現在は、都内各所でフラを教えている有島加花さん。グループレッスン、プライベートレッスンを合わせて、定期的にレッスンを受けている生徒さんは50人をこえるそうです。今、フラを通じて伝えたいこととは?――有島さんのハラウにはどんなクラスがあるのですか? 幼児から小学生までのケイキクラスでは、体の柔軟性の向上を目指す基礎トレーニングからスタートし、ハワイの文化、歴史などの話もわかりやすく伝えつつ、自然や家族を大切にできる人間形成を目指しています。
大人のクラスは、より深い理解、表現力を目指すダンサーズクラスから、日ごろの運動不足を解消したい方まで、少人数制でお一人お一人に合ったレッスンを心がけています。
「お悩み解決プライベートレッスン」も好評をいただいています。バレエで培ったノウハウなども含めて、そもそもの立ち方から、体のくせ、軸、動かし方、そして効果的なストレッチやトレーニング方法もお伝えしています。「フラを通じて皆さまをちょっとハッピーに」がモットーです。
――フラを通して身につくことは? フラは体全体で曲の意味を表現する踊りです。たとえば、「私のお家はラハイナという丘から海まである地域にあります。花が咲き乱れ、いい香りが漂い、そんな私のお家が皆、大好きです」という歌詞があったら、語順どおりにすべてボディランゲージで表現するんです。ですから、ハンドモーションは手話に近いイメージかもしれませんね。
とはいうものの、一本一本指の先まで神経をいきわたらせ、思いどおりに、しなやかに動かすのはひと苦労です。普段、デスクワークが中心の方だと、どうしてもPCに向かう姿勢のまま長時間動かないため、内側に丸まった指や手首はコントロールが難しく、フラを踊るときもぎこちなくなりがちです。
そこで、ストレッチしながら体をほぐしていき、さまざまなものを表現するところから始めていきます。例えば「波」を表現するとなると、指先と手首だけ「波」であっても、ひじや肩といったいわば体全体に加え、頭の中でも「波」をイメージしないと伝わりません。ゆったりした動きに見えても、実際は頭も使うし、所作も美しくなります。
さらにハワイでは、腹部に神秘的な力「マナ」が宿るとされていて、ここを意識しながら踊ることでブレのないフラにもつながります。普段、意識しないところに気持ちを向けることで体幹が鍛えられ、体の動きが変わり、あの優雅で美しい表現力が備わります。フラの動きを通じて、正しい立ち方や歩き方、美しいボディラインが身についていくのです。もちろん、永遠の楽園、ハワイへと心誘われ、身も心もリフレッシュできますよ。
――最後に、有島さんがフラの講師として最も大切にしていることはなんでしょう?
フラは踊るだけではなく、自然の恵みをたたえ、命のつながりを大切に思うハワイアンスピリットを知ることが大切だと思っています。特にキッズクラスでは、「自然に対しても、人に対しても優しい心を持とう」「みんなで仲よく団結しよう」「楽しくハッピーに考えよう」……と続くAloha Chant(アロハ・チャント、Chant=唱和)をわかりやすく説明し、毎回ハワイ語で全員で唱えてからレッスンを始めます。まるで、日本の家訓のようですよね。
地域の夏祭りはケイキクラスのダンスからスタート
フラを学べば学ぶほど、日本との共通点が多く見つかります。自然を愛する心はもちろん、日本の海の神、山の神と同様、ハワイにもそれぞれの山に神さまがいたりします。噴火ばかりが報道されたキラウェア火山も、火の神ペレが住んでいて、ペレが行きたい方向に溶岩が流れているだけのこと。自然を尊ぶ文化は同じですね。
そこには、150年前から移民としてハワイに渡った私たちの先祖の想いも重なるのかもしれません。
――フラと出合い、海をこえてハワイの心に触れながら、子どものころの夢をかなえた有島さん。その笑顔と緩やかでしなやかな体の動きを見ていると、まるでハワイの風が吹きわたってくるようで、多くの人がフラに魅了される理由がわかる気がします。
日本人の心と融け合い、人生がより豊かになるフラ、そして自然を愛し感謝するアロハの心。有島さんの思いが、フラを習う子どもたちや多くの生徒たちを通して静かに広がっていくのが楽しみです。
(構成・宮嶋尚美)
有島加花さんのホームページ
【Hula is my culture~私がフラを通して本当に伝えたいこと~】
https://kahanahula.wordpress.com/