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美しいくらし
フランスの美しい田舎と小さな村ワイン 写真と文
木蓮
第2回後編㊦ 温かい人柄と厳しい自然が育む赤ワイン【セギュレ】

 その夜、アン手作りの美味しいディナーとともに、美しい手回しオルガンの演奏を楽しみながら、お二人の共に歩んでこられた道を伺いました。

 「これを見てごらん?」
 そう言って手渡されたのは、表紙が黄ばんだ古い本。ブノワ氏のお父さんが書かれた自伝で、今でも大切に保管しているそうです。

 「僕たちは、この地(プロヴァンス)の人間ではないんだよ。僕はもともと、ミュスカデ(AOC)で有名なナントのそばの小さな町で育ったんだ。その後、長い間、『ロシュフォールの恋人たち』という映画で有名になったロシュフォールに住み、今までとは真逆の金融の世界に生きてきたんだ。
 だけど、53歳になった時、『果たしてこのままの人生でいいのだろうか?』と考える出来事があってね。『ワインを造ってみたい』とアンに打ち明け、二人で様々な場所を巡ったんだ。最初は近くのボルドー。ナルボンヌ近郊にも行ったかな? そして、最後に見つけのがここプロヴァンスだったんだ」

 なんとも不思議な話ですが、ブノワ氏のご家族もアンのご家族も、昔はブドウ畑で働いていて、二人の幼き日の思い出はブドウ畑で走り回っていたこと。そのことを知った日はお互いびっくりしたといいますが、それゆえ二人とも、新たな人生に不安はなかったと振り返ります。

 「僕たちのドメーヌは2012年から始めたばかり。まだ初代というわけだ。だからこそ、このセギュレのドメーヌを見つけたとき、ホテルとレストランが併設されていることに魅力を感じたんだよ」
 ここに住むようになり、多くの方にお世話になりながらワイン造りを始めたブノワ氏ですが、最初からワイン造りだけで経営が成り立つとは思わず、奥様がホテルとレストラン部門を担当し、二人三脚でこの美しいドメーヌを創り上げてきたのだそう。

 「だからといって、子供たちにこのワイナリーを引き継いで欲しいとは言わないかな。だけど、いつの日か自分たちが人生を変えたように、彼らがこの場所に惹かれワイン造りをしたいというなら、喜んで継いでもらうつもりだよ」


 奇しくもその日はお孫さんの一人が誕生日だったため、インターネットのテレビ電話で楽しそうに話しているお二人の仲睦まじい姿を眺めながら、「この畑のブドウたちは自分の子供と思って育てたい。僕はきっとブドウたちもその愛情に応えてくれると思ってるんだ」と何度も言っていた言葉を思い返しました。

 次の日、パリに仕事に向かう私を駅まで送ってくれたブノワ氏。ぎりぎりまで写真撮影をしていた私に、「ほら、誕生日プレゼント」と「ジゴンダス」のワインボトルをプレゼントしてくれました。
 その味は、赤ワインが苦手な私でも、「飲みやすい!」と思ったコクのあるフルーティーな味わい。チョコレートとも合うそうなので、ぜひ試してみたいと思います。

 お二人の温かい人柄と厳しい自然の中で生きるブドウたちから生まれる、ドメーヌ・ド・カバスのワインたち。このワイン味わう時は、皆さんにもぜひお二人のことを思い出してほしいなと心から思います。
 また、ワインがお好きな皆さん、ぜひブドウ畑が目の前に広がる彼らのホテルを訪れてみてください。ドメーヌ・ド・カバスでの滞在は、美味しいワインといつもと違うプロヴァンスを感じられる旅となりそうです。



☆ソムリエおすすめ! セギュレの小さなワイン☆



ジコンダス

「ジコンダス」


ドメーヌ(生産者):ドメーヌ・ド・カバス

 バランスのよい濃厚な味わいの赤ワイン。グルナッシュの果実味、ムールヴェードルの色合いを組み合わせて、複雑かつ飲み飽きない味わいを造り上げています。品評会「日本で飲もう最高のワイン2018~テロワールから食卓へ~」において、最高賞のプラチナメダルを受賞しています。
※ドメーヌ所在はセギュレ、ジゴンダス村に3ヘクタール所有

◆セギュレの小さなワインの詳細は?


ソムリエ・堀澤和弘さんの「ワインコラム」はコチラ⇒

協力:株式会社グラムスリー「moulla(ムーラ)」
http://www.moulla.jp/


★木蓮さんのブログ【フランス小さな村を旅してみよう!】
http://ameblo.jp/petit-village-france/

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WEB連載「フランスの花の村を訪ねる」はこちらをご覧ください。


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【もくれん】
神戸出身。フランスの「おへそ」にあたるオーヴェルニュの人口200人に満たない小さな村に在住する日本人女性。フランス人の夫との結婚を機に渡仏。さまざまな地域に接しているオーヴェルニュの地の利を生かし、名もなき小さな村を訪ねる旅にどっぷりはまる。フランスの小さな村の美しさに魅了され、「パリだけではないフランスの美しさを伝えたい」と、訪ねた村々をブログで紹介。みずみずしい写真と住んでいる人間ならではの視点で人気を呼んでいる。著書に『フランスの小さな村を旅してみよう』『フランスの花の村を訪ねる』(東海教育研究所)。
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