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子どものこれから
将棋×子育てのイイ関係 女流棋士
中倉彰子
第1回 「将棋をすると、成績が上がりますか?」(下)
 前回、「絶対的な正解のない問いに対して自分の頭で考えなければならない」というお話をしましたが、ここで将棋特有の思考イメージについて説明します。

複数の選択肢の中から一つに決める力
 よく「棋士は何手先まで読みますか?」と聞かれるのですが、これは答えるのが実はちょっと難しいのです。なぜなら、将棋の読みを、単に先手後手が順番に指す直線状のもの(図1参照)と捉えている方が多いかもしれないのですが、実際のところは、相手の指し手にも何通りかの候補があるので、樹木状(図2参照)に広がっていくものだからです。

 例えば、ある局面で、Aくんが次の1手に、3通りの候補手を思いついたとしましょう。3通りそれぞれに、対戦相手のBくんが指してくると考えられる候補手が3通りあるとすると、それだけでAくんの1手は、Bくんの2手目次第で9通りに広がります。これを数手先まで繰り返していと、まぁ天文学的な数字になりますよね(笑)。これをすべて読むことができるのは、人口知能のAIが得意なのでしょうが、人間はなかなか敵いません。

 人間の場合はどう読むかというと、「直感」や「経験」を頼りにしているため、読まなくてもいい無駄な手を省いています。そして、良さそうな手をいくつかに絞り、その先の局面を検討し、次の1手を決めていくわけです。将棋のルール上、1回の手番で指せるのはたったの1手。「パス」や2回つづけて動かすこともできません。ここで「決断力」が求められるのです。

 私も仕事をしていて実感するのですが、「やらないこと」「捨てること」を決めるのはとても難しいですね。将棋も同じで、指したい手がたくさんあったとしても、指せる手はたった一つ。あとの手は諦めないといけません。物事に優先順位を設定し、やることとやらないことを決めるというのは、考える力を育んでくれると思っています。

 我が家の3人の子どもの中で、一番決断力がない(決めるのに時間がかかる)のは、小学3年生の次女です。図書館に行って借りる本を選ぶ時間が長く、「これ面白そうだなぁ……。あっ、こっちも……」といった具合です。でもこれも、彼女なりの優先順位や選択を考えてのこと。思考を巡らせている時間を大切にしてあげたいと、見守っています。

【「株式会社いつつ」のホームページ】
http://www.i-tsu-tsu.co.jp/


    ☆育児漫画家・高野優さんのイラスト&つぶやきコーナー☆ その2







【高野優 公式サイト】http://www.k4.dion.ne.jp/~alamode/
【高野優 公式ブログ タカノアラモード】http://www.take.cside5.jp/alamode/blog/
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【なかくらあきこ・たかのゆう】
★文/なかくら・あきこ★東京都出身。女流二段。株式会社いつつ代表取締役。6歳から将棋を始める。1991、92年の女流アマ名人で連続優勝を果たし、94年に高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。その後、NHK杯将棋トーナメントなどテレビ番組の司会を務めるなどメディアで幅広く活躍。2007年に公益社団法人日本女子プロ将棋協会へ移籍。15年3月に現役を引退し、同年10月に株式会社いつつを設立。将棋と知育・育児を結びつけるような活動を広く展開し、お母さん向けの講演なども行う。将棋入門教材「はじめての将棋手引帖」の制作や、絵本『しょうぎのくにのだいぼうけん』(講談社)も出版。

★絵/たかの・ゆう★北海道出身。育児漫画家・絵本作家。NHK教育テレビにて『土よう親じかん』(2008年4月~2009年3月)、『となりの子育て』(2009年4月~2011年3月)の司会を務め、子育て世代から支持が厚い。『よっつめの約束』(主婦の友社)など著書は約40冊に上り、台湾や韓国などでも翻訳本が発売されている。また、マンガを描きながら話をするという独自のスタイルで、育児をテーマにした講演会を全国で開催。2015年には、特定非営利活動法人日本マザーズ協会が主催する「第8回ベストマザー賞2015・文芸部門」を受賞。
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