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TOKYO銀座めぐり
イラストレーター(文と貼り絵)
きりたにかほり
第7回 晴れの街、霜降銀座から染井銀座、やがて西ヶ原銀座
10月の晴れた金曜日。
3つの銀座がひとつづきになっている長い街をめぐりました。
かつての川らしい道幅の変化や分かれ道がたのしい道行き。
人々の息吹を感じ、たくさん歩いたのに元気になって帰りました。




朝までの大雨がうそのように美しい秋晴れの午後、
いつぶりかの駒込駅に降り立ち、霜降銀座を訪れました。

「この坂を下ったら左手。大きなスーパーがある角を曲がるといいよ。」

駒込在住の友人に場所を教わったあと、
編集さんと合流。

言葉通りの長い坂をおしゃべりしながら、ゆっくりくだりはじめました。


秋風を感じているうちに霜降橋の交差点が見え、
目指す霜降銀座の入り口にたどり着きました。

目印だったエネルギースーパーにパワーをもらい、
角の鶏肉屋でまず手に入れたのはかわいいイラストマップ。
訪ねる前にチェックしていた商店街のホームページの
キュートなテイストと同じで、
乙女心をそわそわくすぐられました。

マップをうっとり眺めながら「しもふり」のアーチをくぐると、
道幅3メートルほど、全長約250メートルの霜降銀座が始まりました。
ここは昔、谷田川と名のつく川だったそうで、
埋め立てて作られた通りには色つきタイルが美しく敷き詰められています。
なるほどここはこの街の大事な道なのだと愛を感じてにやにや。


商店街のキャラクター、しーちゃんによる霜降銀座の説明を経て
オシャレでおいしそうなラーメン屋さん、
魅力的な「ジジババ」の看板、
ごきげんなアサリが印象的だった魚屋を過ぎた頃、
急に目の前がトロピカルカラーに染まりました。

そこにあったのは道に向かってこぼれそうに積まれたフルーツたち。
グレープフルーツ、ネーブルなど黄色い柑橘類、
オレンジ色の柿をはさんで
朱色のりんごに続く美しいグラデーション。

向こうに見えるグリーンと紫のぶどうたちも
蛍光灯の下で見るより、うんと輝いてみえます。

おじさんのいらっしゃい!が通りに響いて
お買い得商品を教えてくれるなど、
聞こえてくるお客さんとの会話もとてもたのしそう。
活気がみなぎる果物屋さん、ながめるだけで気分が幸せです。

名前からも元気をもらえそうな「スターフルーツ」の店名にうなづいて、
帰りに買いましょうと、見えない約束を胸に刻み、通りを進みます。


「なんだか花屋さん多いです?」

きょろきょろしながら、
黄色い枠の自動ドアをくぐり、
しーちゃんコミュニティーサロンに入ってみました。

中には大きな机が3つほどあり、
その中のひとつを囲んでご婦人が談笑しています。
ここはどうやら街の休憩所のよう。

街の情報を求めて、備え付けのフリーペーパーを読んでいると、
壁際の白い棚にたくさん文字が入っていることに気づきました。
壁一面、碁盤の目のように区分けられた棚の奥に
A4サイズの紙が貼られており、
ひとつの枠に1軒の割合でお店の紹介がなされています。

壁新聞の個室化を感じながら、
紹介文を読んでいく中に、フランス菓子CADOT(カド)の文字を発見。
マドレーヌがお店の逸品だそうです。

至急行ってみましょう、と、編集さん目配せ。

とはいえ、多肉植物がかわいい、と、
やっぱり多い気がする花屋さんの前で立ち止まっていると、
「おひさしぶりですー」
「あー!」
と、子どもを乗せた自転車の女性がふたり、
分かれ道で言葉を交わして停車するシーンに出くわしました。
この銀座は生活の道なのですね。

信号の先にカドを発見。

コションと名付けられた子豚のケーキ、
バタークリームの装飾が美しいホールケーキたちに出迎えられ、
はしゃぎながら目当てのマドレーヌとクロワッサンを購入。

「クロワッサンは……」

大満足で店を後にしようとしたとき、
店主とおぼしき男性に話しかけられました。

「…アルミホイルに包んで、トースターで暖めてください。
そしたら、あの、焼きたての、サクサクした感じになります、
底があたたかくなるぐらいが目安です……」

はい!そうします!

はにかみ笑顔がうれしかったです。


本通りに戻り、立派なとうふやさんに目を奪われていると、
街灯がこれまでの灯籠を模した四角いものから、
球状のモダンなものに変わっていることに気がつきました。


「あれ、この先から染井銀座です?」


道幅が広くなり、
桜の街、染井銀座が始まっていました。
ソメイヨシノはこの地にあった染井村が発祥という説になぞらえて
道のタイルもサクラのかたちに貼り合わせてあります。

焼き芋が香ばしいスーパーマーケット、
すべてが整然としている陶器屋、
おばあさんと漬け物が並ぶ八百屋といった具合に
ここから約400メートルの長さに100店舗が並んでいます。

脇の小さな公園には
猫がたくさん落ちていました。


オープンエアな太鼓屋さんをおずおずのぞきつつ
ゆったり歩き続けると、ふたたび道幅が狭くなり、
新しい街、西ヶ原銀座が始まっていました。

洗濯物がはためいていて、雰囲気は静かな住宅街。
タイルのない道を少し寂しく思いながら、
曲がりくねったネオン管がぐっとくる飲み屋、
手入れが行き届いた印象の精肉店、
交差点を過ぎたスーパーマーケットのあたりで街灯が途切れ、
この銀座の終わりを知りました。
3つめは約510メートルだったようです。


全部あわせて1キロの銀座めぐり。
幾分早くなった日暮れの気配を感じて街を出ました。


今度は、花の季節に訪れたいです。


〈次回は東中野銀座を予定しています、どんな街かな。お楽しみに。〉


※霜降銀座商店街は、JR山手線「駒込駅」、東京メトロ南北線「駒込駅」から徒歩5分

※きりたにさんのホームページ「たいようのみやこ」
http://taiyonomiyako.com/index.html
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【きりたに・かほり】
1984年秋田県生まれの香川県育ち。熊本県立大学卒業後に上京し、都内制作会社にデザイナーとして勤務。現在は「世界をあたためたい」と絵を描き、関東を中心にイラストの制作や似顔絵屋さんなど行っている。
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