手づくりの料理を家族みんなで食べる――それが理想だとわかっていても、忙しさから家庭の食卓はおろそかになりがちです。そこで今回登場いただくのは、健康をテーマとした料理教室「Joy of Cooking」を主宰し、食育インストレクターとしても活躍している石井万記子さん。モロッコ料理をヒントに、簡単にできる健康的な食事や家庭の食卓の役割について教えてもらいます。衝撃! 初めてのモロッコ料理
近年、一人で食事をする「孤食」、同じものしか食べない「固食」、食べる量が少ない「小食」など、いわゆる「コショク」が問題になっています。手作りの料理を家族全員で食べたいと思っても、お父さんは残業、お母さんも仕事、子どもたちは塾通いなどの理由で、家族で食卓を囲むことが難しいのが実情でしょう。
こうした食の問題を改善し、家庭で実践できる健康的な食事を提案したいとリサーチする中で出会ったのが、モロッコ料理研究家の原田佳代子さんでした。原田さんに教えてもらったレシピをもとに自宅で作ってびっくり! 「本当にこんなに使うの?」と思うくらいの大量のハーブとスパイスを入れた野菜料理は、おいしくて、しかもとても簡単だったのです。
なによりも感激したのは塩分が少なかったこと。日本人が1日に摂取する塩分量は10gをこえる
(注)といわれていますが、モロッコ料理は10人分でも10g以下が普通です。「求めていた健康食はこれだ!」と直感しました。
ハーブの力を体に取り込む モロッコ料理は地中海料理の一つで、野菜や魚介類のほか、穀類、果物、乳製品をバランスよくとり、オリーブオイルを使うのが特徴です。2010年にはモロッコ、スペイン、イタリアとギリシャの共同提案によって世界無形文化遺産に登録され、これを機に日本でも、とんがり帽子のような独特な形をした「タジン鍋」を使ったモロッコ料理が知られるようになりました。

学んだ料理は自身で編集してレシピ集に。手前は石井さんが手伝った、原田佳代子氏の料理本『MOROCCO』(株式会社イー.エム.アイ.)
地中海料理は国や地域によって個性があります。たとえばイタリア料理はしっかりと塩を使い、ハーブは彩りや香りづけ程度。モロッコ料理では塩分は控えめですが、ハーブは大量に使います。ある煮込み料理に使うコリアンダーは、なんと「ひと束」。しっかり煮込むことで味と香りがなじんでマイルドになるので、強い香りが苦手な人でも抵抗なく食べることができます。「ハーブやスパイスをたっぷり使って塩分は控えめ」であることが、モロッコ料理の大きな特長といえるでしょう。
ハーブは香りが豊かなだけではありません。その力を実感したのは、原田さんの料理本の制作をお手伝いしたときでした。3日間スタジオにこもり、撮影用の料理を作っては食べる――体調不良に加えてかなりの重労働だったにもかかわらず、終わるころにはすっかり復調し、かえって元気になっていました。
「異国からモロッコに嫁いだお嫁さんが長旅で疲労困憊しているときに、お姑さんから口いっぱいにハーブを詰め込まれて回復した」というエピソードを聞いたことがあります。いずれもハーブをたっぷりと摂取した効用なのでしょう。
(注)厚生労働省の平成26年度国民健康・栄養調査結果では、20歳以上の日本人の食塩摂取量の平均値は1日あたり10.0g (男性 10.9g、女性 9.2g)。同省が推進する「健康日本21(第2次)」では8gに減らすことを目標としている。 ハーブとスパイスを使い、塩分控えめでヘルシーなモロッコ料理。次回は、そのさらなる魅力に迫ります。(構成・川島省子)
★石井万記子さんの料理教室のお知らせ
[石井万記子さんのお気に入り]
モロッコで購入した銀のポット。お茶にもフレッシュミントをたっぷり
「モロッコ料理と健康」※このイベントは終了しました。
日時:5月13日、20日、27日(全3回、いずれも金曜日)
会場:ユニコムプラザさがみはら
(相模原市南区相模大野3-3-2
bono相模大野サウスモール3階)
主催:東海大学エクステンションセンター
※申し込み方法などの詳細は下記のURLをご覧ください。
http://ext.tokai.ac.jp/staticpages/index.php/koza-detail?id=2016aUCL01