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美しいくらし
シーラさんと50の着物物語 着物研究家、十文字学園女子大学名誉教授
シーラ・クリフ
第1回 秘められた箪笥の中で見つけたもの
着物研究家シーラ・クリフさんの新刊『箪笥開き THE KIMONO CLOSET』が、2026年4月に発売されました。待望の新刊は、20代から65歳以上まで50人の日本人女性の着物箪笥を調査した「箪笥開きプロジェクト」から生まれた一冊です。女性たちが語った着物物語には、家族との大切な思い出や人生の節目の記憶が織り込まれ、“生きた着物”の姿を浮かび上がらせます。そんな新刊の魅力を探るべく、シーラさんに全3回にわたりインタビュー。箪笥開きプロジェクトを振り返りながら、着物が紡ぐ心豊かな世界をひも解きます。


――新刊の刊行おめでとうございます。『箪笥開き THE KIMONO CLOSET』は、シーラさんが2016年から約4年間かけて取り組んだ「箪笥開きプロジェクト」の調査結果をまとめた本です。改めてプロジェクトのきっかけを教えてください。

きっかけは十数年前、イギリスのリーズ大学大学院で博士号を取得したころのことです。私は伝統衣装でありファッションでもある着物について研究を続けてきましたが、その過程で気づいたのは、柄やデザイン、染め織りの技法などが話題にのぼるのに比べ、“それを実際に身にまとう人”に焦点があたる機会はとても少ないということでした。着物はファッションの一つですから、企画、生産、流通、販売、マーケティングなど、いくつもの領域が関わり合い一つの市場が構成されます。そこにはもちろん消費の領域もあるわけですが、エンドユーザーについてはこれまでほとんど注目されてこなかったのです。

――言われてみると、著名人のコレクションなどが紹介されることはあっても、一般の人の着物について知る機会はほとんどありませんね。

美術館や博物館に展示された着物も、いろいろなことを教えてくれます。けれども着物の本当の姿を知るためには、「誰が着ていたのか、どのように着ていたのか」というストーリーを知る必要があると思いました。着る人の考えやニーズを知ることは、作り手が何を作ればいいのかを考えるうえでも重要です。

女性たちの着物を調査するシーラさん

そんな中、UCL(University College London)の人類学者、ダニエル・ミラー教授が行ったユニークな研究の存在を知りました。ロンドンの一角にある通り沿いの家々を訪ね、住民と所有物の関係を調査するというものです。「リアルな着物の情報を知りたい」とずっと思っていた私は、その研究にとても興味をひかれました。ミラー教授と同じように、誰かの家に入り、着物箪笥を開いてもらうことができたら、きっと面白いストーリーに出会えるはずだと思ったのです。そこで友人の石岡久美子さんと写真家のタッド・フォングさんの協力を得て、箪笥開きプロジェクトに取り組みました。

――とはいえ50人の方に箪笥を見せてもらうのは大変だったのでは?

正直にいうと大変でした(笑)。箪笥はいわば秘密の場所。人に見せることはそうありません。そもそも他人を家に入れるだけでも躊躇しますし、箪笥は寝室に置かれていることも多いですよね。そんなプライベートな空間を見せてもらえたのは、皆さんが私の試みに関心を持ち、信頼してくださったおかげです。プロジェクトに協力してくれた方々に心から感謝しています。

意外だったのは、調査の際にたびたび「こんな機会があってとてもありがたい」という言葉をかけてもらったことです。家族から受け継いだ着物、大切な着物を持っているけれど、そのことを人に話す機会がない。誰にも知られることがない。そんな思いから、「まさか私の家族の話を聞いてくれるなんて、夢にも思わなかった」と話す方が何人もいたのです。

箪笥の中に大切にしまわれた着物たち


――箪笥の中に大切な物語をしまい込んでいたのですね。

先日、私の娘に新刊の感想を尋ねてみたところ、面白いことを言われました。彼女は「これまでかもめの本棚で出版した2冊(『SHEILA KIMONO STYLE』『Sheila Kimono Style Plus』)が、ファッションとしての着物の可能性を伝える本、つまり着物の“外側”の魅力を伝える本だとしたら、新刊は着物の“内側”の魅力を伝える本だね」と言うのです。なかなか鋭いでしょ(笑)。

――着物の内と外、いい得て妙ですね!

