× close

お問い合せ

かもめの本棚に関するお問い合せは、下記メールアドレスで受けつけております。
kamome@tokaiedu.co.jp

かもめの本棚 online
トップページ かもめの本棚とは コンテンツ一覧 イベント・キャンペーン 新刊・既刊案内 お問い合せ
食べるしあわせ
柴又で始まる「ととら亭」の第2章 「旅の食堂ととら亭」店主&シェフ
久保えーじ&久保智子
後編 2人の旅はいつまでもどこまでも
 2022年7月20日、葛飾柴又に移転オープンした「旅の食堂ととら亭」。店主の久保えーじさんは新しい店を、「門からのアプローチはボーディングブリッジで、外のドアは飛行機の扉、内側のドアを開けたところがイミグレーション。ホールに着けば、そこからが小さな旅の始まり」と紹介します。ととら亭の第2章とも呼べる“新しい旅”をスタートさせた、えーじさん、智子さん夫婦。インタビュー後編では、2人が店に込めた思いやこれからについて聞きました。

えーじさんが撮影した旅の写真が飾られた店内は、まるでギャラリーのような雰囲気

――「ととら亭リニューアルプロジェクト=TReP(トレップ)」は7年かけて実現させたそうですが、ずばり、こだわりポイントは?

えーじ もう、こだわりのかたまりです(笑)。店舗面積は野方時代より少し広くなったかな。天井に板を張らなかったから天井が高くて開放感があるでしょう? ホールの突き当りには天窓があって、ランチタイムには自然光が照明になります。

智子 このお店は“自分の持ち物”。だから何から何まで好きなものを選べるのがうれしくて、トイレの水道の蛇口や手桶、タイル1枚まで2人で話し合って決めました。野方のお店は「和」の雰囲気だったけど、新店舗は落ち着いた中にも「どこの国かよくわからない感じ」に。大工さんが細かいオーダーを全部、形にしてくれました。たくさんの業者さんがかかわってくれましたが、チームワークがすごくよくて本当にありがたかった。内装を請け負ってくれた会社の女性社長さんは、「建築に不可能はありません!」なんてきっぱり言ってくれて、感動的にかっこいいんです!

二人のこだわりが詰まった店内


えーじ 「TReP」は僕たち夫婦の旅のキャリアの集大成ともいえます。でも、それは2人のイメージだけを純粋に形にしたのではなく、いろいろな人とのコラボレーションで生まれたものなんですよね。これには、『世界まるごとギョーザの旅』の本を作った経験もすごく関係しています。僕はどちらかというと、頭の中で100%のイメージを作ってそれを形にするのに固執するタイプ。だから“ギョーザ本”も最初はそんな感じで向き合っていたんですが、本づくりを進めるうちに、だんだんと違うことに気づいた。編集者さんやデザイナーさんなど、本になるまでにたくさんの人が関わってくれたことで、僕が考えていたよりももっともっとすてきな本になったのです。
 新しい「ととら亭」も同じです。ベースにあるのは僕や智子のイメージですが、たくさんの人たちのアイデアや連携プレーが加わって、この形になったのだと思います。キャッチボールが、最終的にはよい作品を生み出すんですね。

柴又駅から徒歩1分の場所にある「旅の食堂ととら亭」


――「かもめの本棚」との本づくりの経験が、新しいお店づくりに役立ったとは! 編集者としてうれしい限りです(笑)。ところで、営業スタイルやお料理にも変化があるのでしょうか?

2022年夏のディナーはエジプトを中心に、ブルガリア、南アフリカ、ジョージアなどの料理を提供

智子 基本的にはランチとディナーの営業スタイルは変わりませんが、料理は常に「一番よい状態」で提供したいので、グランドメニューを絞ってフレキシブルに入れ替えできるようにしました。少量ずつ仕込みをして、なくなったら次のメニューに替えていく。そうすれば、いつも一番おいしい状態で食べてもらえますから。お子様の年齢も、小学生以上から10歳以上に変えました。いろいろな考えがあると思いますが、「この店はこういう雰囲気ですよ」と店側から提案し、それに納得した方に来ていただいて、料理を楽しんでほしいからです。

えーじ 傲慢な気持ちで言っている訳では決してありませんが、お客さまが店を選ぶように、店もお客さまを選ぶことは必要だと思うんです。野方で始めたころは、どんなリクエストにも応えようと力が入っていましたが、当然ながらそのすべてに対応することはできませんでした。そこで得たのが、「全部は無理ですが、社会の中の“ある一部分”を僕らが引き受けます」という考え方かな。お客さまの求めるものはそれぞれですが、その中で僕らが応えられる範囲で対応する――自分たちのスタイルを続け、その行動を通して皆さまに理解し、受け入れてもらうしかないんでしょうね。

「Departures」の看板はなんと特注品!

―― 今後の2人の旅にも期待が高まります。いつごろから、どこへ?

