× close

お問い合せ

かもめの本棚に関するお問い合せは、下記メールアドレスで受けつけております。
kamome@tokaiedu.co.jp

かもめの本棚 online
トップページ かもめの本棚とは コンテンツ一覧 イベント・キャンペーン 新刊・既刊案内 お問い合せ
美しいくらし
南仏とロゼワインのすてきな関係 ラ・メゾン・ド・ラ・ピコル 代表
山本ひとみ
第1回 人生を豊かに彩るバラ色の一杯
 地中海に面したコバルトブルーの空と海、穏やかに流れる時間、人生を豊かに楽しむ人々……そんな南フランスを象徴するのが、サーモンピンクに輝く辛口のロゼワインです。その魅力は、おいしくて肩肘張らずに楽しめるところ。このカジュアルなロゼに着目し、4年前から日本への輸入販売を始めたのが、南仏・カンヌの姉妹都市である静岡市在住の山本ひとみさんです。南仏のロゼワインに魅せられたきっかけを教えてもらいながら、日本ではまだまだ知られていないその魅力を3回にわたってひも解いていきます。

写真提供:ラ・メゾン・ド・ラ・ピコル

姉妹都市カンヌで出会った友


―― 赤ワインや白ワインに比べて、日本ではロゼワインの知名度はそれほど高くはないと思います。山本さんはどのようなきっかけで、南フランスのロゼに出合ったのですか?

 最初から南フランスと特別な縁があったわけではありません。大学に入学後、第二外国語で選択したフランス語をもっと学びたいと思い、在学中に2年間休学してフランスに語学留学したのがすべての出発点です。とはいえ留学先が南仏だったわけでもなく、旅行で訪れたことがある程度。でも、語学を通じてフランスが大好きになり、フランスで学んだことを生かせる仕事に就きたいと考えるようになったのです。

 そこで大学卒業後は東京の商社に就職、本場で学んだフランス語を生かして働きました。その後、結婚を機に静岡市に住むことになったのですが、フランスとの縁を切らしたくなくて、フランス好きな皆さんとフランスに関する情報を共有し発信するフリーペーパー『エクラタン』を、一人でゼロから作り上げました。エクラタン(éclatant)とは、「輝いている、色鮮やかな」という意味のフランス語。コロナ禍の影響もあって現在は休止中ですが、2002年から17年間にわたって発行し続けてきました。
 さらに2010年には静岡日仏協会と共同でフランス語学校「エスパス・エクラタン」を開校し、フランスの文化を静岡に伝える活動を始めました。その活動の中で、静岡日仏協会の会員さんやフランス語学校の生徒さんを引率してカンヌを中心とした南フランスを訪問するようになり、やがて市民交流イベントやフランス語の短期留学を企画するようになっていったのです。

―― カンヌといえば、国際映画祭で世界から映画スターが華々しく集まる高級リゾート地のイメージです。行き先はなぜカンヌだったのですか?

写真提供:山本ひとみ

 実は、私が住んでいる静岡市とカンヌは1991年から姉妹都市提携を結んでいて、市民レベルでの交流も盛んです。毎年5月のカンヌ映画祭に合わせて、静岡市では2010年から映画の野外上映会やマルシェをメインとしたイベント「シズオカ×カンヌウィーク」(通称シズカン)も開催しているんですよ。

 その流れで私もカンヌに行ったのですが、実際に訪れてみると、カンヌ日仏協会の皆さんがとても手厚くもてなしてくれて、感激しました。歓迎パーティーを開いてくれたり、観光のサポートをしてくれたりと、それはよくしてくれたのです。一緒に行った静岡日仏協会の会員さんやフランス語学校の生徒さんもとても喜んでくれて。そうなるとまた行きたくなるじゃないですか(笑)。「来年もぜひ会いましょう!」と毎年のように訪れるうちに、少しずつ現地の友人が増えていきました。こうして、私にとってカンヌはいつしか「フランスに行ったら必ず立ち寄ってみんなに会う場所」になっていったのです。

日本でも現地の風を感じていたい


―― そこからロゼワインを輸入するまでには、どのような物語があったのでしょう。

 あるときから、「日本に帰ってからもカンヌと交流できるキーアイテムはないか?」と考えるようになりました。「行ってよかった」「楽しかった」で終わるのではなく、日本にカンヌをはじめとする南フランスを感じるアイテムを持ち帰って紹介することで、自分の体験を多くの人と共有したいと思うようになったのです。南仏といえばせっけんやオリーブオイル、ラベンダーなどが有名ですが、「南仏で出会った人たちにもっと身近なものって何だろう……」とカンヌ郊外のカフェテラスでランチを食べながら考えていたとき、「そうだ、これだ!」とひらめいたのが、まさにそのとき自分が手にしていたロゼワインでした。

