「私にとって、箪笥は私自身を映し出す鏡のようなものです」と語るのは、着物研究家のシーラ・クリフさん。箪笥の中の着物たちはシーラさんの個性や好みなど、さまざまな側面を表現しているからだと言います。ポップでキュート、シックでエレガント――既成概念に捉われずに自由な発想で楽しむシーラさんの着物スタイルの秘密を少しでも解き明かすべく、箪笥を拝見。心に残る着物にまつわるストーリーを語ってもらう新連載(全3回)の始まりです!
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私が最も大切にしている織りの着物は、鈴木紀代子さんの絵絣と北村久美子さんのピンク色の格子柄の着物です。染色作家の鈴木さんと初めて出会ったのは今から約35年前。上野の美術館の前にいた彼女に偶然、私が道を尋ねたのがきっかけです。話をするうちにお互いが近所に住んでいることがわかり、それから交流を重ねています。鈴木さんは植物を育てて染料を作り、その染料で染めた糸を使って自分の手で反物を織り上げていきます。彼女の作品を見たとき、私は感銘を受けました。彼女は高度な技を用いて絹糸で絵絣を織るだけでなく、縞柄や格子柄が一般的なデザインをさらに上の次元に昇華させているのです。私は彼女の着物を所有していることを誇りに思っています(写真右側の2枚)。
埼玉県の秩父地域でかつて作られていた「秩父太織(ふとり)」の技術を受け継ぐ北村さんとは、着物に関する論文を執筆していたときに出会いました。秩父太織とは、養蚕や製紙を営む農家が規格外の繭を紡いで作る織物です。北村さんは自らの手で繭から糸を紡ぎ出しますが、そのリズムは、はるか昔の秩父の農家の女性たちを思い出させます。ピンク色の着物は、天然染料のコチニール色素で染めたものです。私は、鈴木さんや北村さんが織りの芸術に打ち込む情熱、そして彼女たちが自らの美的価値観を貫き、独自の地位を築いてきたことに深く共感しています。彼女たちの作品は、織りが必ずしも地味で色彩に乏しいものでないことを私に教えてくれました。
彼女たちの作品以外にも、大切にしている織りの着物があります。私が手にしている茶色の縞柄の着物は、染織研究家で染織プロデューサーとして映画やメディア向けのオーダーメイド作品なども制作していた故・浦野理一さん(1901-1991)の作品です。蚤の市で見つけました。並んでいる他の着物よりも高価でしたが、柔らかな生地に特別な思いを感じて購入しました。買った後になって、浦野さんの工房で作られたものだと知りました。そしてもう一枚、濃い茶色の模様が印象的な大島紬が写真に写っていますが、これは複雑な総柄よりもシンプルな模様を選ぶ私の好みを反映しています。(つづく)
(写真:Todd Fong)
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