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アンチエイジングの教科書
東海大学特任教授
石井直明
最終回 未来のアンチエイジングはどうなる?㊦

私たちの個性を形づくるもの


 約30億ある塩基の並びは人類すべて共通なのですが、ある箇所に違う塩基が入っていることがあります。これが突然変異です。
 ヒトの体を構成する設計図の役割を果たす遺伝子の領域はDNAの2パーセントほどされますが、生命に重要なかかわりがある遺伝子にこうした突然変異が入ると、遺伝子が働かなくなったり働きが弱くなったりして、遺伝性の病気になることがあります。しかし、それぞれの遺伝子はペアになっているので、突然変異によりどちらかの遺伝子に異常がおこっても、もう1つの正常な遺伝子が働いてくれることが多く、症状が出ないようになっています。

 一方、体の形をつくるなど生活に支障がない部分に突然変異がおこると、それは個性として見た目の形や色などに現れます。これらはその人固有の情報として、DNA鑑定など個人の判別などにも使われます。

石井家の家族となった2匹の兄弟犬。たった5分違いで生まれたのに見た目も性格も異なり、遺伝子の多様性を表している

 もう少し詳しく見てみましょう。
 私たちの細胞の中には、父親由来と母親由来の一対の染色体が存在します。その中にあるDNAも父親と母親で違う箇所に固有な突然変異があります。精子や卵子の元になる生殖細胞では、この一対の染色体の間でランダムな組み換えがおこり、父親由来と母親由来の混合したDNAからなる一対の染色体がつくられます。それぞれの生殖細胞の違ったところで組み換えがおきるので、多くの組み合わせが誕生します。

 精子や卵子は、こうした一対の染色体のうちどちらか1本を含み、受精することで一対の染色体になります。このように、遺伝子の突然変異の箇所により表現型に違いが現れることを「遺伝子の多様性」と呼びます。この突然変異は親から受け継がれると同時に、生後の生活の中でも生じます。それが生殖細胞内でおこれば、次の代に受け継がれることになります。組織・器官・臓器の細胞で働く遺伝子は異なりますが、すべての細胞に「その人固有」の遺伝子がすべて含まれています。

 ですから、前回の「未来のアンチエイジングはどうなる?㊤」でお話ししたように、髪の毛や唾液に含まれるDNAだけからでも、30 億の全塩基配列を調べて個人を特定し、「あなたの髪の毛1本や道端にポイッと捨てたチューイングガムについている唾液から、あなたのモンタージュ写真ができる」わけです。
 解析の技術は進み、いまでは遺伝子のどの部分に突然変異がおこっているかを簡単に知ることができるようになりました。それにかかる費用も10 万円ほどまで安価になり、誰もが自分の塩基配列の解析(ゲノム解析)に手が届く時代になってきたのです。

 技術の進歩により解析のスピードが上がったことで、私たちの容姿や性格を左右する情報や、病気から体を守る働きの強さなども遺伝子のレベルで知ることができるようになりました。
 私たちが将来にわたりかかりそうな疾病を予測して予防したり、一人ひとり異なる体質の特徴を明らかにすることで、その人に合う健康管理やアンチエイジングに役立てるなど、世界中でさまざまな応用への試行錯誤が続けられています。(おわり)

WEB連載が本になります!


本体2000円+税


 このWEB連載をもとにした新刊『アンチエイジングの教科書』が、2021年2月下旬に発売になります。アンチエイジングの専門家・石井直明教授が、健康寿命を延ばすために知っておきたい5つの理論と身につけたい7つの習慣を、ガイダンスから始まる12限の講義で順を追って解説。遺伝子やゲノムの視点で解き明かす特別講義も加え、アンチエイジングの最前線を体系的にわかりやすく学べる「教科書」です!
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【いしい・なおあき】
医学博士。1951年神奈川県生まれ。東海大学医学部教授を経て2018年より同大健康学部特任教授。専門は老化学、分子生物学、健康医科学。30年以上にわたり老化のメカニズムを研究し、世界で初めて老化と活性酸素の関係を解明。テレビや雑誌などでも幅広く活躍する。著書に『専門医がやさしく教える老化判定&アンチエイジング』『分子レベルで見る老化』『アンチエイジング読本』ほか。
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