 私たちの歓迎会には必ず地元産のおいしいロゼがあり、友人宅に行けば彼らが好きなロゼで私たちをもてなしてくれる。フランス語で「convivialité(コンビビアリテ=うちとけた雰囲気、気さくさ)」という言葉が私はとても好きなのですが、みんなとの楽しい集いの場にはいつもロゼがありました。昼間の太陽の下で、ビーチで、カフェで、特別な場所に限らず、どこにいても南仏の人々の暮らしに欠かせないのがロゼワインだったのです。そのバラ色の一杯が、大都会パリにはない人懐っこさ、開放的な明るさといった南仏の彼らの人柄に彩りを添えているのです。

 日本ではロゼ=甘口の印象ですが、現地で親しまれているロゼはフレッシュで辛口、あと味もすっきりしているのが特徴です。それで、日本にはなじみの薄い辛口のロゼワインを南仏から輸入しようと心に決めました。

―― そうは言っても、未経験者がいきなり輸入できるものなのですか?

 商社勤めの経験はありますが、自分で輸入するとなると話はまた別です。最初は何もわからず、インターネットで調べたり、経験者にアドバイスをもらったり、商工会議所に相談したりしながら少しずつ手順を理解していきました。まずはワインを輸入するための会社を立ち上げて酒販免許を取得。ワイナリーから港まで運んでくれるフランスの輸送会社も見つけました。あとは飲み口爽快なロゼワインを探しに南仏へ飛ぶだけです。

 会社の屋号は「ラ・メゾン・ド・ラ・ピコル( LA MAISON DE LA PICOLE)」としました。カンヌの友人から「ひとみってPicoleuse(ピコルーズ/日本語で「呑兵衛」)だよね」と言われてピンときたのです。意味とは真逆で音の響きがかわいくて軽やか! 遊び心もあります。
 この名刺を見せるとフランス人にクスッと笑われることもありますが、私はとても気に入っています(笑)。

  南フランス・カンヌとの交流を通じて、現地で親しまれているロゼワインを輸入しようと決めた山本さん。次回は、南仏ロゼ買い付けの旅の様子を語ってもらいます。(つづく)

(構成:宮嶋尚美)

【ラ・メゾン・ド・ラ・ピコル】
https://picole.thebase.in/

2024年3月16日 開催!
ーフランス本関連イベントー

【ロゼワインと巡るフランスの小さな旅~2024年春~】


ロゼワインとフランスをテーマにしたブックイベントを、2024年3月16日(土)に開催します。「かもめの本棚」の人気書籍「フランスの村シリーズ」(東海教育研究所)に綴られたフランスの風土や文化を、その土地に育まれたロゼワインの味わいを通じて体験できる催し。ナビゲーターは、おいしいワインを求めて南仏を何度も訪れている「ラ・メゾン・ド・ラ・ピコル」代表の山本ひとみさんです。南フランスの春風を感じる特別なひとときを、桜色のロゼワインとともにお楽しみください。

★イベントの詳細・申し込みはこちら

⇒⇒



【開催日時】2024年3月16日(土)


 ①第1部:11:00~13:00
 ②第2部:14:00~16:00 
 第1部と第2部の完全入れ替え制で開催 ※各回2時間
【会場】渋谷のおうちギャラリー&キッチンスタジオ
 東京都渋谷区渋谷3丁目12-25
 https://capeanne-shibuya.com/

【募集人数】1回12人(1回の最少催行人数8人)
ページの先頭へもどる
【やまもと・ひとみ】
静岡県生まれ。1995年、静岡県立大学国際関係学部に入学。在学中に休学して渡仏。ロワール地方の田舎町やパリ、リヨン大学が運営する外国人向けフランス語コースで約2年間フランス語を学ぶ。大学卒業後は東京の食品輸入商社勤務を経て静岡市に移住。2002年、フランスの暮らしや文化を紹介するフリーペーパー『エクラタン』を創刊。2010年にフランス語スクールと文化の総合スペース「エスパス・エクラタン」を開設。2019年、南仏ロゼワインの輸入販売を手がける「ラ・メゾン・ド・ラ・ピコル」を設立。「フランス」をキーワードに多彩な活動を展開中。
新刊案内