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食べるしあわせ
チーズでフランス旅気分 日本チーズアートフロマジェ協会副理事長
村瀬美幸
最終回 産地直送の味を食卓で!
 専門店や百貨店の売り場などに並ぶチーズは、一見すると年中同じ品ぞろえのようにも見えますが、実は「チーズにも野菜や魚のように旬があります」と村瀬さん。ではフランス直送の香りやおいしさをわが家の食卓で余すことなく楽しむにはどうしたら? 最終回はいよいよ実践編! チーズの食べごろや選び方、保存方法、手軽な料理法も紹介します。


――コロナ禍でなかなか海外に行けない現状ですが、日本にいながらフランスのチーズを味わい、その産地に思いを馳せることができます。日本でより楽しく味わうためのコツを教えていただけますか?

 フランスのチーズの特徴は、なんといっても、そのままいただくのが大前提のテーブルチーズであることです。たとえばイタリアでは、チーズはそのまま食べるよりピザなど料理に使うのが一般的です。一方、フランスでは通常はメイン料理の後にいただくもの。レストランではデザートの前にサービスされるのがチーズなのです。
 ただ、大きなチーズを丸ごとテーブルに出されても、食指が動きませんよね。そこで、ご提案したいのがカッティングです。きれいにカットして、フルーツ、ナッツなどと一緒に皿に盛りつけて見栄えよく出せば、しゃれたおもてなしとなります。

 チーズは洋風のイメージがありますが、和テイストにするのも一案です。例を挙げると「シェーヴル」の大葉巻きや「コンテ」の海苔巻、フレッシュな「ブリア・サヴァラン」にワサビをのせる、あるいはユズの香りを添えるのもいいですね。蒸したサツマイモをクラッカー代りにして、白カビチーズをのせてもおいしいですよ。この場合、「サンタンドレ」や「バカラ」といった、生クリームが入った白カビチーズがより合います。ワインだけでなく、日本酒にもぜひ合わせてみてください。

――フランスチーズ売り場に行ってみたものの、種類が多すぎてどれを選べばよいのか悩んでしまいます。上手な選び方を教えてください。

カットしたチーズをカラフルなフルーツと盛りつけるだけで華やかな一皿に

村瀬さんはチーズに関するセミナーや講座などの講師を務める

 チーズは季節ものなので、店員さんに「旬のもの、今いちばん食べごろなのは何ですか」と聞いてみましょう。ちなみに冬から春にかけて旬を迎えるチーズなら、夏づくりの「コンテ」がおすすめです。若い時期の牧草を食べた牛のミルクからつくられるため、フルーティーな味わいです。寒い時期は、ちょっと濃い目の味がおいしく感じられますから、ハード系、ウォッシュ系の濃厚なタイプがおすすめです。また、2、3月に子ヤギが生まれたあと、フレッシュなミルクを使って仕込まれるシェーヴルは、春先が食べごろとなり、さわやかな味わいを楽しめます。
 季節以外に選ぶ基準となるのは、「気分」です。どのように食べるのか、お茶と合わせるのか、それともお酒と一緒に? など、時間帯やシチュエーションを店員さんに伝えましょう。

 スーパーマーケットなど、アドバイスしてくれる人がいない場合は、迷ってしまいますね。こういうときは、クセのない無難なものを選ぶのが一般的だと思われがちですが、私はあえて本格的なチーズを選ぶことをおすすめします。最初から食べやすいものを選ぶのではなく、食べ合わせることによって食べやすくする、という考えです。たとえば塩味が強いブルーチーズは、ハチミツやジャムで甘みを補ってあげる。洋梨との相性も抜群ですし、最近はチョコレートと合わせるのも流行っています。チーズは、何かと合わせることで味が無限大に広がります。「ちょい足し」の精神でチャレンジしてみましょう!

――フランスチーズはブロックで売られているため、なかなか一度では食べきれません。品質を保つにはどうしてらいいでしょう。

 なるべく早めに食べることをおすすめしますが、保存方法は種類で少し異なります。まずハード系は特に乾燥に注意して、アルミホイルで包んで保管しましょう。反対にシェーヴルは蒸れに注意。オーブンペーパーなどの紙で包むのがおすすめです。また、チーズは切った断面から傷んでいくので、断面をつくりすぎない、断面を古くさせすぎないことが大事です。

 たとえば「カマンベール」は、毎回同じほうから切るのではなく、左右交互に切って断面を新しくしておくと、最後までおいしく食べられます。コンテの場合は、断面の香りも劣化します。断面のお掃除をするイメージで、スライサーの刃の反対の面を使って表面を削ってあげると新しい断面が現れて、再び香りが立ちます。
 食べるときの温度も重要です。あらかじめ冷蔵庫から出しておいて、常温に戻してからいただきましょう。

 もちろん、固くなってきたら、チーズを熱で溶かして味わうチーズトーストやグラタン、また、ソースのように溶かすチーズフォンデュなどの料理に使うのもいいですね。フランスでは、チーズフォンデュといえばもっぱらパンと相場が決まっているのですが、ソーセージ、ブロッコリー、ニンジン、レンコンもよく合いますからぜひ試してみてください。

 フランスのチーズは味が完成されており、おつまみ、おやつ、そしてお茶請けにもなる、応用範囲が広い食べ物です。いろいろな食べ方、組み合わせを楽しんで、気軽に親しんでいただけたらと思います。(おわり)



 自然豊かな地の利を存分に生かしたチーズは、大地の恵みをぎゅっと凝縮させた濃厚な味わい。口に運ぶたびに、芳醇なひと時を演出してくれるに違いありません。連載はこれで最終回となりましたが、自宅で食事する機会が増えている今だからこそ、「チーズでフランス旅気分」を味わってみてはいかが? 個性豊かなチーズにふれるたびに、いつか訪れてみたくなる素朴で穏やかな景色にきっと出合えるはずです。(編集部)

(写真提供・日本チーズアートフロマジェ協会、構成・坂井彰代)

【一般社団法人日本チーズアートフロマジェ協会】https://www.cheeseart-fromager.jp/

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【むらせ・みゆき】
一般社団法人日本チーズアートフロマジェ協会副理事長。国際線客室乗務員勤務時代にチーズの魅力やチーズにまつわる食文化に魅せられ、ワインスクール講師、チーズ専門店店長を経て、2013年にチーズの教室「The Cheese Room」をオープン。同年、世界最優秀フロマジェコンクール2013で優勝する。「美味しいチーズで幸せな日々を」をモットーに、イベントやセミナー、メディア出演をとおしてチーズのある豊かなライフスタイルを提案。チーズの専門家フロマジェおよびチーズエキスパート育成や普及活動にも力を注ぐ。著書は『村瀬美幸のおうちでごちそう本格チーズクッキング』(草思社)、『10種でわかる世界のチーズ』(日本経済出版社)。現在、日本チーズアートフロマジェ協会では、毎月オンラインセミナーでフランス産チーズが楽しめる「世界チーズ紀行」フランス地方編や、チーズアートを体験できる「チーズプラトー講座」を開催中。
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