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食べるしあわせ
昆虫食が世界を救う!? 昆虫食研究家
シャーロット・ペイン
第2回 異国からやってきた「虫愛ずる姫」
 「ヘボ」と呼ばれるクロスズメバチの食習慣が受け継がれている岐阜県恵那市の串原地区。はるばるイギリスからやってきたシャーロット・ペインさんは、地域の人々と交流しながら昆虫食の研究をしています。キラキラと昆虫や昆虫食について話してくれるシャーロットさんは、まさに可憐な異国の現代版「虫愛ずる姫」。いったい、どんな子どもだったの? 今回は、そんなお話から伺います。


 生き物は、小さいころからずっと好きです。イギリスの自宅の近くには小川が流れていて、森もあって。生物学者だった祖父の影響か、周りの生き物は皆、友だちでした。祖父の書いた本を読んで顕微鏡でミジンコを観察したり、サンショウウオを飼育したり。そうそう、庭の水槽でボウフラを飼っていたら蚊が大発生してしまい、両親に叱られたこともありました(笑)。爬虫類も好きだし、苦手な生き物はありません。だからさまざまな生き物がいるところに行きたくて……。いろいろな種類の生き物がいるところには、昆虫もたくさんいる。昆虫は種類も多くて、それを含めて生き物はすべて好きなんです。

 虫も犬や猫のようにかわいいかって? うーん、生き物をかわいいと思うより、いつも「面白い」と思っていました。“fascinating(すごく魅かれる)”とか“interesting(興味深い)”という感じ。私は子どものころからずっと神さまの存在を信じていたので、神さまはどういうふうにこんな生き物を作ったのかと、それがすごく気になって。それで進化に興味を持って学んできました。なぜこういう世界になったのか、それを考えると本当に面白い。

幼いころから好奇心旺盛だった
 初めて昆虫を食べたのは、大学生のころ。チンパンジーの研究をしていたときにフィールドワークでウガンダに行って初めてアリを食べました。先生から「チンパンジーが食べているから人間も食べられるよ」と言われて、「そうですか」と言ったら「じゃあ、どうぞ食べてください」と言われて。私は虫を触るのは大丈夫だったから平気なふりをしていたのだけど、そのままアリを食べちゃう先生を見て、本当は「先生、すごいな……」と思った(笑)。それで、先生のマネをして食べたんです。ちょっと酸っぱくて、味はよく覚えています。

生物学者だった祖父の影響を受け虫に興味を持ち始めた
 霊長類は古くからアリやシロアリなどいろいろな昆虫を食べてきたようですね。最近、狩猟のために使ったと思われていた骨で作った道具が、実はシロアリを捕るために使われていたものだったという結論を、ある考古学者が出しました。シロアリの巣を壊すために使ったようですが、今でも人間は同じやり方でシロアリを採っています。チンパンジーは骨の道具ではなく草を使って器用にシロアリを採りますが、やはり同じようなやり方で採って食べている人間は今でもいますよ。

──シャーロットさんが初めて日本に来たのは2009年。ケンブリッジ大学を卒業した後、霊長類の研究で世界をリードする日本でさらに研究を深めようと、民間の奨学金を得て1年間日本語を学んだという。

串原地区はここにある
 霊長類の研究をするならアメリカか日本。それぞれやり方は違うと聞いていたけれど、ケンブリッジ大の先生が日本人の研究者と共同研究をしていて、いつも「日本の研究者のやり方はすごいよ、面白いよ」と言っていたんです。でも、あまり日本に住みたいとは思っていなかった。特に東京は住みにくいと思っていたんです。

 なぜかというと、私はイギリスのオックスフォードで育ってケンブリッジに行き、夏休みはずっとアフリカのジャングルの中で過ごしていたからです。オックスフォードもケンブリッジも街というよりどちらかというと田舎っぽい。でも東京はとても大きな街だし、人も多い。そんな大都会に「住めるかな」と思っていました。それに日本は「すごく混んでいる」というイメージ。道も電車もネオンサインも賑やかな感じだったし、そういうところに住んだことがなくて。まあ、冒険としては面白いけれど、住みやすいかどうかはわからないと思っていました(笑)。

 東京では一緒に日本語を勉強していたイギリス人やアメリカ人の友人もいたから、よく英語でも話していました。それが、串原に来たら英語をしゃべる機会があまりなくて(笑)。生活する上で必要なので片言で日本語を話しているうちに、皆がいろいろ教えてくれた。私もおしゃべり好きなので、どんどん話をするようになっていって。串原は人も雰囲気もゆったりしていて、英語を話さなくてもストレスになりません。それでも、たまにお母さんやイギリスの友だちから電話があると、英語が恋しくなってブワーッとしゃべりまくることもあります(笑)。

串原ではガソリンスタンドでアルバイトも
――串原が大好きでたまらない様子のシャーロットさん。来年の3月まで串原を拠点に日本の昆虫食の調査を続けるという。今後は、アフリカや日本での調査研究をもとに、さらに昆虫食の可能性を探求したいとプロジェクトを計画しているそうだ。次回は、そんなお話から。

(構成・白田敦子)

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【Charlotte L. Payne シャーロット・ペイン】
1987年イギリス生まれ。ケンブリッジ大学キングスカレッジ卒業、オックスフォード大学大学院博士課程に進学。文部科学スコラー(研究留学生)として、立教大学の野中健一教授とともに岐阜県恵那市串原を拠点に日本の昆虫食の研究をしている。
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