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美しいくらし
ジョージアで出会ったモノとコト モデル・定住旅行家
ERIKO
最終回 第二の都市、クタイシへの旅
 新刊『ジョージア旅暮らし20景』では、首都トビリシ、東部カヘティ地方、コーカサスのスバネティ地方での滞在を中心に、それらの周辺の街に訪れたときの様子を紹介しました。このコラムの最終回では、書籍で書ききれなかった、ジョージア西部にあるイメレティ地方のクタイシを紹介したいと思います。

ジョージア第二の都市クタイシの全景


 クタイシはジョージア第二の都市で、トビリシから221km西に位置するイメレティ地方の州都です。10世紀から12世紀、トビリシが異民族に支配されていた時代にはジョージアの首都でもありました。国際空港があり、LCC(格安航空会社)便を中心にヨーロッパ近隣諸国へ運航しており、トビリシを経由することなくジョージアへ入国をすることができます。
 この街はジョージア国内で日本と最も歴史的関係がある場所でもあります。第二次世界大戦後、クタイシには捕虜収容所があり、シベリアからやってきた捕虜たち約2000人が自動車部品製造の労働を強いられました。その際、日本人の技術の高さや勤勉さ、信頼のおける人間性に、地元の人たちは好感を持ったそうです。2022年の春には、日本・ジョージア外交樹立30周年を記念して桜の植樹も行われました。

世界遺産・バグラティ大聖堂

 ジョージアに3つある世界遺産のうちの一つ、バグラティ大聖堂もこのクタイシにあります。11世紀初めに完成したこの大聖堂は、ジョージアが最も繁栄した12〜13世紀のタマル女王の時代に、ジョージア最大の哲学、教育の中心地となった場所です。
 この地域は神話の舞台としてもよく知られています。アルゴー船でコルキス王の宝物を探したギリシア神話の英雄イアソンが、金の羊毛皮を求めやってきたのが、当時コルキスの首都だったクタイシなのです。実際に黒海沿岸部には砂金が採集できる場所があり、羊毛皮を使って砂金が集められていたといわれています。コルキス時代の黄金細工はトビリシの博物館に展示されており、3000年以上経った今なお、多くの人たちを魅了する輝きを放っています。

 神話伝説はこれだけではありません。クタイシ郊外のクミスタヴィという場所には巨大地下鍾乳洞があり、あのプロメテウスが磔にされた洞窟だともいわれています。この洞窟は1984年にジュンベル・ジシュカリアという学者によって発見され、調査が開始されたそうです。一時期、政治的な理由によって調査が中断されていましたが、2007年に再開し2011年に終了しました。現在は観光客用に解放されています。

 ジョージア人の友人に連れられて洞窟ツアーに参加したのですが、ツアーではグループにまとまってガイドが同行し、英語で説明を聞きながら見学します。洞窟内は5つのホールに分かれており、800段の階段がある巨大な空間です。温度が一年中14度に保たれており、気温の高い日に行くと風穴に来たような涼しさを感じられます。
 カラフルにライトアップされた洞窟内には、「つらら石」と呼ばれる天井から吊り下がっているもの、たけのこのように床から伸びている石筍型、まるで雲のようにモコモコとした「フリーストーン」と呼ばれるもの、そしてカーテン状のものなど、あらゆる形状の鍾乳石を見ることができます。

 鍾乳洞には日本でも何度か訪れたことはありますが、クタイシの洞窟はその大きさやスケールが一段と大きく迫力があり、名前の通り巨人のプロメテウスが鎖でつながれていたといわれても不思議ではない雰囲気があります。クタイシは見どころがたくさんある街ですが、この洞窟は夏の暑い時期に、異空間で涼しむのには持ってこいのスポットです。

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 全6回に渡り、新刊には書ききれなかったジョージアの魅力を紹介させてもらいました。歴史や文化が深く刻まれたジョージアという国は、きっと訪れるたびに新たな発見がある国なのだと思います。皆さんが再び気軽に旅に出かけられるようになったら、ぜひジョージアを行き先候補のリストに入れてください。そして、多彩な魅力を持つジョージアをぞれぞれの視点で体験してもらいたいと願っています。by ERIKO(おわり)

【WEBサイト・ちきゅうの暮らしかた】http://chikyunokurashi.com/profile/
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 “ヨーロッパ最後の秘境”と呼ばれ、今注目の国ジョージア。現地の一般家庭で生活を共にしながら、首都トビリシはもちろん、ジョージア人にとっても“秘境中の秘境”であるスバネティ地方まで、ほぼすべての地方を旅した定住旅行家・ERIKOさんの紀行エッセイです。壮大な景色やユネスコ世界遺産の建造物、素朴で温かな人々との出会いなど、“旅暮らし”だからこそ見えてくるジョージアの知られざる魅力を、豊富なカラー写真とともに紹介します。

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【エリコ】
鳥取県米子市生まれ。世界のさまざまな地域で現地の人びとの家庭に入り、生活を共にし、その暮らしや生き方を伝えている。ラテンアメリカ全般(25カ国)、ネパール、フィンランド、サハ共和国、イラン、スペイン、パラオ、カルムイク共和国など約50カ国にて106家族との暮らしを体験。とっとりふるさと大使。米子市観光大使。著書に『ジョージア旅暮らし20景』(東海教育研究所)、『暮らす旅びと』(かまくら春秋社)、『せかいのトイレ』(JMAM)、『世界の家 世界の暮らし①~③』(汐文社)など。NEPOEHT所属(モデル)※写真:KATUMI ITO
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