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美しいくらし
記念対談「イタリアの最も美しい村」会長に聞く
中山久美子×フィオレッロ・プリミ
第1回 厳しい審査は美しさの証し
 『イタリアの美しい村を歩く』の発売を記念して、著者の中山久美子さんがローマにある「イタリアの最も美しい村」協会を訪問し、フィオレッロ・プリミ会長と対談。協会に加盟するための厳しい選定基準や多様な文化に彩られる村々について語り合いました。北から南までイタリア全土に340近くも点在する「最も美しい村」は、その多くが交通の便がよくない場所にあり、誰もが知るような有名な観光都市ほどの知名度もありません。それでも「ぜひ訪れてほしい」と2人が語る、村の真の魅力とは? 全4回わたってお届けします。

プリミ会長(左)と中山さん


中山 「最も美しい村」協会は小さな村に残る文化や景観、歴史遺産の保護や価値向上などを目的に1982 年にフランスで設立された後、ベルギーやイタリア、日本、スペインでも同様の活動が広がっています。イタリアの場合はどのようにして協会が発足したのでしょうか?

プリミ会長 「イタリアの最も美しい村」協会の設立は今から約20年前、2001年です。イタリアのほぼすべての市が参加するイタリア自治体協会の中に観光評議会があったのですが、当時私はウンブリア州のカスティリオーネ・デル・ラーゴの市長としてそこに参加し、小さな市の部門をつくることを提案しました。
 ローマ、ヴェネツィア、フィレンツェなどの一般的な観光地ではなく、小さな自治体を再評価して新しいツーリズムをつくろうとしたのです。それを前身として、「イタリアの最も美しい村」協会が誕生しました。

月刊誌『Borghi Magazine』

 協会の主な活動内容は、加盟審査やイベントなどの企画、全村を紹介したガイドブックの制作などです。ガイドブックは毎年発行しており、今年で17冊目となりました。現在はウェブ版がありますから発行部数は減りましたが、年間8000部ほど売れています。それとは別に、月刊誌『Borghi Magazine(小さな村マガジン)』の制作もしています。

中山 協会に加盟する村は2021年12月末現在で334村です。公式ガイドブックはそれら全ての村を網羅する完全版ですね。

プリミ会長 最近また増えて337村になりました。フランスは約170村なので、イタリアの「最も美しい村」はかなり数が多い印象をお持ちになるかもしれませんが、加盟を申請する市の数は1000に達しているのが実情です。つまり、加盟要件の1つである「人口1万5千人以下」の市は国内に5000ほど存在し、その20%に当たる1000の市が加盟を希望していることになります。その数があまりにも多いのです。

中山 申請中の市が1000もあるとは驚きました。しかし、加盟するには協会の審査を通過しなければなりません。

村の入り口には認証の証が掲示される

プリミ会長 まず人口ですが、「市全体の人口が1万5000人以下、“村”に当たる旧市街の人口が2000人以下」を満たしていること条件になります。そして申請するには、市長だけでなく市議会の意向であることが必要です。それらを満たしてはじめて協会の専門委員会から審査員を村に派遣するのですが、1つ問題があります。
 年に1回の総会で、加盟数をこれ以上増やすかどうかの決議をしなくてはなりません。現在は、全体の最大5%程度にあたる16の村が、新たに加盟できることになっています。しかし、その決議を待っていては審査に入ることができません。そのため、決議されると見越して書類審査を先行して進め、そこで30ほどに絞り、候補になった村を審査員が訪れます。

中山 実際に村ではどういった内容を調査するのですか? 

プリミ会長 訪問する4人の審査員は72項目からなるチェック表を持っており、それぞれに点数をつけていきます。大きく分けて、美観、市民向け・観光者向けサービスの充実度、そして環境と景観に関する保護活動などです。再生可能エネルギーへの取り組みや、ゴミの分別方法なども含まれます。

中山 協会に加盟するための審査は「厳しい」といわれていますが、ゴミの分別方法までチェックするとは徹底しています。

プリミ会長 協会は品質保証の国際規格であるISO9001を取得しているため、私たちも国際標準化機構 (ISO)に審査される立場にあります。それは、協会が設けた審査基準も、協会に加盟している村も、国際規格に準じていることを意味しており、国際認証を得ることで「最も美しい村」の品質が保たれることになるのです。
 フランスから始まった「最も美しい村」の取り組みは現在、ドイツやスイスなどのヨーロッパ諸国、さらにはレバノンや南アメリカでも設立の動きがあるそうですが、各国は世界共通の憲章に則った項目で加盟審査をしなければなりません。

中山 「最も美しい村」を世界中に普及させ、その価値が広く認知されるためにも各国が足並みをそろえる必要があるのですね。

協会本部に飾られている協会の紋章

プリミ会長 足並みをそろえるという点では、フランス、ベルギー、イタリア、日本などの加盟国が参加するイベントがあります。主に6月の夏至あたりに開催される「ロマンティック・ナイト」と、10月に行われる「村での日曜」の2つで、前者は私たちイタリアのアイデアから生まれたものです。星空の下でディナーを楽しんだり、村の美しい風景を撮影した1分動画を募集したりと、“ロマンティック”をキーワードに各国が趣向を凝らしたイベントを毎年企画しています。

 イタリア独自では、毎年場所を変えて開催する秋のフェスティバル、バイクやサイクリング、演劇などと組み合わせた催しも州ごとに実施しています。これだけ活発に活動している国はイタリアだけではないでしょうか? 
 村に関連するタイムリーな情報は、協会が運営するSNSなどのソーシャルネットワークで発信しているのですが、たくさんの方が関心を持ってくださっているようで、Instagramのフォロワー数は現在約91万人になりました。その数、政府系のものを含めたすべての旅行系アカウントの中でヨーロッパ一を誇ります。(つづく)

――なぜ、これほどまでに「イタリアの最も美しい村」が多くの人を惹き付けるのでしょうか? 次回は、その理由をひも解きます。

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トスカーナ州の田舎町に暮らす著者が、これまでに訪れた「イタリアの最も美しい村」の中から“忘れられない”30の村をセレクト。「飾らない、ありのままのイタリアを伝えたい」という思いから、電車やバスに揺られながらのローカルな雰囲気が楽しめる村を北部から南部までラインアップ。旅先での出会いやエピソードをちりばめながら、心に沁みる美しい村の魅力を綴る。

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【なかやま・くみこ】
兵庫県出身。ウェブサイト「トスカーナ自由自在」主宰。早稲田大学第一文学部西洋史学専修卒業。28歳でフィレンツェに留学し、のちに現地で結婚。現在はトスカーナ州の田舎で夫・息子2人と暮らしながら、取材・視察・ビジネス、旅のコーディネイトや通訳、ウェブサイトの執筆を手がける。2015年に開設した「トスカーナ自由自在」では各地の魅力を現地から発信している。

【フィオレッロ・プリミ】
「イタリアの最も美しい村」協会会長。ウンブリア州カスティリオーネ・デル・ラーゴ市長を歴任。同市長時代にイタリア自治体協会観光評議会に参加。「小さな市の部門」創設を提唱し、新たなツーリズムを提案。本協会の基礎を築いた。
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