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「トーベ・ヤンソンの夏の記憶」特別販売会 in 長野 ライター
内山さつき
北欧イベントをめぐる小さな旅
2025年9月に刊行した『トーベ・ヤンソンの夏の記憶を追いかけて』。ムーミンの作者として知られるトーベ・ヤンソンをテーマにしたこの本の特別販売が、2026年2月から長野市内で2つ企画されました。そのうち「フィンランドポップアップカフェ」はすでに会期を終え、もうの一つの「トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~」は4月12日(日)まで開催中です。こうした中、著者の内山さつきさんが2つの会場を訪れ、北欧の空気が感じられるイベントの様子をレポートしてくれました。

*  *  *


ガラス張りの開放的な長野県立美術館

昨年2025年から全国を巡回している「トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~」。今も世界中で愛されている「ムーミン」の生みの親である、フィンランドの芸術家トーベ・ヤンソンの作品とムーミンの世界がたっぷり味わえる展覧会で、2026年4月12日(日)まで長野県立美術館で開催中です。2月28日、私はこの展覧会(長野会場)とその週末に開催されていたフィンランドカフェのイベントを訪ねるために、長野市に足を運びました。

長野県立美術館は、1400年の歴史を誇る善光寺に隣接する城山公園内にあります。せっかくなので美術館へ向かう道すがら、ついでに参拝もすることに。善光寺は無宗派で、すべての人のために開かれているお寺なのだそう。石畳に古い趣のある建物が並ぶ門前の和やかな雰囲気を味わって、国宝の本堂にお参りします。そしてそのまま東側に境内を抜けると、すぐに城山公園です。開けた広場の向こうには信州の山並みが映え、芝生の中にガラス張りの美術館が佇んでいました。

土曜日の早朝から展覧会会場はすでにたくさんの人で賑わっていました。東京を皮切りに巡回中の同展覧会、壁画やムーミンの線画を元にしたアニメーションなどの素敵な演出はそのまま。多くの人々がトーベの壁画作品(複製)や油彩作品を食い入るように見つめていたのが印象的でした。
会場は2階入口から1階へと抜けていく構成で、ゆったりとした空間が魅力的です。特設ショップでは、トーベ・ヤンソンが暮らした島に滞在した体験を綴った拙著『トーベ・ヤンソンの夏の記憶を追いかけて』も取り扱っていただいていて、実際に手に取ってくださる方の姿を見つけると、胸が温かくなりました。

70代と40代くらいの母娘と思われる二人連れのお客さんが、小児病棟の階段の壁画のために描かれたスケッチを眺めながら、
「お母さん、ムーミンの中では誰が好き?」
「私はやっぱ、ミイちゃんかな……、はっきりしているから。でもこの大きい方(ミムラねえさん)ものんびりしてていいのよね」
「私はそうね……、ムーミンママかな」
なんてゆるやかに会話をしているのが聞こえてきたのも微笑ましかったです。

トーベ・ヤンソンの公共施設のための作品にも焦点を当てた展覧会 ©Moomin Characters™ ©Tove Jansson Estate

アーチ型の入口の向こうでは、トーベの描いた挿絵の世界をアニメーションで体験できる「線画の部屋」 ©Moomin Characters™ ©Tove Jansson Estate


長野県立美術館には、本館に併設して日本画の大家、東山魁夷の作品を数多く所蔵する「東山魁夷館」もあり、通年で作品を入れ替えながら展示が行われています。東山魁夷は日本の風景を描いた画家として有名ですが、50代には北欧を旅し、デンマークやスウェーデン、フィンランドなどの風景も多数手がけました。ムーミンが生まれたフィンランドの風景も何点か展示されていて、澄んだ北欧の光と空気を感じることができました。画家の生涯や代表作も丁寧に解説されているので、時間のある方は併せてぜひどうぞ。

