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美しいくらし
南仏とロゼワインのすてきな関係 ラ・メゾン・ド・ラ・ピコル 代表
山本ひとみ
第2回 現地の人々との友情の味
 南フランスのロゼワインを輸入するための準備が整い、いよいよ買い付けの旅を始めた山本ひとみさん。とはいえ当時、ワインの専門知識はゼロ。「南仏と南仏のロゼが好き」という気持ちだけで動き始めた山本さんのチャレンジを後押ししてくれたのは、現地の友人たちだったそうです。旧交を温めながら「好きな銘柄は?」「おすすめのロゼワインは?」と質問し、教えてもらったたくさんのワイナリーを自分の足で一軒一軒訪れて試飲を重ね、じっくり選んだ4種類のワイン。山本さんはそれを「友情のワイン」と呼びます。

友人夫妻の導きで出合った極上のロゼ


―― 南フランスと言っても、カンヌだけでなく、同じビーチリゾートで有名なニースを含む地中海沿岸のコート・ダジュール、マルセイユやアルルといった町がある内陸部のプロヴァンス地方など、気候や景観もさまざまで、広範囲にわたってワイナリーが点在していると聞きます。どのように買い付けをしたのですか?

シルヴィ&ジャン=リュック夫妻(当時)

 まずはどんなワイナリーがあるのかインターネットで情報を集め、日本に入っていないロゼワインをピックアップしたのち、カンヌで交流のあるフランス人や日本人の友人たちからおすすめを聞いてリストを作り、日本から連絡を取って現地入りしました。
 特にお世話になったのは、カンヌ在住のシルヴィ&ジャン=リュック夫妻(当時)です。ジャン=リュックはロゼしか飲まない超愛好家。「ロゼのワイナリーを巡りたい」と話すと、彼らの家に宿泊させてくれ、いちばんお気に入りのロゼで迎えてくれました。「アヴァンチュール ロゼ」という名の薄いサーモンピンク色をしたそのロゼは、きりっと辛口のテイストの中に、フルーツやキャンディーのような複雑な香り。まろやかで長い余韻があり、ひと口飲んだ瞬間、「おいしい! これだ!」と思いました。そして翌日、このワインを造っている「シャトー・アストロス」にシルヴィが自らの運転で案内してくれたのです。

南仏カンヌの近く、ヴァール県にある「シャトー・アストロス」

―― それはリストにないワイナリーだったのですね。行ってみていかがでしたか?

 シャトー・アストロスはカンヌから近く、プロヴァンスの中でもとりわけ「ロゼの国」と呼ばれるヴァール県にありました。数代にわたって200年以上ロゼワインを造り続けてきた老舗ワイナリーです。広大な敷地の中には、1300年代の古いシャトー、澄んだ水が流れる水路、小さな礼拝堂、かつて人々の病気を治してきた奇跡の泉などがブドウ畑と調和しつつ残っていて、息をのむほど美しい景色が広がっていました。もちろんその場で交渉を開始。カンヌ在住のシルヴィが同行してくれたことで話し合いもスムーズに進み、輸入第1号が決定。幸先のよいスタートを切ることができました。

ネーミングにもひと工夫を


―― 輸入販売しているロゼワインは正式名称のほかに「山のロゼ」「海のロゼ」「森のロゼ」など、私たち日本人にもイメージしやすいネーミングが付けられていますね。難しい名前だと覚えられませんが、これだとイメージしやすくてすぐに覚えられそうです。

