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食べるしあわせ
わたしの「旅と食」【公募エッセイ作品】
04:夫婦二人の思い出の味
かもめの本棚10周年を記念して募集した「旅と食」のエッセイ。全国から寄せられた多数の魅力あふれるエッセイの中から、本連載では5つの作品を紹介しています。今回は、新婚旅行で味わった一品をめぐる夫婦の物語です。


夫婦二人の思い出の味

こさふがこ(福岡県、75歳)


「ねえ、今までの旅行で一番記憶に残っている食べ物はなあに」と夫に問う。
「そりゃあ富山駅で買って列車で食べた鱒のすしよ。冷たかった、平ぺったかった、
そしてそりゃあ旨かったのお」
 
 それは50年前のこと。新婚旅行は鉄道の旅だった。九州から新大阪に朝着いたこと、湖西線という素敵な名前の路線を通ったこと、金沢、新穂高、高山など私には初めての土地を訪れたこと、全てが新鮮だった。そして多分、最終日。富山から名古屋に向かう列車のなかで向き合って、鱒のすしを開いたのだった。強いゴムで割竹を挟んだ押し寿司と、素焼きの容器のお茶の美味しかった思い出は、実は私のものでもあったのだ。

 以来、何度も一緒に旅行したのに、まさかまさか、普段意見が合わずもめてばかりの二人の「旅と食」の思い出が同じだったとは。
「実はその時の容器を今も食器棚の奥にしまってあるのよ、あなた知らなかったでしょう?」
 案外いい夫婦なのかもね、私たち。金婚おめでとう私たち。

※本記事は一般公募によるエッセイです(現在は受付を終了しています)。
※記載されている内容は筆者の体験や感じたことをもとに綴られています。
※登場する場所やお店の情報・商品・メニューなどは現在と異なる場合があります。
※内容に関するお問い合わせにはお答えできかねますので、あらかじめご了承ください。
※掲載にあたり、表現・表記の調整を目的として一部編集を行っています。


――長い年月を重ねても色あせない旅の記憶。なにげない会話をきっかけに、忘れられない味や風景がよみがえることがあります。次回はいよいよ最終回です。



◆かめの本棚のWEBマガジンや書籍で活躍する著者たちがつなぐリレーエッセイ
【忘れられない旅と味】はこちら
https://www.tokaiedu.co.jp/kamome/contents.php?i=1748
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-2026年7月現在-

★新作ブックレット『自由な旅のレシピ』⇒WEBマガジンの好評連載がブックレットに。世界70カ国以上を旅してきたえーじさんが「自由な旅」の仕込み方を指南。ステファニーさんの既刊『南仏ニースの食卓だより12カ月』より「クリスティーヌのキッチン」も特別掲載。

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