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美しいくらし
フランスの美しい田舎と小さな村ワイン 写真と文
木蓮
第2回後編① 温かい人柄と厳しい自然が育む赤ワイン【セギュレ】
 朝目覚めるとあいにくの雨。
 ですが、ここプロヴァンスは1年のうち300日は晴れるといわれるほど雨量が少ない場所。そう思うと希少な日に巡り合えたと思い、朝御飯の前から一人でブドウ畑の中に。


 「もう起きたの?」
 ほどなくして、ブノワ氏に声をかけられました。毎朝太陽が昇るころ、ブドウを見回るのは彼の日課。

シラー

「こっちがシラーで、こっちがグルナッシュ」
 たくさんのブドウが実った彼ご自慢の畑の中を歩きながら、ワイン初心者である私に様々な知識を授けてくれます。「こっちは今年の4月26日に植えたばかり。どうだい、よく成長してるだろう?」

 ブノワ氏はまるで自分の子供の成長を見守るように目を細めました。
 彼はなんと8人のお子さん、7人のお孫さんがいる大家族! ですが、息子さんたちを見かけなかったので、「お子さんは跡を継がないのですか?」と伺うと、「今日の夜、うちで食事をしない?」と彼らの家に招待され、その話は後で聞かせていただくことに。
 

 朝食を終え、ブノワ氏の案内でドメーヌ・ド・カバス自慢のジゴンダスのブドウ畑へ。ドメーヌのあるセギュレから10分ほど車を走らせた場所にあるジゴンダスは、ダンテル・ドゥ・モンミライユ山の裾野に広がる美しい村。1971年にアペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(AOC)【注①】を受けた赤ワイン「ジゴンダス」の産地として知られており、有名なワイナリーがいくつもあります。

 年間日照は2800時間もあり、ミストラル(フランス南東部に吹く地方風)の強い風と夏の強い日差しによって常に乾燥していて、粘土石灰岩、ジュラ紀や白亜紀からの堆積物(いわゆる化石)や砂岩が混在した非常に複雑な地質的特徴を持っています。

 私たちが訪れた時、ブドウ畑は霧の中。私が撮影をしている間、ブノワ氏はミストラルによって倒れてしまったブドウを起こしたり、根本から折れてしまったブドウを排除していました。

 彼のブドウ畑は斜面にあるため、すべて手作業で行われます。日本の棚田のようにブドウが植えられているこの場所は、イノシシ被害が多い場所。そのため、イノシシ除けの電気柵が張り巡らされていたのですが、「私の住む村(オーヴェルニュ)では、牛や羊たちが逃げないように電気柵を張っているので反対ですね」と話すと、「プロヴァンスには牛がいないからね!」と大笑い。

 それにしても、ニジャはいつでもブノワ氏と一緒。彼が仕事をしている間、傍に伏せてじっと待っていました。

 帰り際、「とっておきの場所」と言って連れてきてくれたのが、石だらけのブドウ畑。
 「こんな石だらけの場所で育つブドウを見ていると、生きる力が湧いてこないかい?ブドウ達が必死で根を伸ばして水を探し、実をつけているだろ? このブドウたちはきっと生命力に満ち溢れているよ」

 そう言ってしばし車を停め、彼は愛おしそうにブドウを眺めていました。(つづく)


【注①】アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(AOC):フランスの農業製品、フランスワイン、チーズ、バターなどに対して与えられる認証で、国立の原産地名称研究所(INAO)が管理している。製造過程および最終的な品質評価において、特定の条件を満たしたものにのみ付与される品質保証。フランスの伝統的なワインの産地には、ブドウ品種や栽培方法、醸造方法などにそれぞれ固有のスタイルがあるため、その特徴や個性を守るための法的な規制となっている。

★木蓮さんのブログ【フランス小さな村を旅してみよう!】
http://ameblo.jp/petit-village-france/

協力:株式会社グラムスリー「moulla(ムーラ)」
http://www.moulla.jp/

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WEB連載「フランス 花の村をめぐるたび」はこちらをご覧ください。
WEB連載「フランスの花の村を訪ねる」はこちらをご覧ください。

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【もくれん】
フランスの「おへそ」にあたるオーヴェルニュ地方の人口200人に満たない小さな村に在住する日本人女性。フランス人の夫との結婚を機に渡仏。いきなり2人のフランス人娘の母親になり悪戦苦闘だったが、生来の自由気ままな性格と、さまざまな地域に接しているオーヴェルニュの地の利を生かし、名もなき小さな村を訪ねる旅にどっぷりはまる。「パリだけではないフランスの美しさを伝えたい」と、「フランスの小さな村宣伝大使」を自負し、訪ねた村々をブログで紹介している。花にあふれる美しい村の魅力を伝えるブログは、日本でも多くのファンがいる。
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