× close

お問い合せ

かもめの本棚に関するお問い合せは、下記メールアドレスで受けつけております。
kamome@tokaiedu.co.jp

かもめの本棚 online
トップページ かもめの本棚とは コンテンツ一覧 イベント・キャンペーン 新刊・既刊案内 お問い合せ
美しいくらし
旅する写真家に聞く世界の「最も美しい村」 写真家
吉村和敏
第1回 日本人が知らないプレミアム感が満載
 これまでに紀行エッセイ「フランスの村」シリーズを刊行してきた「かもめの本棚」が、世界中の村を知り尽くした写真家の吉村和敏さんにインタビュー! フランスをきっかけにイタリア、ベルギー、スペインの全ての「最も美しい村」を実際に訪れ、その風景をカメラに収めたという吉村さん。シリーズ化された写真集では、歴史と文化が色濃く残る村のさまざまな表情を自然豊かな美しい景観とともに紹介しています。
 大都市では得られない、村めぐりの素朴で飾らない面白さとは? なにげない風景が心に響く各国の魅力について全5回にわたって教えてもらいます。


フランス:プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地方のゴルド村


旅先で偶然見つけた案内板がきっかけに

小説『赤毛のアン』の舞台となったプリンス・エドワード島では物語の世界観が再現されている

 写真家として駆け出しの20代のころは、カナダを中心に撮影していました。最初はカナダのプリンス・エドワード島という『赤毛のアン』のふるさとの美しい島に1年間住み、そこで撮影した写真をもとに何冊か本を出した後は、ロッキー山脈に行ったり、雄大な大自然を追いかけたりして、カナダを隅から隅まで旅したのです。
 30代になって、そろそろ別の国にテーマを広げたいと思い立ち、ヨーロッパを車で旅していたときのこと。フランスのとある村の前に案内板を見つけました。「これは何だろう?」と、インターネットで調べてみると「フランスの最も美しい村」であることがわかりました。

「フランスの最も美しい村」の案内板

「最も美しい村」はフランスから始まった活動です。1982年、ある村の村長さんが、「フランスには美しく魅力的な小さな村がたくさんある。それらをリスト化して、多くの人にアピールしよう。そうすれば観光客が増えて村が活性化し、人も元気になる」と呼びかけました。確かに、村の遺産である歴史的な建物の修復にはお金がかかりますから、観光客が訪れれば、修復資金に充てることができます。結果、フランスで大成功して協会が発足。その取り組みがイタリア、ベルギー、スペインと広がっていったのです。実は、日本にも60以上の村が登録されています。

「これは新しいテーマになる!」
 直感的にそう思いました。

プリンス・エドワード島の景色

 もともと大都市にはあまり興味がありません。最初に追いかけたプリンス・エドワード島もそうです。カナダの都市とは全く違う、北海道の富良野や美瑛にも似た牧歌的な景観の美しさ。海岸線に広がる入り江の青と森の緑、空の薄い青との色彩のコントラスト。おとぎの国に出てくるような三角屋根の建物。見るものすべてに心惹かれました。

「地球上にこんな美しいところがあるんだ!」

吉村和敏さん(写真:編集部)

 プリンス・エドワード島は、当時まだ日本人はほとんど訪れていない場所でしたが、だからこそ自分が撮影し、日本の人たちに届けたかったのです。
 フランスの「最も美しい村」を初めて見たときも、ここには日本人が知らないプレミアム感があると思いました。なにより、僕の名前は「吉」の「村」です。生まれながらに田舎の美しい村を追いかける運命だったのかもしれません(笑)。

約5年間かけて、フランスの150の村を全踏破
 ついにやりがいのあるテーマを見つけたものの、当初、村を全部回ろうとは思っていませんでした。フランスにはそのときすでに156の村が協会に登録されていましたから、「そんなに回れるはずがない。絵になりそうな村だけを撮ろう」と。ところが、どの村が絵になるかなんてホームページを見ても、インターネットを検索してもわかりません。当然のことですが、20年前にそんな情報は手に入らなかったのです。

フランス:ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地方のロ村

フランス:グラン・テスト地方のウナヴィール村

「だったら、自分ですべての村を回るしかない」
 それが、長い長い旅の始まりとなりました。1年に1、2回のペースで海を越え、空港でレンタカーを借りて、2~3週間旅をして帰国する。1回の滞在で取材する村は20~25ぐらい。それを何度も繰り返して、取材だけで4年半~5年かかりました。
「全踏破にどうしてそこまでこだわるの?」とよく聞かれましたが、実際に始めてみたら、すごくやる気になってしまったというのが正直なところです。「何かを決めたら一つひとつ潰していくのが好き」という性格にもぴったりハマったのでしょうね。
 もちろん、こうなったら自分の目で全部見てみたいという思いもありましたし、これまでに全踏破した人もいなかったので自分が達成しようと。そう考える人もいなかったとは思いますが。

 当時は出版のあてがあったわけでもなく、旅費や経費も自費。大変でした(笑)。でも、楽しかった。やはり圧倒的に美しいのです。人々も素朴で親切。いいことだらけで、フランスの旅が終わってからも「この旅を続けよう」と、次にイタリア、ベルギー、そしてスペインとめぐり、これまで15年ぐらいかけて4カ国の全踏破の旅を敢行。写真集の出版にこぎつけました。今は「日本の最も美しい村」を取材しているところで、このライフワークはまだまだ続きそうです。(つづく)

――「この地球のどこかに潜む美しさを見つけ、作品として残していくことが楽しくて仕方ない」と、少年のように目を輝かせる吉村さん。次回は、ヨーロッパ各地に点在する美しい村のめぐり方、吉村さんの撮影スタイルについてお聞きします。

(写真提供・吉村和敏、構成・宮嶋尚美)

【写真家・吉村和敏さんの公式サイト】⇒https://kaz-yoshimura.com/
ページの先頭へもどる
【よしむら・かずとし】
長野県生まれ。印刷会社勤務を経て、1年間のカナダ暮らしをきっかけに写真家としてデビュー。自ら決めたテーマを長い年月を費やして取材し、作品集として発表するスタイルで、世界各国、国内各地をめぐる旅を続けながら撮影活動を行っている。主な作品集に『プリンス・エドワード島』(講談社)、『BLUE MOMENT』(小学館)、『あさ/朝』『ゆう/夕』(アリス館)、『錦鯉Nishikigoi』(丸善出版)ほか多数。2003年 カナダメディア大賞受賞、2007年 日本写真協会賞新人賞受賞、2015年 東川賞特別作家賞受賞。
新刊案内