× close

お問い合せ

かもめの本棚に関するお問い合せは、下記メールアドレスで受けつけております。
kamome@tokaiedu.co.jp

かもめの本棚 online
トップページ かもめの本棚とは コンテンツ一覧 イベント・キャンペーン 新刊・既刊案内 お問い合せ
美しいくらし
ぬいぐるみには旅をさせよ! ウナギトラベル代表取締役社長
東 園絵
第3回 ウナギトラベルの「おもてなし」 前編

 ドキドキしたり、ワクワクしたり、しみじみしたり、はしゃいだり――。ウナギトラベルのフェイスブックには、愉快なコメントとともに、生き生きとした“ツアー客”の写真が次々にアップされる。ぬいぐるみの旅がなぜこんなにも多くの人々の心をとらえたのか? その謎を探るため、かもめブックスの広報宣伝部長「カモメのるー」が日帰りの横浜ツアーに参加して旅の舞台裏をレポート。10月某日、午前10時。ツアー当日は朝からすっきり快晴。旅は都内にあるウナギトラベルのオフィスからスタートします。

――「ようこそるーさん、お待ちしていました!」。笑顔で迎えてくれたのは、社長の東園絵さんとツアーコンダクターのウナギのウナーシャさん。案内された部屋には今日のツアー参加者がおそろいだ。テーブルを囲んでウナーシャさんとミーティング。その風景を東さんは楽しそうに撮影する。

出発前、ミーティング中の「ツアー客」を撮影
 では、今日のツアー客をご紹介しましょう。まずは山形県から来たナマケモノさん。一人でツアーに参加するのは初めてだから、るーさんと同じですね。クラシック音楽が好きな真太郎さんは愛媛県から、長い耳のモサオさんは北海道から来てくれました。千葉県から参加したフクロウのシルクさんは指揮者志望。ビールが好きなパンダのふみさんは神奈川県から。以上、るーさんを含めて6人のお客さまです。

――るーは、たった今オフィスに着いたばかりだけれど、皆さんはどのように?

 通常、ツアーに参加するお客さま(ぬいぐるみ)は事前に宅配便でこちらに送ってもらいます。ツアーを実施する日は天候などを考慮しながら決めますので、それまではオフィスに滞在してもらい、季節のイベントや誕生パーティーなどの催しで、ぬいぐるみ仲間との交流を楽しんでいただいています。

――待っている日々も楽しそう。ウナギトラベルの“おもてなし”は、旅の前から始まっているんですね。打ち合わせが終わったツアー客は、東さんの大きなリュックに納まっていよいよ出発です。電車に乗ったとたん、スマートフォンを取り出してなにやら作業を始める東さん。その文字入力の速さに、るーはびっくり仰天!

 今、先ほどのミーティングの写真をフェイスブックとツイッターにアップしました。ぬいぐるみの持ち主には、今日、横浜ツアーを実施することを事前にお知らせしていますから、「そろそろ出発かな」とアップされるのを待っていてくださるはず。すぐにコメントを返してくださる方も多いので、移動時間などを利用してスマートフォンでこまめにチェックしています。

――アップされたのは、ちょっと緊張ぎみのツアー客6人の写真。電車に揺られている間にもフェイスブックにコメントが寄せられる。

 ぬいぐるみの持ち主以外の人からの投稿も多いんですよ。このサービスを始めた当初から、写真に添えるメッセージは日本語と英語の両方で入力しています。海外からのツアー参加者やコメントの投稿者も増えています。

――続いて今日の「参加者名簿」を取り出した東さん。そこには、各自の性格や好みが書いてある。

 ツアーに申し込んでいただくときにアンケートをお願いしているんです。事前にツアー客(ぬいぐるみ)の好きなことや苦手なことを教えていただいて、撮影場所や参加者同士のコミュニケーションなどのアイデアを練ります。一人ひとりのお客さまをどこで主役にするか、どうやったら個性を生かし、輝かせることができるのかを考えて……。たとえば今日は、音楽に興味のある参加者が2人、お酒が好きな参加者が2人いますから、どこかでそれを生かして楽しませたい。さらに、ツアー客同士の交流を通じて、持ち主が今まで気づかなかったぬいぐるみのキャラクターを発見してくれたらうれしいですね。

――東さんはいつも、ツアー客の背景にいる持ち主のことを思い浮かべながら旅をしている。電車に揺られること数10分で、横浜駅に到着だ。駅名の入った看板を背景にぬいぐるみの撮影を開始。次々に構図を決めてパッとシャッターを押していく。微妙な角度で変わるぬいぐるみたちの表情を見逃さない東さん。その手元に迷いはない。改札を出たら、いざ横浜の街へ!

 まずは水上バスで海から山下公園に向かいましょう。海から港や街の風景を楽しむことができるのでおすすめのルートです。見どころはいろいろありますが、外国からのお客さまも多いので、横浜の魅力を十分に味わってもらえるような場所を選んでいるんですよ。日帰りツアーは時間配分も大切。夜景は人気がありますから、日没の時間に合せてスケジュールを考えています。

――水上バスに乗り込んだら、展望のよい席を確保して撮影スタート。海の香りと波しぶきに歓声をあげるウナギトラベルの一行は、サングラスをかけてもらってポーズをとる。20分ほどの船旅を楽しんだら、山下埠頭に係留されている「氷川丸」の見学へ。

 横浜ツアーを始めてからあらためて街全体を見渡して、今まで知らなかった建造物や歴史や文化などを学びました。氷川丸の面白さを知ったのもその一つ。いろいろな観光地のツアーを実施していますが、それぞれの地域の魅力を発見するのもツアーの楽しみです。
 撮影ポイントやテーマは、あらかじめお客さまのイメージを膨らませて、ある程度考えておきます。でも、現場に出たらあとは直感で決めることが多いですね。

――氷川丸の中で東さんは、ナマケモノさんがポストの投函口に手を挟まれてしまったシーンを撮影。「何にでも興味を持ってしまう」というおちゃめな彼の性格がうかがえる写真だ。スナック巡りが趣味のモサオさんとビール好きなふみさんは、バーカウンターに並んでパチリ。丸窓から外を眺める写真はぬいぐるみがシルエットとなって、しっとりとした印象に。どの写真からも物語が紡げそうだ。










 さて、そろそろお腹がすいてきませんか? 氷川丸をバックに記念撮影をしたら、山下公園を抜けて中華街に行きましょう。おいしいギョウザのお店にご案内します。食事の後はみなとみらいへ。観覧車に乗って空から横浜の街を見るのもステキですよ。

――そう話ながら、スマートフォンを手にとり、素早くフェイスブックに写真をアップする東さん。次々に入る「いいね!」やコメントを見てほほ笑む。ぬいぐるみと、持ち主と、フェイスブックを見る人を喜ばせるために、誰よりも東さん自身が楽しんでいるようだ。

※「ウナギトラベルの横浜ツアー」はまだまだ続きます。後半もお楽しみに。











(構成・編集部)

【ウナギトラベルのホームページアドレス】
 http://unagi-travel.com/

【ウナギトラベルのフェイスブック】
 https://www.facebook.com/unagitravel
ページの先頭へもどる
【あずま・そのえ】
三和銀行、ドイツ証券を経て、2010年にぬいぐるみ専門の旅行会社「ウナギトラベル」を起業。ユニークなビジネスを手掛ける女性起業家として注目されている。14年10月、斉藤真紀子氏と共著で『お客さまはぬいぐるみ』(飛鳥新社)を上梓。
新刊案内