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子どものこれから
将棋×子育てのイイ関係 女流棋士
中倉彰子
第8回 小さな挫折に意味あり!(下)
負けたって大丈夫
 私が講師を務める将棋教室でも、ある程度力がついてくれば子どもたちにも「感想戦」をしてもらうようにしています。初手から振り返るのは難しくても、ポイントとなる局面で、「こうしたほうがよかったんじゃないかな?」と、勝った子が教えてあげる。負けてしまった子も相手の意見を聞き入れる。ただ漠然と指すだけで終わりではなく、勝った方も負けた方も、その1局から何か1つでも学んでほしいと思っています。

 とはいえ、「負けて強くなる」「負けから学ぶ」と、言葉でいうのは簡単ですが、実際にやるとなると大変です。なぜなら「負け」はとても悔しいことであり、負け方次第ではかなりの抵抗感を覚えてしまうからです。将棋教室の中でも、自分より棋力が低い子や将棋を始めてすぐの子ばかりと対局をしたがる生徒もいます。その場合、無理強いはしませんが、「10回も負けたAくんがいます。負けるのはいやだからといって対局をしないBくんがいます。さて1カ月後は、どっちが強くなるのかな?」といった例え話をすると、迷わず、「Aくんだよ。だっていっぱい対局したから~」と答えてくれます。子どもたちはちゃんとわかっているんですよね。

多くの挫折を経験できる!
 将棋で負けることは、ちょっとした挫折経験です。最近は、失敗を恐れて最初から手を出さないという風潮があるようですが、これから子どもたちが歩む長い人生には、「将棋で負ける」以上の大きな壁がいくつも立ちはだかることでしょう。そこで大事なことは、どうやって乗り越えるか? さまざまな局面でどう気持ちを切り替え、前向きに取り組めるか? だと思います。
 将棋ほどたくさん挫折を味わう競技はなく、それと同時に、将棋ほど挫折を乗り越えるチャンスに恵まれた競技はありません。将棋での小さな挫折と失敗の積み重ねが、子どもたち一人ひとりの生きる一助になれば……。そんな思いを胸に、教室では「負けは気にしなくていいよ」と呪文のように(笑)、子どもたちに繰り返し伝えています。

イラスト:高野優



【「株式会社いつつ」のホームページ】 http://www.i-tsu-tsu.co.jp/

【高野優 公式ブログ「釣りとJAZZと着物があれば」】https://ameblo.jp/youtakano2018/


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【なかくらあきこ・たかのゆう】
★文/なかくら・あきこ★東京都出身。女流二段。株式会社いつつ代表取締役。6歳から将棋を始める。1991、92年の女流アマ名人で連続優勝を果たし、94年に高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。その後、NHK杯将棋トーナメントなどテレビ番組の司会を務めるなどメディアで幅広く活躍。2007年に公益社団法人日本女子プロ将棋協会へ移籍。15年3月に現役を引退し、同年10月に株式会社いつつを設立。将棋と知育・育児を結びつけるような活動を広く展開し、お母さん向けの講演なども行う。将棋入門教材「はじめての将棋手引帖」の制作や、絵本『しょうぎのくにのだいぼうけん』(講談社)も出版。

★絵/たかの・ゆう★北海道出身。育児漫画家・絵本作家。NHK教育テレビにて『土よう親じかん』(2008年4月~2009年3月)、『となりの子育て』(2009年4月~2011年3月)の司会を務め、子育て世代から支持が厚い。『よっつめの約束』(主婦の友社)など著書は約40冊に上り、台湾や韓国などでも翻訳本が発売されている。また、マンガを描きながら話をするという独自のスタイルで、育児をテーマにした講演会を全国で開催。2015年には、特定非営利活動法人日本マザーズ協会が主催する「第8回ベストマザー賞2015・文芸部門」を受賞。
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