日本の女性の間でも人気が高いハワイの民族舞踊、フラ。手の動きや言葉に込められたハワイのものの考え方など、さまざまな視点から魅了される人が多いようです。現在、日本のフラダンサー人口は、なんと推定180万人! それにしても、こんなに多くの人がハマってしまう理由ってなんでしょう? オアフ島のクムフラ(フラマスター・師匠)、ダルシー・モニーズさんのもとでフラを学び、日本人として初めてハラウ(フラスタジオ)を開校する許可を得て東京を拠点に活動している有島加花さんに、フラを愛する理由を3回にわたって教えていただきます。――有島さんは幼少よりモダンバレエを始め、クラシックバレエ、ジャズダンスなどを習得されたそうですが、フラと出合い、今日に至ったきっかけは何だったのでしょう? 金融機関に勤めていたころ、行きつけの喫茶店のライブでフラの先生が踊られていました。それが私が初めて見たフラダンス。自然なほほ笑みを絶やさず、音楽に合わせた一つひとつの動作がとてもきれいで、見ている私たちも幸せな気分に浸っていました。よく見るとゆったりとしたステップと手の動き(ハンドモーション)が中心で、技術的に難しい印象はありません。そのとき、「これなら、私も先生になれるかも!」と思ったんです(笑)。
というのも、小学生の卒業文集に書いた夢は「バレエの先生」。ですが、中学、高校と受験勉強でレッスンも休まざるを得ず、先生になるのは難しい。でも、踊るのは大好き!! そんな私に、フラは一筋の光をくれたのです。
――「フラの先生になる」というあらたな目標に向かって動き出したんですね。それからすぐにハワイへ行かれたのですか? 会社勤めを続けながら、まず日本のハラウでフラとタヒチアンダンスを学び始めました。厳しくも愛にあふれた先生とすてきな仲間たちに恵まれ、部活動のように打ち込みました。4年後には日本人選抜ダンサーとして選出され、ハワイから招へいされたダンサーとともに全国ツアーに参加させていただくなど、年間数十回のステージに出演するように。フラコンペティションで仲間とともに優勝したこともあります。もともとバレエなどの基礎がありましたから、吸収は早かったのかもしれません。
ただ、それだけたくさんのステージをこなすには、常時、数十曲のステップやハンドモーションを覚えておく必要があります。手の動きでは「花」「太陽」「波」「風」などその曲の歌詞そのものを表すのですが、歌詞の意味がざっとわかる程度では対応できません。そこで、その曲の背景や歌詞の意味も自分でさらに学ぶことにしました。日本語の信頼できる文献や情報も少なく苦労しましたが、知れば知るほどより深く曲も踊れるようになり、自己表現の手段としてフラの魅力にどんどんハマっていきました。
―― 意味を理解して踊ることで、ハワイの大自然も感じられそうですね。
大好きな自然の中で(写真提供:有島加花)
はい。ハワイアンソングで歌われるハワイの自然観は、自然が大好きな私にとって、大きな魅力の一つです。例えば、雨が降ると「いやだな」「面倒くさいな」と思う人も多いかもしれまえん。でも、フラの世界では「雨や霧は草木を潤わせ、草花の香りを立ち上がらせ、キラキラ光らせてくれる天からの恵み」と捉えるのです。
例えば、「オフ」というハワイ語は、「霧や山にかかる薄い雲」などを表す言葉ですが、霧に潤わされて、より美しくなった花々でつくられた「レイで飾られる」という意味にもなるのです。宝石で飾られるようなイメージでしょうか。
そういう歌詞に触れるたび、幼いころ、祖母から「お外を見てごらん、雨が降っているから葉っぱやお花がキラキラしてとってもきれいね」と言われ、その美しさに気づかされたことを思い出します。
ただ振りを覚えて踊るだけでなく、自分の周りの小さな自然も愛し、感謝する。その大切さをフラを通して伝えていきたいと思っています。皆さんも、雨の日、街路樹のそばで深呼吸してみてください。すごくいい匂いがしますから。
―― フラとは、単なる伝統的な美しい踊りではなく、自然を愛する心を育むものなのだということがわかってきました。次回は、有島さんとハワイのクムフラ(フラの師匠)との出会いについて教えてもらいます。(構成・宮嶋尚美)
有島加花さんのホームページ
【Hula is my culture~私がフラを通して本当に伝えたいこと~】
https://kahanahula.wordpress.com/