香り豊かなボディとピュアな味わいの「アヴァンチュール ロゼ」

 実際に飲んでみて、気に入ればリピートするときにも選びやすいし、誰かにプレゼントするときも「物語性があって説明しやすい」と、うれしい評判をもらっています。最初に名づけた「泉のロゼ」のほかに、「海のロゼ」「山のロゼ」「森のロゼ」という4種類のワインをそろえて、2019年に輸入販売を始めました。それぞれにたくさんのエピソードがありますが、中でも特に思い出に残っているのが、カンヌの隣町グラースで日本語学校を主宰しているパスカルが紹介してくれたロゼワインです。
 パスカルとは、日本語を勉強する彼の生徒さんたちと、フランス語を勉強する私の生徒さんたちの交流の場を設けるなど、語学を通じて長い付き合いをしてきました。そんな彼がおすすめしてくれたワイナリー「シャトー・ラ・ヴェルリー」はプロヴァンスの北部、「フランスの最も美しい村」が点在するリュベロン地方にあります。デュランス川が悠々と流れ、北にはリュベロン山脈が東西に横たわる、壮大な自然の中に佇むエレガントなシャトーです。

繊細さと奥深さを兼ね備えた上質でエレガントな「シャトー ビオ ヴァン ロゼ」

 このシャトーで試飲させてもらったのが、「シャトー ビオ ヴァン ロゼ」です。少し口に含んだだけで、自由で素朴な喜びに包まれました。この美しい場所にあまりにもぴったりな自然の雄大さを感じる味わいだったのです。そして、バラの花びらのような美しい輝き、野イチゴやライチの優美な香りの中にときおり感じるマシュマロのような楽しい感覚、ふくよかなテクスチャーの後にやってくるフレッシュな風味。これがまた、繊細な日本料理ともよく合うのです。日本の文化や歴史をこよなく愛する日本通のパスカルのセレクトに間違いはありませんでした。

 ほかの2つ(「海のロゼ」「森のロゼ」)もすべて友人たちによって導かれ、日本と未取引だったワイナリーともつながって、日本の皆さんにこれらのロゼワインを初めてお届けすることができました。だからこそ、私はこれらのワインを「友情のワイン」だと思っています。

 南仏で出会った友人たちがつないでくれた「友情のワイン」。これをキーアイテムとして、「今後は静岡をロゼワインのまちにしたい」と目を輝かせる山本さん。次回(最終回)は、一年を通して楽しめるロゼワインにぴったりのシーンや料理について教えてもらいます。(つづく)

(構成:宮嶋尚美、写真提供:ラ・メゾン・ド・ラ・ピコル)

【ラ・メゾン・ド・ラ・ピコル】
https://picole.thebase.in/

2024年3月16日 開催!
ーフランス本関連イベントー

【ロゼワインと巡るフランスの小さな旅~2024年春~】


ロゼワインとフランスをテーマにしたブックイベントを、2024年3月16日(土)に開催します。「かもめの本棚」の人気書籍「フランスの村シリーズ」(東海教育研究所)に綴られたフランスの風土や文化を、その土地に育まれたロゼワインの味わいを通じて体験できる催し。ナビゲーターは、おいしいワインを求めて南仏を何度も訪れている「ラ・メゾン・ド・ラ・ピコル」代表の山本ひとみさんです。南フランスの春風を感じる特別なひとときを、桜色のロゼワインとともにお楽しみください。

★イベントの詳細・申し込みはこちら

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【開催日時】2024年3月16日(土)


 ①第1部:11:00~13:00
 ②第2部:14:00~16:00 
 第1部と第2部の完全入れ替え制で開催 ※各回2時間
【会場】渋谷のおうちギャラリー&キッチンスタジオ
 東京都渋谷区渋谷3丁目12-25
 https://capeanne-shibuya.com/

【募集人数】1回12人(1回の最少催行人数8人)
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【やまもと・ひとみ】
静岡県生まれ。1995年、静岡県立大学国際関係学部に入学。在学中に休学して渡仏。ロワール地方の田舎町やパリ、リヨン大学が運営する外国人向けフランス語コースで約2年間フランス語を学ぶ。大学卒業後は東京の食品輸入商社勤務を経て静岡市に移住。2002年、フランスの暮らしや文化を紹介するフリーペーパー『エクラタン』を創刊。2010年にフランス語スクールと文化の総合スペース「エスパス・エクラタン」を開設。2019年、南仏ロゼワインの輸入販売を手がける「ラ・メゾン・ド・ラ・ピコル」を設立。「フランス」をキーワードに多彩な活動を展開中。
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