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子どものこれから
大学生の食と健康を考える 女子栄養大学短期大学部学部長
岩間範子
第3回 “栄養バランス”を身につけよう?
ブドウ糖は脳の大事なエネルギー源
 高校生や大学生は若くて基礎体力があるので、1日3食のうちの1食を抜いたところでちょっとおなかがすくだけ。すぐに体に悪影響を及ぼすことはないと思っている人も多いのではないでしょうか。ですが1日3食のうちの1食、とくに朝ごはんを抜いてしまうと、脳がちゃんと目覚めないままその日のスタートを切ることになってしまいます。

 それはなぜかというと、脳を働かせるために主要なエネルギー源であるブドウ糖を摂取していないからです。炭水化物や果物に含まれるブドウ糖は体の中で酸素と反応し、グリコーゲンとなって筋肉や肝臓の中で蓄えられ、脳や血液中のブドウ糖が不足すると再びブドウ糖に形を変えて栄養素として使われます。肝臓で蓄えられるグリコーゲンは、個人差はありますがおよそ50g~100gなのに対し、脳と赤血球で1日に必要なブドウ糖はおよそ140g。そのため肝臓で蓄えたグリコーゲンだけでは脳に必要なブドウ糖を摂取できず、食事の中から常に補給しなければなりません。

夜に失ったエネルギーを朝ごはんで補給する
 脳はエネルギーが足りなくなると「おなかが空いた」「ブドウ糖を補給してください」と指令を出します。それを受けて空腹感がおき、食事をとるという行為に結びつく――こうすることで私たちは脳に一定量のブドウ糖を常に補給し、思考を働かせることができるわけです。さらに、食事をするための“噛む”という行為も大事です。噛むことで脳に刺激を与え、全身の消化酵素が働いてさまざまな細胞が目覚め、「動きましょう」というスイッチが入るのです。

 脳は寝ている間も動いていてブドウ糖を消費し続けているため、夜の間に失ったエネルギーを補給する意味でも、朝ごはんは欠かさず食べたほうがいいでしょう。朝ごはんを食べないと、脳がきちんと作動してくれない可能性があるのです。

スナック菓子で小腹を満たすのは危険
 また、きちんとした食事をとらずに「ちょっと、おなかがすいたから」といって手近にあるスナック菓子などをとりあえず食べて小腹を満たすといった食生活を続けるのも問題です。

イラスト:高尾斉
 スナック菓子だけでは、たんぱく質やビタミン、ミネラル、鉄、カルシウムといった成長期に必要な栄養素をすべてまかなうことはできないばかりか、油脂や砂糖のとり過ぎを招く結果になり、気がつくと貧血や肥満になっているという危険性があります。
 さらに、体に必要な栄養が入ってこないので体力がなくなる→体力がなくなるから疲れやすい→疲れやすいからやる気が起きない→やる気が起きないから周囲の人との付き合いも面倒になって、ひきこもりがちになる……といった悪循環にも陥りがちです。

4つの食品群をバランスよく食べる
 憧れの大学に入学できたとしても、食生活の乱れから満足な学生生活を送れなかったとしたらとても残念なことです。そんなことにならないように、「1日に必要な栄養素をバランスよくしっかりとる」という意識を親子できちんと持ち、実践してほしいですね。

 栄養素とは、生物が生命活動を営むために外から取り入れる物質のことを指し、「炭水化物、たんぱく質、脂質」を3大栄養素、これにミネラルとビタミンを加えたものを5大栄養素と呼んでいます。生命活動のエネルギー源になったり、体の構成成分になったり、代謝を円滑にしたりと、それぞれの栄養素には決まった役割があります、しかし、私たちが日常の生活の中でそれらをきちんと覚え、必要な栄養量を細かく計算して摂取するのはとても難しいことです。

 そこで、女子栄養大学の創立者である香川綾博士は、4つの食品群に分けてその目安量を点数化(1点=80kcal)し、一般の人でも簡単にバランスのいい食事の献立が立てられる「香川式四群点数法」を考案しました。まずは、その基本となる4つの食品群とは何かを紹介しましょう=図1参照

 第1群の「卵・牛乳・乳製品」は日本人に不足しがちな栄養素を含み、栄養バランスを完全にする食品群。第2群の「魚介・肉類、豆・豆製品」は、肉や血を作る良質たんぱく質。そして第3群は体の調子をよくする「野菜・芋・果物」、第4群の「穀類、油・調味料・砂糖など」は力や体温となる食品群です。これらを年齢や性別、運動量などに応じてバランスよく食べていけば、1日に必要な栄養素をしっかり摂取することができます。

※次回は「“栄養バランス”を身につけよう?」と題し、「香川式四群点数法」をもう少し詳しくご説明します。

(構成・編集部)
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【いわま・のりこ】
1947年生まれ。女子栄養大学卒業。博士(栄養学)。管理栄養士。専門分野は栄養教育・公衆栄養。荒川区の行政と飲食店と連携した外食のヘルシーメニュー「あらかわ満点メニュー」の開発など、栄養や健康への知識と理解を深めるための活動にも積極的に携わっている。著書に『わかりやすい栄養学』(ヌーベルヒロカワ)、『食育えほん』(ポプラ社)など。
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