
多くの観光客を引きつけてやまない“フランスの最も美しい村”に代表されるように、フランスには小さいけれど個性豊かな村が数多く点在している。そして、その土地に暮らす人々に愛されてきたワインがある。インタビューの最終回ではオンラインサイト「moulla」で取り扱う16の村の26種類の中から、作り手のこだわりが光る5本のワインをソムリエ・堀澤さんに紹介してもらいます。◆ リースリングの味の違いを楽しんで 最初に選んだのはフランス北東部、ドイツとの国境に近いアルザス&ロレーヌ地方にあるウナヴィール村の
「リースリング」(2750円)と
「リースリング レゼルヴ」(2945円)です。両方とも1795年から家族経営を続けているドメーヌ・ダヴィッド・エルメルというワイナリーでつくられた白ワインです。

「リースリング レゼルヴ」

「リースリング」
リースリング100%とブドウ品種も一緒なのですが、一方はリースリングで、もう一方はレゼルヴというのがポイント。少し甘口ながらさわやかな酸味が続く「リースリング」に対して、「リースリング レゼルヴ」は辛口でドライと、味わいが全く違う。お客さんに試飲してもらったときの反応が面白い2本ですね。
◆ 修道院でつくられた歴史あるワイン フランス南部、プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地方のルールマラン村にあるシャトー・サン=ピエール=ド・メジャンは、古くから続く修道院。フランス革命後は養蚕に使われたりしていましたが、現在では再びワインづくりに力を入れています。

「キュヴェ・ルージュ・トラディション」

「ル・ブラン」
赤ワインの
「キュヴェ・ルージュ・トラディション」(2620円)、白ワインの
「ル・ブラン」(2620円)ともにエチケット(ラベル)に描かれた修道院のイラストが目印。いずれも3種のブドウ品種をブレンドしていて、どんな料理にも合うバランスのいい味わいです。

ルールマラン村にあるシャトー・サン=ピエール=ド・メジャン
◆ 土地を愛する心がつくり出した辛口ワイン
「オリジン・ブラン」
その土地ならではの特徴を色濃く反映しているワインといえば、
「オリジン・ブラン」(2509円)でしょう。フランス西部に位置するペイ・ド・ラ・ロワール地方ヴーヴァン村の、ドメーヌ・コワリエという1895年から続くワイナリーでつくられた白ワインです。通常では一緒に使用することがないブドウ品種のシュナン・ブランとシャルドネをブレンドすることで、今までにない味わいをつくり上げているのが特徴です。
ロワール川河畔の都市ナントよりもさらに海沿いの河口あたりに位置するヴーヴァン村では、新鮮な魚や貝を食べる機会が多いため、魚料理に合う辛口のキリッとした味わいの白ワインが好まれます。しかし、シュナン・ブランという品種は辛口にしようとしてもブドウ本来の甘みがどうしても残ってしまう。そこで辛口のブドウ品種であるシャルドネをブレンドし、シュナン・ブランでは出せない辛口ワインに仕上げているのです。

では、なぜそうまでしてシュナン・ブランを使うことにこだわるのか? それは、シュナン・ブランがこの土地ならではのブドウ品種だからです。もちろんヴーヴァン村周辺でもシャルドネだけで辛口の白ワインを作るワイナリーもありますが、それならほかの土地、たとえばブルゴーニュでも同じようにつくれる。ですから、あえてシュナン・ブランを使うのは、作り手がその土地を心から愛しているからなのだと思うのです。
――堀澤さんの説明を聞いていると、ワインの味は村そのものだとうことがよくわかる。そして、私たちはそれを味わうことでフランスの小さな村々を旅した気持ちになれるのだ。家族や仲間と楽しく語らいながら飲むのもいいけれど、たまには一人静かに『フランスの美しい村を歩く』(寺田直子著)や『フランスの花の村を訪ねる』(写真と文・木蓮)を読みながら、小さな村の小さなワインを味わう……。そんなぜいたくな時間の使い方もしてみたい。(おわり)(構成:編集部)
【moulla(ムーラ)のオンラインサイト】
http://www.moulla.jp/