「ママらしい本だね」とも言われました。見た目の美しさは着物の大きな魅力です。それに加えて、目には見えない価値も持っているのが着物の素晴らしさなのだと思います。今回の本では、その“プラスアルファ”の部分に焦点をあてました。プロジェクトに協力してくださった方々もそうでしたが、洋服と着物を一緒に保管する人はいませんよね。それだけ着物が特別な存在だということです。

――着物のより深い魅力となっているプラスアルファとは、何だと思いますか?

多くの人にとって、家族とのつながりや思い出がそれにあたるのではないでしょうか。あるいは、人生の中で何度かあるような、特別な日の記憶かもしれません。自分自身のさまざまな思いでもあるでしょう。箪笥開きプロジェクトは、そうした着物の内側を探索するような試みでした。(つづく)

「着物の本当の姿を知りたい」。その一心から始まった箪笥開きプロジェクト。開かれた箪笥の中には、美しい着物と、語られるべき物語の数々が静かにしまわれていました。次回は新刊の見どころをピックアップ。女性たちが語ったエピソードと2000枚を超える着物が映し出した、現代の着物事情に迫ります。

~本日のファッションチェック~
黒ベースでシックな雰囲気の中にも、キュートな水玉模様やカラフルな小物でスパイスを効かせるのがシーラさん流。大胆な配色が目を引く帯は、よこ糸に漆塗りの和紙が使われているという変わり種。半衿や帯の赤にリンクする、赤ぶちメガネもポイントです!
(構成:寺崎靖子)

『箪笥開き THE KIMONO CLOSET』
\刊行記念トークイベント/


着物に秘められた家族の記憶や人生の物語から、実践的な収納術、コーディネートのコツまで、着物の多彩な魅力をたっぷりとお届け。オンラインでの参加も可能です。

【日時】2026年6月11日(木)19:30~21:30

(19:00オンライン開場)
※トーク+質疑応答(90分)を予定。終了後に来店参加者限定でサイン会を開催します

【会場】本屋B&B


東京都世田谷区代田2-36-15BONUS TRACK2F+オンライン配信
※京王井の頭線「下北沢駅」西口徒歩10分、小田急線「下北沢駅」南西口徒歩5分、小田急線「世田谷代田駅」西口徒歩10分 ※東口(IC専用改札)から徒歩8分

【参加費※税込み】


・会場参加:2,750円(1ドリンク付き)
・配信参加:1,650円
・サイン入り書籍つき配信参加:4,400円
(1,650円+書籍『箪笥開き THE KIMONO CLOSET』2,750円)※サイン入り書籍はイベント開催後の発送となります

【主催】本屋B&B



◆詳細&申し込みはこちら⇒★

(本屋B&Bイベントページに移動します)

シーラさん待望の新刊・好評販売中!
『箪笥開き THE KIMONO CLOSET』


定価2750円(税込)
B5判・並製・128頁(オールカラー)

自由でカラフル、キュートな着こなしで、着物の新たな魅力と可能性を発信しているシーラさん。愛する着物についてもっと多くを知りたいと取り組んだのが、“秘密の場所”ともいえる女性たちの箪笥を開き、その隠された世界を記録する「箪笥開きプロジェクト」です。4年間で出会ったのは、20代から65歳以上までの50人の日本人女性と、合計2472枚の着物たち。これまでの人生と家族の歴史が詰まった一人ひとりの着物物語を、オールカラーの写真とともに紹介します。

★書籍の詳細・購入は⇒

こちら


好評既刊!【シーラさんの着物写真集】



『SHEILA KIMONO STYLE』


(定価1650円)
古着やアンティークを中心とした私服の着物コーディネートが満載。季節ごとの装いをチャーミングに着こなすシーラさんの初の写真集。詳細はこちら



『Sheila Kimono Style Plus』


(定価2200円)
私服コーデ40点を「Elegant」「Antique」「Plain&Pattern」「Casual」の4つのカテゴリーに分類し解説。着物に関する質問に答える「Q&A」も特別収録。

詳細はこちら

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【Sheila Cliffe シーラ・クリフ】
1961 年イギリス生まれ。着物の歴史や技法に関する探究を続けながら、国内外で着物展覧会やファッションショーの企画・プロデュースなど多彩な活動を展開。2018 年に刊行した自身初の写真集『SHEILA KIMONO STYLE』(東海教育研究所)では、古着やアンティークを中心とした私服の着物コーディネートを紹介し反響を呼ぶ。「徹子の部屋」(テレビ朝日)、「世界はほしいモノにあふれてる」(NHK)など、テレビやCM、雑誌にも多数出演。2002年、民族衣裳文化普及協会の「きもの文化普及賞」受賞。2019~2020年「丹後ちりめん創業300 年」のアンバサダー。
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