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きれいをつくる
幸せへのトビラは「AQ」で開く 目白大学社会学部長
渋谷昌三
子どものころの体験がAQを高める
 逆境に負けず幸せになれるコツ、「AQ(Adversity Quotient=逆境指数)」を紹介して好評だった連載「ピンチをチャンスに変える心のカギ『AQ』とは?」が、単行本『AQ -人生を操る逆境指数』として、8月28日に発売となりました。これから2回にわたり、著者の心理学者・渋谷昌三さんにインタビュー。連載や本では紹介しきれなかった「AQ」を高める秘訣などもご紹介します。

※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『AQ -人生を操る逆境指数』が絶賛発売中です(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。WEB連載「ピンチをチャンスに変える心のカギ『AQ』とは?」はこちらをご覧ください。

――IQ(Intelligence Quotient=知能指数)が高くて優秀でも、EQ(Emotional Intelligence Quotient=心の知能指数)が高くて人付き合いが上手でも、それだけでは幸せになれるとは限らない、との指摘は驚きでした。「それなら私も幸せになれるかも!」と勇んで『AQ-人生を操る逆境指数』を読みましたが、そもそも「AQ」はアメリカでタフなビジネス社会を生き抜くための指標として提唱されたものなのですね。

 「AQ」は、アメリカの組織コミュニケーションの研究者であるポール・G・ストルツ博士が提唱しました。その著書『すべてが最悪の状況に思えるときの心理学』(きこ書房刊)を私が翻訳し、日本に始めて紹介したのは1999年のことです。
 ハーバード・ビジネススクールでも教鞭を執り、企業のコンサルティングなどにも携わっていたストルツ博士は、ビジネスの現場で目覚しい活躍をしている人たちが必ずしも一般的に優秀とされるIQが高かったり、他人とかかわる能力の指標となるEQが高いわけではないと気づきました。
 では、そういう人にはどのような優れた能力が備わっているのか? ストルツ博士が着目したのが、逆境に陥ったときに乗り越えられる能力の高さであり、その指数がAQなのです。
同書はビジネススクールの教材にも使われるような専門的な内容が中心でした。日本で出版されたのは、ようやくIQに対してEQという言葉が定着したころで、AQはまだ一部の企業やビジネスマンに受け入れられ始めたばかり。それが、今や日々ストレスを感じる人のほうが圧倒的に多い状況になり、逆境を乗り切るためのAQの高さが社会全体で求められるようになっていると感じます。

――時代が「AQ」を求めるようになってきたわけですね。新刊ではAQを知り、高めるための第一歩として、ストレスにどれだけ耐えられるかという「ストレス・トレランス」に触れています。「小さなストレスをたくさん乗り越えることでそれが高められる」との指摘がありますが、具体的にはどういうことなのでしょう。

新刊書では具体的な事例や図版でAQを高めるコツを紹介
 実は、子どものころの体験がとても大切なんですよ。特に成長する段階の母親と子どもの関係は重要です。
AQについて直接調べたものではないのですが、アメリカで母親と子どもに積み木遊びをさせて行動を観察する実験がありました。積み木を自由に子どもに積ませ、それを見ている母親がどのようにかかわりを持つのかを調べたのです。子どもはめちゃくちゃな積み方をしますから、側で見ている大人には、「そこに積んだら積み木が崩れる」と予測が立ちます。そこで母親が「そこに置いちゃ崩れちゃうからダメよ」と先回りしてしまうと、子どもは一生懸命積んだ積み木が崩れるという失敗を経験しない。つまりAQは育ちません。一方、子どもが失敗しても辛抱強く見守っていると、そのうちに子どもは積み木が崩れた悔しさや積み上げられない敗北感を感じ、「作り直さなきゃ」と思う。そのとき初めて母親が「ここにこの積み木を置いたから崩れちゃったんだよ。もう一度やってみよう」とアドバイスする。そうすると、子どもの中にAQが育っていくのです。

【かもめ編集部から】
 「転ばぬ先の杖」も、こと子育てに関しては過ぎたるは及ばざるごとし。振り返れば、私など、両親や学校の先生、ご近所のおじさんやおばさんから叱られるたびにめげて、受験や就職活動の失敗や失恋も幾度か。知らず知らずAQを高めに高めてきたということになるのでしょうか……。でも、逆境こそ力になる、ピンチはチャンスに変えられると思うと、勇気がわいてくるのは確かなこと。さて次回は具体的にAQを高める方法について、本の内容をほんの少し、教えてもらいます。

(構成:白田敦子)
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【しぶや・しょうぞう】
1946年神奈川県生まれ。学習院大学卒業後、東京都立大学大学院博士課程終了。心理学専攻。文学博士。山梨医科大学教授を経て、目白大学社会学部長。非言語コミュニケーションを基礎とした研究領域である「空間行動学」を開拓。『「身近な人」との人間関係がラクになる心理学』(大和書房)、『ほんとうの自分が見えてくる心理学入門』(かんき出版)など人間関係やビジネスに生かす心理学に関する著書多数。
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