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美しいくらし
フランスの美しい田舎と小さな村ワイン 写真と文
木蓮
第1回前編 中世の面影残す要塞の村【ラヴァルダン】
 フランスの真ん中オーヴェルニュにある小さな村での日々の営みを、「フランスの田舎暮らし12カ月」で好評連載中の木蓮さん。みずみずしい写真とエッセイで多くのファンを持つ彼女の新連載が始まりました! テーマはずばり、《フランスの美しい田舎》と《小さな村ワイン》。「フランスの最も美しい村」(注?)に認定されている小さな村を、毎回一つピックアップ。名所や旧跡などの見どころをはじめ、季節の花や祭りといった四季折々の村の表情を、現地で暮らす木蓮さんならではの視点で紹介してもらいます。小さな村で造られた個性豊かなワインを販売している「moulla」ソムリエ・堀澤和弘さんによる、おすすめワインも必見です!

 第1回目は、古城で有名なサントル・ヴァル・ドゥ・ロワール地方にある「フランスの最も美しい村」ラヴァルダン。今回は特別編として、前編ではラヴァルダンの村を、そして後編ではこの村の近くにあるドメーヌ(ワイン醸造所、ワイナリー)を木蓮さんに案内してもらいます。




 フランスの小さな村の魅力の一つは、川と一緒に見える村景色。
 ここ、ラヴァルダン村の入口にも美しいロワール川が流れています。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、このロワール川には、ロワール地方の名称ともなった女性のラ・ロワール(La Loire)、そして、この村に流れる男性のル・ロワール(Le Loir)があり、ル・ロワールは、ラ・ロワールの支流となっています。

 美しい川の中には、たくさんのマスやパイクパーチが泳いでいて、それを狙ったサギが優雅に川の中を歩いていました。川の周りには木のテーブルやイスが置いてあり、気持ちのいい秋空が広がる日曜日、数組の家族と若い女の子のグループが、心地よい風を受けながら思い思いに過ごしているのが目に入りました。

古の面影が漂うラヴァルダン城

サン=ジュネ教会の内部

 ル・ロワールに13世紀からかかる橋を渡り、村の中に入るとすぐに目に飛び込んでくるのが、ラヴァルダン城。この城はラヴァルダンの最初の君主によって11世紀初めに建てられ、1130年頃にヴァンドーム伯に売却されたのち、12世紀終わり頃に要塞として使われるようになりました。主塔の高さは約26メートルありますが、宗教戦争の頃、アンリ4世の命令により破壊され、その後も度重なる戦争によって廃城となっています。

 そんな歴史あるラヴァルダン城よりも、この村を有名にしているのは、ロマネスク初期に建てられたサン=ジュネ教会です。見所はなんといっても、保存状態の良い壁画(フレスコ画)。「キリストの受難」、「最後の審判」などが描かれており、この壁画を見るために旅行者が訪れます。
 

 12世紀から16世紀頃に描かれたこの壁画が美しく保たれた理由は、17世紀頃この壁画の上を石灰で覆い、他の壁画が描かれていたから。そのため、美しい色彩は今も色鮮やかに残っているのです。

鮮やかな壁画が残るサン=ジョネ教会

 私が一番気になったのは、まるでワインの樽を思わせるような木造の天井。どうして木造なのか、詳しい理由はわかりませんが、これから訪れるワイナリーが楽しみになってきました。

 村の中には、15世紀頃の美しい家並みが残っています。昔、城が取り壊された時の石を使い村の家を建てたらしく、石文化の歴史を感じました。ロワール地方は白く柔らかい石灰質の土壌のため、多くの洞窟式住居が残っています。そのため、その洞窟をうまく使ったレストランやショップがあり、ラヴァルダンに来る前に立ち寄ったモンソロー村では、使われなくなった住居を使ってキノコ栽培をしているところも……。


 ラヴァルダンの村をゆっくりと散策した後は、せっかくなので、この村の近くにあるパトリス・コランのドメーヌを訪ねてみることにしました。9月初め、今年はちょうどヴァンダンジュ(収穫)の時期です。(つづく)

ラヴァルダン村の石造りの家並み

ラヴァルダン村の風景



――後編では、ラヴァルダンの村近くにある「パトリス・コラン」のドメーヌ(ワイン醸造所)を訪問。ソムリエ・堀澤和弘さんおすすめの村ワインも併せて紹介します。お楽しみに!

【注?】フランスの最も美しい村:1982年にコロンジュ=ラ=ルージュで設立された。人口が最大で2000人までであること、少なくとも2つの歴史的建造物や自然遺産を含む保護地区があるなどの条件をクリアした村のみが「フランスの最も美しい村」として認定される(2016年現在155村が認定)。

★木蓮さんのブログ【フランス小さな村を旅してみよう!】
http://ameblo.jp/petit-village-france/

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WEB連載「フランス 花の村をめぐるたび」はこちらをご覧ください。
WEB連載「フランスの花の村を訪ねる」はこちらをご覧ください。

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【もくれん】
神戸出身。フランスの「おへそ」にあたるオーヴェルニュの人口200人に満たない小さな村に在住する日本人女性。フランス人の夫との結婚を機に渡仏。さまざまな地域に接しているオーヴェルニュの地の利を生かし、名もなき小さな村を訪ねる旅にどっぷりはまる。フランスの小さな村の美しさに魅了され、「パリだけではないフランスの美しさを伝えたい」と、訪ねた村々をブログで紹介。みずみずしい写真と住んでいる人間ならではの視点で人気を呼んでいる。著書に『フランスの小さな村を旅してみよう』『フランスの花の村を訪ねる』(東海教育研究所)。
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