勉強しやすいように部屋を改善すれば、子どものやる気がアップして家庭学習に集中するようになる――第1回ではその理由を説明しました。今回は具体的な事例をもとに、「使いやすくて気持ちのよい勉強部屋づくり」のコツをお話します。事例1:なんでも収納するA君(中学校3年生) こまごまとしたものが机の引き出しやキャビネットに収納されていて、一見きれいな部屋です。ものを出しておくのが嫌で何でも収納するのですが、自分の部屋では足りなくてお姉さんの部屋の物入れまで使う始末。頻繁に部屋の模様替えをしています。
「片付け」と「整理」は違います
引き出しには縦にものを収納すると取り出しやすい。鉛筆、ペン、定規など入れる場所を決めておく (イラスト:高尾 斉)
A君の部屋は片付いているように思えます。でも実は、収納の方法に問題がありました。ここで、片付けについて考えてみましょう。「片付け」と「整理」は意味が違います。「片付け」は散らかっているものをまとめてきちんとすること。おかあさんが「ご飯だからテーブルの上を片付けて」と言いますね。そうすると置いてあった本や新聞をはじによけたり、本棚に入れたりする。これが「片付け」です。
一方、「整理」は必要なものと不要なものに分けることから始まります。そのうえで不要なものを捨て、必要なものを“使いやすく”収納することです。皆さんが求めているのは片付けることではなく、整理することですね。
必要なものを取り出しやすく収納する 「整理する」ということは単に「ものをしまう」ことではありません。A君は何でも引き出しやキャビネットに入れていましたが、“使いやすく”しまってあるわけではありませんでした。収納する場所や方法を間違えると使いにくい部屋になってしまいます。
ものを出しておくことが嫌いなら、もちろんしまってかまいません。でもA君の場合には、机の引き出しに勉強に必要のないものがたくさん入っていましたし、教科書や辞書があちこちの棚に入れてありました。そこで、離れたところにある本棚を机のそばに移動させ、勉強に必要な本を整理して入れました。
使い勝手がいいように勉強道具の置き場所を決めて、使い終わったら必ずそこにしまうという習慣をつけること。それが、整理のできた気持ちのよい勉強部屋づくりのポイントの一つです。
本棚の中身を整理してイスの左に移動。席を離れなくても必要な本をすぐに取り出せる(イラスト:高尾 斉)
こうしたアドバイスにより、勉強部屋を改善したA君。必要なものをすぐに取り出せる環境にしてからは、模様替えをしていないそうです。しばしば家具の配置やものの置き場を変えていたということは、本人の中で何かが落ち着かなかったり、しっくりこなかったからなのでしょう。ようやく自分が納得できる部屋になったのだと思います。
※次回は、「勉強に集中できる部屋づくり」の事例をお話します。大好きなものにいつも囲まれていたい子どもたち。遊びの誘惑がたくさんある部屋で、どうしたら気が散ることなく勉強に集中できるのかを考えます。(構成・川島省子)
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