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アンチエイジングの教科書
東海大学健康学部 特任教授
石井直明
最終回 未来のアンチエイジングはどうなる?㊤

遺伝子レベルでわかってきたこと


 あなたの髪の毛1本や道端にポイッと捨てたチューイングガムについている唾液から、あなたのモンタージュ写真ができる、と言ったら驚くでしょう。ところが、それが現実になりつつあるのです。最新の技術では、たとえば顔の形や目、鼻などを形づくる遺伝子の突然変異を調べることで、犯人のモンタージュ写真をつくることが可能となり、すでにアメリカでは未解決の事件の犯人特定に役立っています。その前提となるのが、遺伝子解析やゲノム解析といった技術です。

 第3回「アンチエイジングもゲノムの時代?」でお話ししたカセットテープのたとえを思い出してみましょう。カセット全体が細胞の核という場所にある染色体だとすると、磁気テープがDNA、テープの中の音楽が遺伝子に当たる、と説明しました。
 ちなみにゲノム(Genom )とは、遺伝子(gene )と染色体(chromosome )、もしくは遺伝子(gene )と総体(ome )を組み合わせた言葉で、ヒトならヒト、イヌならイヌというように、いわば?その生物〞たらしめるために必要な遺伝子のセットです。

 ヒトの細胞核にある染色体は46 本。23 本は父親から、23 本は母親から受け継がれたもので、それぞれの染色体は一対になっています。23 本のうちの22 本を常染色体と呼び、性染色体と呼ばれる残りの1本が男性か女性かを決めています。男性はX染色体とY染色体という異なる染色体を1本ずつ、女性はX染色体をペアで持っています。

DNAの二重らせん構造は、アメリカの分子生物学者ジェームズ・ワトソンとイギリスの科学者フランシス・クリックによって発見され、その後の分子生物学の発展につながった

 染色体に収納されているDNAは、デオキシリボース(糖)とリン酸、塩基から構成され、この1単位が連結して鎖状に伸びています。塩基はアデニン(Adenine )、チミン(Thymine )、グアニン(Guanine )、シトシン(Cytosine )の4種類で、ヒトのDNAはこの4種類の塩基が約30 億も並んだ構造をしています。
 この塩基の並び順(塩基配列)は、遺伝情報を担う「ヒトの体を構成する設計図」でヒトゲノムと呼ばれ、一般的にゲノム解析といわれるのはこの塩基配列を調べることです。

 2003年に国際的な協力でヒトゲノムの解読は完了し、当時のニュースで大きく報じられました。ですが、DNA の中でヒトの体を構成する設計図の役割を果たす遺伝子の領域は2パーセントほどとされ、その数はいまだに確定していません。18年にアメリカのジョンズ・ホプキンス大学のスティーブン・サルツバーグ教授らは、ヒトの遺伝子の数を現時点で2万1306個と発表したものの、今後の研究によって変化する可能性もあります。

 難しい話が続きますが、いよいよ最終回となる次回は一人ひとりの個性について考えてみましょう。(つづく)

イラスト・斉木恵子(シンプラス)

WEB連載が本になります!


本体2000円+税


 このWEB連載をもとにした新刊『アンチエイジングの教科書』が、2021年2月下旬に発売になります。アンチエイジングの専門家・石井直明教授が、健康寿命を延ばすために知っておきたい5つの理論と身につけたい7つの習慣を、ガイダンスから始まる12限の講義で順を追って解説。遺伝子やゲノムの視点で解き明かす特別講義も加え、アンチエイジングの最前線を体系的にわかりやすく学べる「教科書」です!
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【いしい・なおあき】
医学博士。1951年神奈川県生まれ。東海大学医学部教授を経て2018年より同大健康学部特任教授。専門は老化学、分子生物学、健康医科学。30年以上にわたり老化のメカニズムを研究し、世界で初めて老化と活性酸素の関係を解明。テレビや雑誌などでも幅広く活躍する。著書に『専門医がやさしく教える老化判定&アンチエイジング』『分子レベルで見る老化』『アンチエイジング読本』ほか。
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