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美しいくらし
フランスの花の村を訪ねてみよう! 写真と文
木蓮
最終回 村めぐりの新たなムーブメント
 『フランスの花の村を訪ねる』の魅力は、花に包まれる村の絶景だけではなく、四季折々の村の暮らしも紹介していること。そこには、思わず「幸せってなんだろう」と考えさせられる心豊かな時間が流れています。フランス国内では数年前から、そうした村の魅力を探訪する旅がちょっとしたブームに。最終回では、フランス在住の著者・木蓮さんに、フランス人の間で高まりつつある新たな村めぐりのムーブメントについて聞きます。

◇南仏から内陸へ、海から山へ

秋のサレール(上)村の名を冠した特産のチーズ「サレール」
 フランスでは日本と異なり、多くの方が長い夏のバカンスを楽しみます。その滞在先や過ごし方がここ数年、多様化しています。
 かつては、パリを中心とする大都市で頑張って働き、コート・ダジュールに代表されるような太陽の光が降り注ぐ南フランスの海辺でバカンスを過ごすことが理想とされました。そのため、夏の終わりに日焼けしていないと、「あの人、体調が悪かったのかしら?」とか、「バカンスに行くお金がないのかも……」と、密かに心配されます。
 ですが、バカンスの始まりと終わりの車の大渋滞のすごいこと! それに、海岸沿いはいつも人、人、人! そんな状況が続くと、人々の関心は徐々に内陸の湖や川、山にも向けられるように。最近は、川くだりやクルージング、熱気球やトレッキングなど、バカンスのアクティビティも多様化しています。

◇脚光を浴びる村めぐり 
 そこで注目されてきたのが、「フランスの最も美しい村」や、新刊で紹介している「フランスの美しい花の町や村」に認定された村々です。いずれも各協会による厳しい選定基準で選ばれたもの。村人たちは村の環境を守り残すために努力を続けており、その景観と素朴ながらも豊かな暮らしぶりが、多くのフランス人たちにも再評価されているのです。

 そうした中でここ数年、フランス人の間で人気が高まっているのが「フランス人の好きな村」ランキング。きっかけとなったのは、フランス人ジャーナリスト、ステファン・ベルン氏監修の本『われわれの地方の最も美しい村(Hors-série Les Plus Beaux Villages de nos régions,avec Stéphane Bern)』です。刊行当時、フランスには22の地方があり(2016年に13地方に再編)、各地方を代表する村を一つずつ、全部で22の村が掲載されています。都会暮らしとは違う村それぞれの異なる風土や暮らしなどの魅力を紹介し、人気を集めました。

 フランスのテレビ局「France 2」が、この22の村の中で「フランス人が選ぶ好きな村」の投票を実施。第1回となった2012年は約7万人もの投票者数があったそうです。結果が発表された同年6月の特別番組は、視聴率約20%を記録し、約480万人もの人々が視聴。それから毎年、バカンスシーズン直前の6~7月ごろにウェブサイトで投票を実施し、今ではこの番組を見てバカンスのコースを決める人も増えているようです。

◇「フランス人の好きな村」ランキング

べナック・エ・カズナック
 シーズンオフに限らず、フランスの田舎の小さな村は交通機関の不便な場所が多いです。第1回の栄えある1位は、新刊書でも紹介しているサン・シル・ラポピー。この村の知名度は番組をきっかけに急上昇し、バカンスシーズンには大いににぎわうようになりました。
 ちなみに、新刊書で紹介している村も例年ランクイン。ご紹介すると……

2017年1位 カイゼスベルグ
2013年1位 エギスハイム
2012年1位 サン・シル・ラポピー
2017年3位 ラ ロック ガジャック
2012年4位 サレール
2013年5位 コンク
2012年5位 イヴォワール
2012年6位 リクヴィル
2012年7位 ベナック・エ・カズナック
2013年10位 ムスティエ・サント・マリー
2014年12位 シャルロー
2012年17位 ジェルブロワ

クリスマスのカイゼルスベルグ
 最近は他局でも小さな村を紹介する番組がたくさんあります。フランス人も自分たちが知らない魅力ある場所がたくさんあることに気づき、村めぐりに関心を向けるようになっているのです。

◇村ごとに異なる魅力  
 フランスの村の魅力は、地域によって大きく異なる景色や風土。その土地に合った家、ワインやチーズなど食べ物の風味も多様です。皮肉なことに日本ほど流通事情がよくないのが逆に幸いし、各地域の独自性が守られているように思います。
 村を訪ねて楽しいのは、どこに行っても「私たちの村はいいでしょう!」と村人から自慢されるように感じるほど、自分たちの地域に誇りと愛情を持っているのが身近に感じられることです。
 ぜひ、皆さんもフランスの小さな村の魅力を楽しみに来てください。それは、きっとあなたの住む場所を新たな視点で見直し、大切に思う気持ちを呼び覚ましてくれることにもつながると思います。

――『フランスの花の村を歩く』では、年間100以上の村を訪ね歩く木蓮さんが、日本人にはまだまだ知られていない村も紹介しています。ぜひお読みください。
(構成:編集部)

※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『フランスの花の村を訪ねる』(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)が絶賛発売中です。
WEB連載「フランス 花の村をめぐるたび」はこちらをご覧ください。
WEB連載「フランスの花の村を訪ねる」はこちらをご覧ください。
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【もくれん】
神戸出身。フランスの「おへそ」にあたるオーヴェルニュの人口200人に満たない小さな村に在住する日本人女性。フランス人の夫との結婚を機に渡仏。さまざまな地域に接しているオーヴェルニュの地の利を生かし、名もなき小さな村を訪ねる旅にどっぷりはまる。フランスの小さな村の美しさに魅了され、「パリだけではないフランスの美しさを伝えたい」と、訪ねた村々をブログで紹介。みずみずしい写真と住んでいる人間ならではの視点で人気を呼んでいる。著書に『フランスの小さな村を旅してみよう』『フランスの花の村を訪ねる』(東海教育研究所)。
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