えーじ 今、計画しているのは、ユーラシア大陸を横断する旅。その名も、ユーラシア・グラウンドツアー「EGT」です。これまでの旅は首都を中心とした「点の旅」だったけど、EGTは点と点を結ぶ「線の旅」ですね。1回に45カ国くらいを巡る計画です。パートⅠはイスタンブールを境にして西側で、パートⅡは東側。パートⅠでは、モロッコからスタートしてスペイン、フランスと北上し、アイルランドからイングランド、そして再び海を渡ってオランダへ。1回の旅が3カ月と考えていたけれど、もしかしたら110日前後になるかもしれませんね。

智子 えーじは、普通では絶対にできないだろうっていうことを「夢のノート」に書いて、全部実現しているんです。この店と家だって、無理だと思っていたのにできちゃった。「えっ、ホントに?」っていうのを全部やってのけるから、3カ月の旅も必ず行くんだろうな~。って……考えるだけでも楽しい!

えーじ コロナの感染拡大状況や世界情勢を見極めながら、来年の2月くらいにウオームアップでまずは東南アジアのどこかに。その後、様子を見ながらEGTを始動させたいですね。身体能力をキープできているうちに、難易度の高いアフリカにも行きたい。ガボンとかコートジボワール、リベリアとかね。

智子 ヨーロッパなど直行便で行ける楽な旅は最後にとっておいて、それも難しくなったら国内を巡り、最後は湯治にしようかって話し合っています。いくつになっても、形は変わっても、旅はやっぱり続けたい。旅も料理も“引退”は全く考えていないんです(笑)。

――「一生、旅を続けたい、という私の願いを実現してくれたのが、えーじ。出会えたことは人生で一番のラッキーで、最初のころも好きだったけれど、今が一番好き!」と、智子さん。そんな智子さんに、「助け合って何度もピンチを切り抜けた、手放しで信じられる相棒」と全幅の信頼を寄せるえーじさん。比翼の鳥、連理の枝、2人の旅は、いつまでもどこまでも続くのでありましょう……と、しみじみしながら柴又駅の改札に向かえば、背中に響く寅さんの声。「また何かあったら葛飾柴又のととら亭を訪ねて来な。おいしい料理が待ってるから……」(完)

(構成:川島省子)

2022年7/20 葛飾柴又にオープン!「旅の食堂ととら亭」



【住所】東京都葛飾区柴又4-8-10
   (京成電鉄金町線「柴又駅」徒歩1分)

【営業時間】火曜定休、金曜はディナーのみ
《平日》
ランチ11:30~13:30(L,O)~14:30(Close)
ディナー18:00~21:00(L,O)~22:00(Close)
《土・日・祭日》
ランチ11:30~13:30(L,O)~14:30(Close)
ディナー17:30~21:00(L,O)~22:00(Close)

※ランチの営業は8月3日(水)から
※オープン後、しばらくは混雑が予想されます。また、ソーシャルディスタンスを確保する都合上、すべての席を使用していません。ランチは早めの来店、ディナーはなるべく早めの予約をおすすめします。

旅の特集メニューや営業日などの詳細は、ととら亭のホームページをご覧ください
【「旅の食堂ととら亭」ホームページ】http://www.totora.jp/

定価1,980円(税込)

好評販売中!
『世界まるごとギョーザの旅』



 これまで50以上もの世界の国々を旅してきた久保さん夫婦が営む『旅の食堂ととら亭』は、2人が旅先で出会った感動の味を再現した“旅のメニュー”を提供するお店。元会社員のえーじさんが広報&フロア担当で、料理人の妻・智子さんが調理を担当。そんな彼らが追いかけ続けているのが、世界のギョーザだ。トルコのマントゥ、アゼルバイジャンのギューザ……国が変われば名前や具材、包み方も変わる! 個性豊かな世界のギョーザをめぐる旅と食のエッセイ。

◎『世界まるごとギョーザの旅』の詳細はコチラ⇒

ページの先頭へもどる
【*】
【くぼ・えーじ】
1963年神奈川県横浜市生まれ。ITベンチャー、商業施設の運営会社を経て2010年、妻で旅の相棒であり料理人でもある智子とともに、現地で食べた感動の味を再現した“旅のメニュー”を提供する「旅の食堂ととら亭」を開業。同店の代表取締まられ役兼ホール兼皿洗い。これまで出かけた国は70以上、旅先で出会った料理の再現レシピは140以上にもなる。開店11年目の2021年11月、新たな街へと旅立つために東京・中野区野方の店を閉店。2022年7月20日、葛飾・柴又に「旅の食堂ととら亭」新店舗をオープンさせる。
【くぼ・ともこ】
1970年群馬県高崎市生まれ。食品成分分析会社、求人誌営業を経て料理業界へ転身。フランス料理、ドイツ料理のレストランで修業した後、旅の料理人となる。見かけは地味だが、スリルとサスペンスに満ちたジリ貧の旅を好む。特技は世界中どこでも押し通す日本語を使った値切り。
新刊案内