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美しいくらし
珈琲道具を屋台に積んで 「珈琲屋台 出茶屋」店主
鶴巻麻由子
第7回 出茶屋の小屋を作る②

イラスト:平林秀夫
小屋から少し話しが逸れるけれど、ここがなかったらまた今の小屋作りにつながらなかった場所だと思うので、屋台の新しい出店先 『仕立てとおはなし処Dozo』の話をしようと思う。

週末のDozo軒先出店は、小金井公園の出店が終わった翌月、 2016年4月からスタートした。公園出店の終わりが近づいて、公園で毎週のように来てくれていたお客さんたち、お散歩の人たちのことを考えると、小金井公園の近くで出店を続けたかった。
公園のすぐそばの農家さんで、小金井でいろいろと活動している金一さんの顔が浮かんだ。小金井公園の近くで出店場所を探していることを相談すると、「応援しますよ!」と言ってくれた。

小金井公園の1本南の細い道は、農家さんの庭先販売所が点在している。住んでいる方が中心となってそれを線でつなげて『小金井江戸の農家みち』として発信を始めて、ここ数年盛り上がっている。
「農家みち」という呼び名もかなり定着してきていて、地場野菜を求めて回る人も多い。

その農家みちのある土地の雰囲気に惹かれ、引っ越して来たご夫婦がいる。「物語屋」の中川さんと「仕立屋」のイズミさんのお二人だ。中川さんとは平林家での落語のイベントを聞きに来ていたときから、イズミさんとは最初の出店先ペタルさんのころから顔見知りで、平林家で怪談や、仕立てと物語のイベントを開催して、よく知り合うようになった。 
二人が小金井で挙げた結婚式に屋台で呼んでもらって、初めて結婚式で珈琲を淹れたのはとても幸せな思い出だ。


金一さんに出店先の候補を案内してもらった3カ所のうち、一つは中川さんの家の庭に通じる場所。さすがに屋台が庭先にくるのはどうなんだろう、とお二人に相談することにした。
まだ寒い冬の日、こたつに入れてもらっていろんな話をした。 お二人もご近所さんの集まる開かれた場所にしたいのだという。「ここがいいんじゃない?」と言ってくれて、『仕立てとおはなし処Dozo』軒先出店が始まった。


小金井のいちばん北側に位置するこの場所は、関野町(せきのちょう)という地名だ。小金井公園ができる前から代々関野に住んでいる金一さんに聞けば、このあたりの古い話が聞けてとても面白い。
Dozoの角を農家みちから南に行く道。金一さんに聞くと、このあたりはかなり昔、お店がいつくかあって「関野銀座」と呼ばれたそうだ。
今は住宅街でお店があったようには思えなかったから、銀座!? とびっくりしたのだけれど、農家みちが開かれて、物語屋さんと仕立屋さんが引っ越してきて、出茶屋の出店が始まって、ご近所さんには古道具屋さんや、料理人、いろんな人が集まってきた。
なんとなく「関野銀座」という言葉を思い出して面白くなる。

そんな折、その元関野銀座に長い間ほって置かれていた空き家があって、その古い家を、建築事務所ブランキューブさんがリノベーションするという話を聞いた。

ブランキューブの市川さんには5年ほど前にイベントに誘ってもらったことがある。
『こびとの家moom』というブランドの1周年の記念イベントを国立でやって、そのときに招いていただいて珈琲を淹れた。
ムーミンがいるような、北欧の世界観。「エイジング」という新しいものにも古い風合いを持たせる特殊技術が本当にすごい。

イベントは店内で、また小金井からもし歩いたら1時間以上かかる場所ということで、屋台ではなくて屋台の道具一式を国立まで運んでもらっての出店。
火鉢や鉄瓶、小さなイスなどたくさん積んだ市川さんの車の中では、小金井生まれ小金井育ちの市川さんと、小金井のこれ知ってる? と小金井自慢話をたくさんしたのが印象的だった。いつか小金井でもイベントやりたいと話した。

