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食べるしあわせ
おだんご先生のお団子講座 帝京平成大学助教(現:十文字学園女子大学講師)
芝崎本実
第1回 好きが高じて全国500店を食べ歩き
 数ある和菓子の中では決して目立つ存在ではないけれど、優しい味わいに食べると心が和むおやつ……それは、お団子。その魅力にはまり、日本各地のお団子の食べ歩きをライフワークにする“おだんご先生”こと芝崎本実先生にインタビュー。なぜそこまでお団子を深く愛せるのか? その秘密に迫ります。


――大学で和菓子の研究をする傍ら、“おだんご先生”としてお団子に関するさまざまな情報を発信している芝崎先生ですが、お団子のどんなところが魅力なのですか?

(写真:編集部)

 お団子の持ち味はなんといっても、もっちり感です。ふっくらと弾力のある食感は、米本来の優しい味をいっそう引き立ててくれます。みたらし、あんこ、胡麻、くるみ、きな粉などなど味もバラエティーに富んでいるので、いくつ食べても飽きません。そして、あの丸い形! ぽってりと丸みのあるお団子に透明感のあるみたらしダレがかかっている姿は、本当に美しい。今度、ぜひじっくり見てください! 自然光に当てると、艶やかな陶器のよう。ずっと眺めていられます(笑)。
 意匠性が高く、繊細な細工をほどこしている上生菓子は確かに見た目が華やかですが、こっちはただのお団子。でもそのシンプルな美しいシルエットから、素朴なおいしさとつくり手の愛情が伝わってくるのです。

――そんなにも奥が深い世界だとは知りませんでした。芝崎先生は日本各地のお団子の食べ歩きをライフワークにしていますね。

 20年ほど前から全国津々浦々のお団子探訪をしています。北は北海道から南は沖縄まで、これまでに訪ねた和菓子屋さんやお団子屋さんは全部で500軒にのぼります。行った店やお団子の感想を“お団子ノート”に記録。その中から面白さや風情を感じる店、地元の味をかたくなに守っている店などをウェブサイトで紹介しています。
 実は、訪れた店の包装紙も大切に保管しています。これは家族しか知らないのですが、ときどき広げては匂いを嗅ぐんです。包装紙にタレの香ばしい香りが染みついているので、その残り香からお団子や店の雰囲気の懐かしい思い出がよみがえってくる。やめられません(笑)。

――なるほど、好きな香りから記憶を呼び覚ましているのですね。想像以上のお団子愛ですが、ここまで好きになるきっかけは何だったのでしょう。

 自分でも不思議なのですが、思い当たるのは、幼いころから母や祖母に連れられて近所のお団子屋さんによく行っていたことです。ただおいしく食べるだけではなく、行った店で「どうしてこんな味なの?」という質問をするくらい、味や製法を知りたがる子どもでした。当時、地元にいろいろなお団子屋さんがあったので、子どもながら食べ比べていたのかもしれません。

――お団子への探求心は幼少期からだったのですね。しかし、いくら好きとはいえ、お団子ばかり500軒も! 正直、食べ飽きるなんてことはないのですか?

 それがないんですよ(笑)。味や形状、製法のどれ一つとして同じものがないし、郷土色の濃い食べ物なので、地域によって味わいがいろいろ。毎回新鮮な気持ちで楽しめます。例えば、関東のみたらし団子はタレがすでにかかっている状態ですが、関西ではその場で熱々のタレに付け込んで出してくれる店も。提供の仕方にも店の特色が出るので、実際に行って食べてみないとわからないことばかり。興味は尽きません。

 そんな訳で、仕事でもプライベートでもひとたび旅に出れば、本やインターネットで下調べした店をリストアップして、その周辺に宿を取って“お団子ツアー”を決行しています。効率よく回ると1日に8店舗は可能です。宮城へ家族旅行したときは、以前から気になっていた店を詰め込んで3泊4日で20店舗を達成しました。さすがにそのときは夫や子どもから大クレームでした……。

――突き進む熱意はさすがです。お店でもそのまま突撃取材! なんてこともあるのでしょうか?

 不審がられない程度にチャンスをうかがって、相手が心を開いてくれそうなタイミングでインタビューします。とはいえ、店にとって大事なコツやこだわりを気軽に教えてくれるとは限りません。そういうときは商品表示を見ながら想像の世界へ。うるち米だけでこの滑らかさはあの製法かな? とか、もち米をブレンドしているから適度な粘りがあるのかな? とか。お団子を食べるときは、あれこれと思いを巡らしながら噛みしめて味わうようにしています。(つづく)


 さっそく、超越したお団子愛を語ってくれた芝崎先生。五感をフル活用してお団子を楽しんでいる様子が印象的です。和菓子職人の経験もあり、現在は大学で管理栄養士の育成に携わりながら和菓子を研究している芝崎先生。次回はお団子の歴史についてうかがいます。

〇〇〇— おだんご先生おすすめのお団子を紹介!〇〇〇—

全国500店もの食べ歩きの中から特に印象に残ったお団子屋さんを毎回紹介してもらいます。

【志むら】
住所:東京都豊島区目白3-13-3

「焼きたてのお団子と甘辛いタレが絶妙なバランス。ふっくらとした丸みが美しくて見るたびに心が和みます」


(写真提供・芝崎本実、構成・狭間由恵)

◇日本各地のお団子屋さんを紹介したサイト「おだんご日和」はこちら→〇〇〇—
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【しばさき・もとみ】
埼玉県生まれ。管理栄養士、製菓衛生士、調理師、食育指導士、フードスペシャリスト。製菓学校在学中に和菓子の美しさに魅了され、卒業後、和菓子店の製造に従事し、四季折々の和菓子を学ぶ。その後、茶席用和菓子の注文制作、メーカーの商品開発などを手がけるほか、和菓子の講習会や親子対象の食育和菓子講習会なども開催。2022年4月から十文字学園女子大学人間生活学部食物栄養学科の教員として管理栄養士の育成に携わりながら、和菓子を研究。好きなお団子の普及活動を行っている。著書に『おだんご先生のおいしい!手づくり和菓子』<冬><秋><夏><春>(童心社)、『あんこのことがすべてわかる本』(誠文堂新光社)など。
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