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にっぽん味噌蔵めぐり
実践料理研究家・みそ探訪家
岩木みさき
第2回 基本を学んだ、はじまりの蔵㊦(糀屋川口・神奈川県)
 川口さんは、午前3時から作業開始。1人で仕込むなら100キログラム未満という蔵人が多い中、1回に400キログラムのお米を浸漬(しんし=水に浸すこと)させ、米麹を造ります。味噌を造るときも1回に1トンの仕込みをされます。現在年間12トンの米麹と1.5トンの麦麹造り、そして味噌造りに加え、6反の畑での野菜づくりと納得するまで極めるケーキやクッキーのお菓子づくりが趣味という、アクティブすぎる人なのです。

米味噌を仕込んでいる木桶

 何度も訪問する中で、味噌や麹の基本知識のほかに、味噌造りに関連する道具についても教えてもらいました。糀屋川口の蔵内で使われている道具は、昔ながらの職人の手によるものばかりです。
 私のみそ探訪でもキーになっている木桶を使い、味噌を発酵熟成させています。木桶は100~150年使用することができ、その間ずっと菌が住み続けられるので、蔵独自の個性あるみそが完成します。糀屋川口の蔵には、パワフルな菌がいるよなぁと感じます。

 ほかにも、大豆や米を蒸すボイラー蒸し器はサワラ製(ヒノキだと香りが“豊か”すぎるそう)で、底に敷かれている竹網は特注。念願だったという和釜は木製、原料を運ぶ穀箕(こくみ)や腰持ちといった細い竹で編んだカゴのようなもの、たわしに至るまで、造り手に会いに現地まで行き、自分で選ぶそうです。
 「やっぱりすごく使いやすいんだよね。ずっと使い続けたいからさ」と、周りにも宣伝し、伝統ある職人の技を未来に伝承したいという思いが強く伝わってきます。また、麹を醸す際に使う竹製のエビラは縦105cm×横75cm、手づくりの竹棚に並べ25年前から使用しているそうですが、麹造りの道具として、この素材や大きさは独特で、ほかの蔵では見たことがありません。

サワラ製のボイラー蒸し器

原料を運ぶ穀箕(こくみ)

麹を蒸すエビラは独特の形


 みそ探訪初期から、1年に1度味噌蔵の皆さんと集まり蔵探訪する「ガチみそ蔵の会」を開催しているのですが、3回目の2019年に糀屋川口に集まったときには、こだわって選んだ道具と職人の情報量の多さに、ほかの蔵人からついた愛称は「道具屋川口」でした。

 数々の蔵を巡る中でさらに麹の重要性を知り、最初の訪問から2年後には、泊まり込みで麹造りを学ぶ貴重な体験をさせてもらいました。今でもいろいろなことを教えてもらう、初心を思い出す「はじまりの蔵」です。そして、初めて仕込んだ自家製味噌は、今でも常温に置いていて、みそ探訪の歴史とともに変化する熟成具合を、毎年味見しながら楽しんでいます。(つづく)

◆岩木さんセレクトのイチオシ味噌とおススメレシピ◆


糀屋川口
 

「米糀みそ」


【種類】米みそ
【味】麹歩合13歩・塩分10%・中辛
【色】1年熟成・赤色
1年熟成ながら深い味わい、出汁がなくても美味しいお味噌汁が作れてしまうのが特徴。
生姜などの香りの強い香味野菜との相性が良い。

おススメレシピ

「豚肉の生姜焼き」


【材料】(2人分)
なたね油小さじ1
玉ねぎ1/2個
豚肩ロース薄切り肉6枚(200g)
a おろし生姜大さじ1、酒大さじ1
b 味噌大さじ1と1/2、酒大さじ1と1/2、みりん大さじ1と1/2、片栗粉小さじ1/4
(付け合わせ)
千切りキャベツ、トマトお好みで
【作り方】
1.玉ねぎは5mm幅に切る、豚肩ロース薄切り肉にaで下味を付け5分置く、bはボウルに混ぜておく
2.フライパンになたね油をひき、玉ねぎがしんなりするまで中火で2~3分炒めたら端に寄せ、下味を付けた豚肉を並べ中火で1分、ひっくり返して1分焼く
3. 肉に火が通ったらbを加え、全体を混ぜタレを絡ませる

(写真提供:岩木みさき)

★岩木みさきさんが味噌との出会いや奥深い魅力について語るインタビュー「今こそ伝えたい、味噌の力」もぜひお読みください。

【実践料理研究家・岩木みさきのみそ探訪記】http://misotan.jp
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【いわき・みさき】
1988年神奈川県生まれ。10代のころに摂食障害や肌荒れに悩んだ経験から、食の大切さを実感して料理の道へ。病院栄養士として3年間勤務したのち、2012年に実践料理家として独立。その後、日本の伝統調味料である味噌に魅せられ、4年で日本各地60カ所以上の味噌蔵探訪を続け、その成果をWEBサイトやレシピ、イベントなどを通じて発信している。
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