あの古い家も、市川さんがリノベーションして生まれ変わったらどんなふうな家ができるのだろう、また関野銀座になっていくなぁ。と、毎週、出来上がりを楽しみにDozoで出店していた。



ご近所さんになった市川さんの事務所。
「小屋を作る!」とわくわくするものの、素人考えで何から手をつけていいかわからない。市川さんに、小屋の話をまずは聞いてもらいたいと思った。

そうして初めて踏み入れたmoomの世界。
小さな2階建ての1フロアは、気軽に入ってもらってmoomの世界観に自然に触れてもらいたいと、飲食店の許可を取っているそうだ。何か地元でゆくゆくいろんなことできたら、と考えているそうだけれど、まだほとんど使われていなかった。

小屋の相談をあれこれとしながら、この場所が気になって「もったいない、この場所を知ってもらいたい」という気持ちが浮かんだ。
そして、小屋が稼働するまでの道のりはまだまだ遠い。
いきなり小屋より、準備にもなるし、庄司さんにやってもらったら……と思いついてしまった。
庄司さんに聞いてみたら即答。よし、市川さんに聞いてみよう。

さっそくオリーブ・ガーデンさんに下見に来てくれた市川さんをつかまえてオファーをすると、お試し期間でできるとありがたいと言ってくれた。
小屋ができるまで、期間限定「出茶屋の小屋@moomカフェ」を庄司さんに始めてもらうことが決まった。

いよいよ出茶屋のスタッフとして、今年2月から庄司さんにmoomカフェ始めてもらうことになった。いきなり一人で大変だったのかもしれない。料理やお菓子、作ることが大好きという長く喫茶店で働いていた庄司さん。moomカフェという場所ができて、イメージが一気に広がったのか、その「作る」エネルギーはすごい。
それから5カ月になる。moomカフェで生まれた庄司さんの自家製メニューの数は増え、庄司さん企画で平林さんの絵の展示も開催することができた。

私も、小屋に備えて二人で出茶屋をやる、というイメージをつかむことができたし、moomカフェという「アンティークな空間で出茶屋の珈琲を」というコンセプトの中でやれることはまた屋台とも小屋とも違って、すごくいい時間をもらっている。


「屋台」という文化は、コミュケーションがとても小さい場所に詰まっている。店とお客さん、またお客さん同士の距離はとても近い。でも「背中は外」というのがポイントで、小さいけれど開かれた空間になる。
それぞれの屋台にはその屋台の雰囲気があって、パーソナリティーがよく出るものが屋台だから、「出茶屋」としての屋台を増やすことはないと常々思っていた。
また同じように、自宅などの一部を開放する「住み開き」には、そこに住んでいる人、それぞれの雰囲気がある。
さらに考えていくと、お店というもので感じることは、大きなお店でも同じかもしれない。より小さい店だとそれがわかりやすいだけだ。それが、私が大事にしたいことなのだ。

要は人。
人同士、地域でつながり、その小さな存在同士が絡み合って、自然発生的に生まれるもののワクワクすることといったらない。

地元愛の思いのこもった人たちの集う場所でつながっていったもの。
そうして市川さんに相談して、小屋作りの第一歩を踏み出した。

次回は、平林家から出茶屋、市川さんとつながった、檜原村の材木屋さんにみんなであいさつに行くことから始まる。


(写真提供:鶴巻麻由子)


【「珈琲屋台 出茶屋」のホームページアドレス】
http://www.de-cha-ya.com/
【「珈琲屋台 出茶屋」のFacebookページ】
https://www.facebook.com/dechaya.koganei/

【平林さんのお絵かき教室のホームページアドレス】
http://kyklopsketch.jimdo.com/

※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『今日も珈琲日和』を好評発売中です(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。WEB連載「今日も珈琲日和」はこちらをご覧ください。

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【つるまき・まゆこ】
1979年千葉県生まれ。2004年に東京都小金井市に移り住む。同年、小金井市商工会が主催する「こがねい夢プラン支援事業」に応募し、珈琲屋台のプランが採用される。現在は主に市内3カ所に日替わりで出店。詳細は「珈琲屋台 出茶屋」のホームページを参照。
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