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子どものこれから
大学生の食と健康を考える 女子栄養大学短期大学部学部長
岩間範子
第5回 ひとり暮らしの自炊術
 前回、前々回と2回にわたって「1日3食、4つの食品群をバランスよく食べる」ことの大切さをお話しました。そこで今回はその実践編。ひとり暮らしの大学生のための自炊のポイントをご紹介しましょう。

ひとりで全部を作らなくてもいい

 ひとり暮らしの大学生にとって最も高いハードルとなるのが、“朝ごはん”ではないでしょうか。「1分でも長く寝ていたい」なんて声が聞こえてきそうですが、工夫次第で朝ごはんを簡単・短時間で準備することは可能です。たとえばパン1枚にスライスハムとスライスチーズを乗せてオーブントースターで焼けば、歯を磨いている間に朝ごはんのメーンが出来上がり。ミニトマトなら包丁を使わなくても食べられるし、キュウリだってポキポキと手で折ってガブリとかじればいいんです。

 料理初心者は、煮たり、焼いたりといった調理から始めるよりも、まずは素材の栄養をそのままとることから始めることをお薦めします。そうすることで朝ごはんを抜くことなく、1日3食、4つの食品群をバランスよく食べることをまずは習慣づけましょう。

まとめて調理して保存する
 簡単・短時間で食事を準備するために重要なのは、同じ調理法のものをなるべくまとめて作っておくことです。たとえば、卵をゆでるときに野菜も一緒に鍋に入れる、ご飯をまとめて炊いて余った分は1食分ずつに小分けをしたうえで冷凍保存しておく……。そんなちょっとした手間をかけることで、調理時間はグッと減ります。

 電子レンジは解凍・下調理・仕上げの3役をこなせる優れ者ということも忘れずに。卵を割ってそこにミックスベジタブルを足して電子レンジでチンすれば、「香川式四群点数法」における第1群「卵・牛乳・乳製品」、第2群「魚介・肉類、豆・豆製品」、第3群「野菜・芋・果物」、第4群「穀類、油・調味料・砂糖など」のうち、第1群と第3群が1度に摂取できる――そんな合理的な視点も大切です。

【自炊のポイント】
 1.同じ調理法はまとめる…………ゆでる(卵、野菜など)
 2.まとめて調理して保存する
  ご飯
  ミートソース → オムレツ、いり卵、ポテトグラタンに
  そぼろ → 肉ジャガ、三色丼に
  煮込み料理 → ご飯を加えてリゾット、他の調味料や野菜を追加しても可
 3.電子レンジを活用する…………解凍、下調理、仕上げ

ストック野菜や冷凍食品、缶詰などを活用する

 材料が手元になければ料理は作れません。そこで、常備しておいても腐らないような食材を覚えておきましょう。意外に便利なのが缶詰のツナフレークやサンマ、イワシの味つけ缶。サラダにしてもいいし、ご飯の上に乗っけて蒲焼丼風にもできます。タマネギと一緒に卵とじにしてもいいでね。それと、乾物で便利なのがカットワカメ。お湯を沸かしてインスタントの固形コンソメスープを1個入れ、それにカットワカメを加えれば即席ワカメスープの完成です。


【常備しておくと便利な食材】
 ◇野菜類
  タマネギ、ニンジン、ジャガイモ、モヤシ
  冷凍野菜類(ミックスベジタブル、カボチャ、アスパラ、葉野菜など)
 ◇缶詰
  コーン缶詰→サラダ、いり卵、スープ(カットワカメとコーンのコンソメスープ)
  ビーンズ缶(ドライパック)→マヨネーズとあえてサラダ
  ツナフレーク→レタスなどを添えてサラダ、炒り卵に加える
  サンマやイワシの味付け缶→タマネギを加えて即席蒲焼丼や卵とじ丼
 ◇乾物類
  カットワカメ、海藻ミックス、切り干し大根、干しシイタケ
 ◇食品
  卵、納豆、厚揚げ・油揚げ(冷凍可)、牛乳、チーズ、ハム類(パック入り)、
  高野豆腐(凍り豆腐)


ひとり暮らしには経済的な視点も大事
 「これを作ったらいくらぐらいかかるのかな」「買うのと作るのとではどちらが安いかな」といった経済的な視点で献立を考えることも大切です。実家からの仕送りやアルバイトで貯めたお金があったとしても、何も考えずに使ってしまえば、結局はお金が足りなくなって100円バーガーを食べ続けることになってしまい、栄養的にも偏ってしまうなんてことにもなりかねません。

 安売りの日を選んで日持ちのする野菜や冷凍食品を買いだめしておく――いわゆる“主婦の視点”も大切にしてほしいですね。スーパーやデパ地下に閉店間際に行けば、惣菜の値下げセールをしているところがたくさんあります。そんなときに大好きな唐揚げをまとめ買いして冷凍しておいてもいいでしょう。最初から全部の料理を手作りしようと頑張るのではなく、中食や外食も上手に組み合わせることで全体の栄養バランスを保つことをお薦めします。


(構成・編集部)
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【いわま・のりこ】
1947年生まれ。女子栄養大学卒業。博士(栄養学)。管理栄養士。専門分野は栄養教育・公衆栄養。荒川区の行政と飲食店と連携した外食のヘルシーメニュー「あらかわ満点メニュー」の開発など、栄養や健康への知識と理解を深めるための活動にも積極的に携わっている。著書に『わかりやすい栄養学』(ヌーベルヒロカワ)、『食育えほん』(ポプラ社)など。
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