ととら亭のマンティ
日本でギョーザといえば、調理方法は「焼き」が基本。しかしこれは僕たちが調べた限り、世界のギョーザの中では圧倒的に少数派でした。中国のジャオズに始まり、トルコのマントゥ、アゼルバイジャンのギューザなど、主たるラインアップはおしなべて「ゆでた」もの。ところが中央アジアのマンティは、これまた少ない「蒸し」型です。
食べるだけなら全く関係ないこの違いは、作るとなると高いハードルになります。固形物の中心まで十分加熱するには、蒸すという方法はゆでるも余計に時間がかかります。さらに皮を薄く作る分、具や蒸し器内の水分の影響を受けやすいため、扱いはより慎重になります。これを、ととら亭のようなアラカルトの非完全予約制レストランで秋から冬の繁忙期にやるというのは、ちょっとした挑戦になりました。
中央アジアで食べたマンティ
……はやる気持ちを抑えて厳選したのが今回の取材対象の筆頭、中央アジアのギョーザ、マンティです。ぱっと見は、やや大きめの小籠包。しかし切ってみると皮はかなり薄く、中の具は挽き肉というよりもっと粗めで、包丁でたたいたもの。僕たちの期待は、口に入れる前からいやがうえにも高まっていました。
(久保えーじ著『世界まるごとギョーザの旅』より)
※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『世界まるごとギョーザの旅』が絶賛発売中です(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。
WEB連載「世界まるごとギョーザの旅」はこちらをご覧ください。【「旅の食堂ととら亭」のホームページアドレス】
http://www.totora.jp/※『世界まるごとギョーザの旅』の出版を記念して、東京・中野区野方にある「旅の食堂ととら亭」で《世界のギョーザ特集》を2017年7月10日までの期間限定で実施中。 期間中はスロバキア・韓国・アゼルバイジャンの3種類のギョーザが“旅のメニュー”として登場します(6月12日~29日は取材旅行のため休業。詳細はととら亭のHPを参照)。
【くぼ・えーじ】
1963年神奈川県横浜市生まれ。ITベンチャー、商業施設の運営会社を経て独立。「旅の食堂ととら亭」代表取締まられ役兼ホール兼皿洗い。20歳のころからオートバイで国内を旅し、30歳からはバックパッカーに転身。いつかはリッチな旅がしたいと常に夢見ているが、いまだ実現していない。特技は強面の入国審査官などの制服組から笑いを取ること。妻・智子(ともこ)は1970年群馬県高崎市生まれ。食品成分分析会社、求人誌営業を経て料理業界へ転身。フランス料理、ドイツ料理のレストランで修業し、旅の料理人となる。見かけは地味だが、スリルとサスペンスに満ちたジリ貧の旅を好む。特技は世界中どこでも押し通す日本語を使った値切り。