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子どものこれから
「自分から動ける子」にする親の傾聴力 日本精神療法学会理事長
松本文男
第4回 子どものやる気を引き出す7つの原則
 忙しいとついつい子どもへの受け答えがおろそかになるお父さん、お母さんに、ビジネスシーンで活用される“傾聴”の、子育てへの生かし方をお伝えする連載の第4回。今回は、子どもがしっかり受け止めてもらえたと感じられる、心を開く言葉を7つの原則を紹介します。
※本文の最後にプレゼントのお知らせがあります。


「心を込めて聴いている」という合図を出す
 今回はさらに具体的に、子どものやる気を引き出すための親の聴き方、受け止め方をお伝えしていきましょう。
 子どもの話に限らず、本来、傾聴はテクニックではないと私は考えています。相手の話を心を込めてお聴きする、その姿勢が最も大切であり、究極的にはそれに尽きると思うからです。
 とはいえ、これまであまり意識せずに子どもの話を聞き流していた場合、ちょっとした心構え、ノウハウを知っておくことで、その姿勢を表しやすくなるのも事実。そこでぜひ、次の7項を原則として心に留めておきましょう。

(1) ネガティブな感情には「そのあなたを認めている」というサインを出す
 「本来のあなたを認め、受け止めているよ」と子どもに伝えるのが傾聴のいちばんの目的ですが、なかなか伝わりにくいこともあります。特に不安や悲しみなどのネガティブな感情を表現したとき、慰めたり励まそうとして「大丈夫だよ」「何とかなるよ」などと安易に声をかけると、「ネガティブな感情を持つ自分を打ち消されている」という気分になることもしばしばあります。
 ネガティブなときこそ、その気持ちを言葉にしてしっかり返してあげましょう。「泣きたいほど不安なんだね」「悲しみでいっぱいなんだね」などと言葉にするのが、いちばんのサインとなります。

(2) その子がありのままの状態のとき、好意を示す
 よく、「いいことをしたときに褒めて認めましょう」といいますが、ここではその反対をお勧めします。子どもがリビングでのんびりしている、楽しそうに何かをしている、そんな本来の姿のときこそ、好意を示すタイミングです。「きょうはゆっくりできていいね」「何だか面白そうなアニメね」などと、それを認める言葉をかけ、返ってくる言葉を待ちましょう。それが「うん」「そうだね」だけでも、子どもの心は満たされています。

(3) 自然に出てきた行動を一緒にやってみる
 ?をさらに進めて、親もその行動をともにしてみます。テレビを見ていたら横に腰をおろして一緒に見てみるとか、ゲームに興じていたら「面白そうだから、やってみたい」と言って、教えてもらうのもいいでしょう。人は自分の興味のある世界に同調してもらえると、「理解してもらえた」と実感します。子どもももちろん同じです。

(4) 先回りせずに自発的な言葉を待つ
 「おやつ食べる?」「宿題やった?」「今日は塾行くんでしょう?」などと、親の気になることを先回りして尋ねてはいませんか? それがきっかけで始まる会話は、親の思いどおりに動かそうとする指示と似ています。子どもは「親がそれを望んでいる」とすぐに察するため、うなずくしかありません。子どもにも、その子なりのペースがあります。それを優先してあげましょう。「おなかすいたよ」「今日は塾あるんだ」など、自分から言葉にするのを待ち、言われた言葉に応じればいいのです。

(5) 失敗したときこそ、寄り添い受け止める

 
 子どもがミスをしたときこそ、気持ちに寄り添う受け止めが重要です。「ダメだったね」「だから○○だって注意したじゃない」などのマイナスな言葉かけをすると「自分で考えるとダメな結果になる」という思考パターンとなります。直接的な評価ではなく、子どもの悔しい気持ち、残念に思っている気持ちに寄り添い、それを言葉にして返しましょう。
 「こんなのできない!」と悔しそうにつぶやいたなら、「できないのが歯がゆいのね」「できるはずだって思うから、悔しい気持ちなんだね」。
「ダメだった」とうなだれていたなら、「頑張ったからへこんじゃったかな」「どうしたらいいんだろうって、悩んじゃうよね」。
 そんなふうにそっと隣に肩を寄せるような受け止め方こそ、親の役割だといえるでしょう。

(6) 子どもの「やったつもり」をつぶさない
 いつもより少しだけ勉強時間が長いとか、お手伝いをちょっとしてくれたとか、本人は「いいことをしたつもり」のささいな行動が見られることがあります。そういうとき、「それじゃやったうちに入らない」「もっとちゃんとやってくれるといいんだけど」などと否定せずに、「あら、いい調子ね」「助かったわ」など、しっかりすくい上げる言葉をかけましょう。それで“やる気スイッチ”が押されることはよくあります。

(7) 欠点・弱点をあえて指摘しない
 子どもの欠点や弱点が心配なあまり、そこをあえて言葉にしてしまう人もいます。「体育のある日はユーウツだな」と言うと、「苦手なのね、できないのが心配なのね」など、それを強調してしまうのです。けれど、こうした指摘はレッテル貼りとなり、その子の中に定着します。「そうか、私は体育が苦手なんだ」と思い込んでしまうのです。
 また、親がどんどんその子の欠点を増やしている場合もあります。優しい子に「あなたは気が弱い」とか、少し成績が下がった科目があると「やっぱりこれが苦手なんだよ」などと決めつけ、子どもに「そうかな」と思わせてしまうのです。
 子どものそうしたネガティブな思い込みは、自己評価を低くしやる気を削いでしまうものです。欠点や弱点はあえて指摘しない受け答えを心がけましょう。

これら7原則を忘れずにいると、子どもはすんなりと心を開き、やる気のもとであるメンタルエナジーも充足しやすくなります。


(構成・株式会社トリア 小林麻子)

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【まつもと・ふみお】
長野県佐久市出身。1947年京都大学理学部卒業。1953年東京大学大学院医学部博士課程修了。シカゴ大学大学院博士課程修了。1983年より長野大学教授、郵政省専任カウンセラーを20年間務める。C.R.ロジャーズに師事し、クライエントを中心に据えたカウンセリングが信条。医療機関や教育機関と連携した活動も多い。現在、NPO法人日本精神療法学会理事長、国際精神療法学会理事(東アジア担当)、日本傾聴療法士会会長。主な著書に『悩む十代心の病』『こんな時どうする』(東京法令出版)、『心の診察室』『心の談話室』(近代文藝社)ほか多数。近著『子どものやる気を引き出す「聴き方」のルール』(大和書房刊/1300円)で、親子の傾聴レッスンを展開。
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