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美しいくらし
フランス 花の村をめぐる旅 写真と文
木蓮
第1回 花の村ってどんなところ?(上)

※このWEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『フランスの花の村を訪ねる』が絶賛発売中です(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。



 フランスには、美しい小さな村がたくさんあります。とりわけ色とりどりの花々であふれる季節の美しさは、息を飲むほど。イチオシ記事の新連載は、フランスの真ん中・オーヴェルニュ地方の小さな村で暮らす木蓮さんが、ステキな写真とともに小さな村々の魅力を紹介するエッセイ「フランス 花の村をめぐる旅」。お楽しみください。

シャルロー村の菜の花畑



 「菜の花に囲まれた、こんな美しい村があるんだ!」

 私がフランスの小さな村を旅するようになったきっかけは、オーヴェルニュ・アリエ県にある人口400人に満たないCharroux(シャルロー)という小さな村の蚤の市に出かけたことでした。

 菜の花畑に埋もれたこの村は、「フランスの最も美しい村(Les plus beaux villages de France)」の一つです。
 「フランスの最も美しい村」とは、1982年にコロンジュ=ラ=ルージュ(コレーズ県)にて設立された協会。登録されるためには、以下の条件を満たす必要があります。
・農村部分がどれくらいの規模であるか実証し、人口が最大2000人までであること。
・少なくとも2つの歴史的建造物、またはそれに準ずる自然等の保護地区を保有していること。
・村及びコミューン議会の承認を得ていること。


 当時、そんな知識のかけらもなかった私は、車の中から流れるように通り過ぎる黄色の絨毯を、夢中で写真に撮るだけでした。

 後から知ったことですが、菜の花畑はこの村だけではなく、この季節、田舎に行けば、どこでも見られるフランスの風物詩。フランス人にとって、当たり前のこの景色が私の田舎好きを決定づけました。

 シャルロー村は、マスタードとサフランが有名で、何度も訪れるようになってから、村の人たちに少しずつ話を聞かせてもらうようになりました。

 今ではすっかり美しい田舎の魅力にはまってしまいシーズンごとに、写真を撮りに出かけます。
 もちろん、春だけでなく秋も美しい村です。

 フランスといえば、誰に聞いても「パリ」。

 結婚してフランスに住むといえば聞こえはいいのですが、実際は、人口200人にも満たないオーヴェルニュ地方*の小さな田舎の村に住むことになりました。
 オーヴェルニュ地方はフランスのおへその位置にあり、中央山塊の雪解け水による良質の水が湧き出ることで有名です。日本でもおなじみのミネラルウォーター「Volvic」はこの地域にあり、フロマージュ(チーズ)の産地として知られています。

 そんな自然いっぱいのオーヴェルニュ地方は、他の多くの地域に接することから、車でいろいろな場所へ旅するようになりました。

 旅をすればするほど、「パリよりもずっと美しい場所が、フランスにはたくさんあるのに……」という思いがふつふつと湧いてくるように……。
どうすれば、フランスの小さな村の魅力を伝えられるのだろう――。
そこから、私の「フランス小さな村を旅してみよう!」というブログが始まったのです。

 日本に住んでいたころから、ガーデニングが大好きだった私。オーヴェルニュの自宅の庭には、大好きな紫陽花やクレマチスを何種類も植え、花のある暮らしを楽しんでいます。
フランスにも、日本と同じように美しい四季があります。
花で彩られるこの国の本当の美しさを、この連載で多くの方に楽しんでいただけたらと思います。
 では、フランスの「美しい花の街や村」を訪れるとき、どのように街を探したらいいのでしょう?

 一つの指針となるのが、「Villes et Village Fleuris」。今ではすっかり有名になった「フランスの最も美しい村」の「花バージョン」と思っていただければ間違いありません。
 村や町名の看板の下に、レストランを星で評価するよう、花のラベル1~4個を表記します。
このラベルは、花の数が多いほど花にあふれた町であることを意味します。
 大変なのは、いくら最高の4つ花を獲得しても、次の年に質が落ちてしまうと、花のラベル数も減ってしまうこと。そのため、自治体や住民が一丸となって美しい街づくりをするのが、このマークの意義につながっているのです。特に小さな村であればあるほど、住民の協力なしに「美しい花の村づくり」ができないため、村内でコンクールを開催したり、住民たちが楽しんで参加できる工夫をしています。

 美しい花の村を訪れると、ときどき庭の手入れをしている住民と出会います。「お庭の写真を撮らせていただいてもいいですか?」と尋ねると、「じゃ、中に入っておいで」と、招き入れてくれる方の多いこと。
 「お庭の手入れは大変なのでは?」と尋ねると、
「大変よ~。でも、こうやってきれいにしたら村が美しくなるし、観光客の方も喜んでくれる。私も美しい庭を眺めていられるし、何より、あなたと出会えたじゃない!」

私が田舎の旅をやめられないのは、きっと、花を通じて、多くの優しい気持ちに触れられる瞬間があるからなのだと思います。(つづく)

*2016年より、正式な行政区画は、オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏になりました

【写真提供:木蓮】
★木蓮さんのブログ【フランス小さな村を旅してみよう!】
http://ameblo.jp/petit-village-france/

【Villes et Village Fleurisのサイト】(フランス語)
http://www.villes-et-villages-fleuris.com/
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【もくれん】
神戸出身。フランスの「おへそ」にあたるオーヴェルニュの人口200人に満たない小さな村に在住する日本人女性。フランス人の夫との結婚を機に渡仏。さまざまな地域に接しているオーヴェルニュの地の利を生かし、名もなき小さな村を訪ねる旅にどっぷりはまる。フランスの小さな村の美しさに魅了され、「パリだけではないフランスの美しさを伝えたい」と、訪ねた村々をブログで紹介。みずみずしい写真と住んでいる人間ならではの視点で人気を呼んでいる。著書に『フランスの小さな村を旅してみよう』『フランスの花の村を訪ねる』(東海教育研究所)。
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