istut特製のラスキアイスプッラ

istutを営む伊藤志保さん、誠さん夫妻

この週末は展覧会の他に、近くの雑貨屋店「risette」で北欧ヴィンテージの販売と自家焙煎の珈琲を手がける店「istut」による、フィンランドポップアップカフェも開催されていました。フィンランドポップアップカフェのメニューには、フィンランドで2月の謝肉祭の期間に食べられる伝統的なお菓子「ラスキアイスプッラ」とシナモンロールが登場。ラスキアイスプッラは生地にカルダモンを練り込んだパンに、ジャムやアーモンドクリーム、ホイップクリームを挟んだもので、隣国スウェーデンでは「セムラ」と呼ばれています。キリスト教のイースターの断食に備えてカロリーを取るために生まれたお菓子なのでかなりハイカロリーですが、この時期でないと食べられないレアな絶品スイーツなのです。

istutのラスキアイスプッラは、八ヶ岳産のルバーブのジャムにホイップクリームがたっぷり。一口ほおばると、カルダモンの香りとクリームの甘味、そしてジャムの酸味が広がり、幸せいっぱいになります。
このポップアップイベントでは拙著『トーベ・ヤンソンの夏の記憶を追いかけて』の販売も行ってくださり、フィンランドに関心のある方々が、展覧会「トーベとムーミン展」のチラシとともに本を手に取ってくださっている様子がとても嬉しかったです。

フィンランド出身で日本在住の友人が、「日本でいちばんフィンランドの雰囲気に近いのは、実は長野なの」と話してくれたことがありました。長野県の県木は白樺で、森や湖が身近にあり、涼しい気候とゆったりとした空気が流れていることが共通している部分なのかもしれません。自然が美しく、人々があたたかい長野で、フィンランドをたっぷり満喫できた週末でした。(おわり)


(写真提供:内山さつき)

【内山さつきさんのInstagram】https://www.instagram.com/satsuki_uchiyama/?hl=ja

トーベとムーミン展
~とっておきのものを探しに~

[長野会場]


[会場]長野県立美術館 (長野市箱清水1-4-4 城山公園内・善光寺東隣)
[会期]2026年2月7日(土)~4月12日(日)
※休館日:水曜日、2/11(水・祝)は開館、翌2/12(木)休館
[開館時間]9:00~17:00(展示室入場は16:30まで)


[公式サイト]https://tove-moomins.exhibit.jp/(最新情報をご確認ください)

◆特設ショップにて、書籍『トーベ・ヤンソンの夏の記憶を追いかけて』を販売しています。この機会にぜひお買い求めください。

好評既刊『トーベ・ヤンソンの夏の記憶を追いかけて』
内山さつき 著


定価2420円(税込)

「ムーミン」シリーズの生みの親で、芸術家としても知られるトーベ・ヤンソン。彼女が26年間、ほぼ毎年の夏を過ごした場所は、フィンランド湾に浮かぶ小さな島クルーヴハルでした。今なお水道も電気もないその島に滞在した忘れがたい日々と、トーベの友人たちが語った色褪せることのない思い出――。この二つの記憶を重ねるように綴られる旅のエッセイです。アトリエや幼少期を過ごした家など、ゆかりのスポットも収録。ページをめくるたびにトーベが見つめていた世界に出会えます。

●書籍の詳細・購入は⇒

こちら

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【うちやま・さつき】
東京都生まれ。月刊誌の編集執筆に携わった後、フリーランスのライター、編集者として独立。「旅・物語・北欧」をテーマに取材を続ける。2019年から全国を巡回した「ムーミン展 the art and the story」の展示監修&図録執筆を担当するほか、朝日新聞デジタルの連載「フィンランドで見つけた“幸せ”」や「地球の歩き方 webサイト」のラトビア紀行を執筆する。2014 年夏、「ムーミン」シリーズの作者トーベ・ヤンソンが夏に暮らした島、クルーヴハルに滞在したことをきっかけに、友人のイラストレーター・新谷麻佐子さんと北欧や旅をテーマに発信するクリエイティブユニットkukkameri(クッカメリ)を結成。ユニットとしての著書に『とっておきの フィンランド』『フィンランドでかなえる100の夢』(ともにGakken)。2023年に開設したwebサイト「kukkameri Magazine」では、フィンランドのアーティストたちを紹介している。
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