し、都内制作会社にデザイナーとして勤務。現在は「世界をあたためたい」と絵を描き、関東を中心にイラストの制作や似顔絵屋さんなど行っている。
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