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食べるしあわせ
柴又で始まる「ととら亭」の第2章 「旅の食堂ととら亭」店主&シェフ
久保えーじ&久保智子
前編 新店舗の準備はハプニング続き!?
 旅が一番好きで、次に食べるのが好き。そんな久保えーじさん&久保智子さん夫婦が、世界を旅して現地で出会った“感動の味”を再現して提供する「旅の食堂ととら亭」。二人がこの店を東京都中野区野方にオープンさせたのは、2010年3月のことでした。以後、食を探訪・追究する日々は、書籍『世界まるごとギョーザの旅』(2017年刊行/東海教育研究所「かもめの本棚」)として結実。その後も野方で安居楽業と思いきや、フーテンの寅さんの故郷・葛飾柴又に移転、今年2022年7月20日には新店舗オープンとの情報が! 果たしてその目的とは? 二人が描く未来とは? 

―― 新店舗オープン、おめでとうございます! 野方から柴又へ、「旅の食堂ととら亭」の第2章ともいえる門出ですね。教えてもらったとおり、駅前の「寅さん像」から右の小路に折れて50メートル。あっという間にお店に着きました。それにしても、なぜ引っ越しを?

2022年6月下旬撮影

えーじ 大きな理由の一つは、旅の時間をもっとたっぷり確保したいと考えたからです。ととら亭のコンセプトは、世界の料理をアレンジせずに紹介すること。お店で出す料理のネタを探すため、1週間から2週間前後の旅を年に3回程度、通算で年に1カ月以上は海外に出かける日々をこれまで送ってきました。周囲の人からは、「長い旅ができてうらやましい」と言われますが、現地では掘り下げて調べたいことがゴロゴロ出てくるから、半月くらいじゃ全く足りない。旅を続けるうちに、「もっとじっくり時間をかけて料理取材がしたい」という思いがどんどん強くなってきたんです。
 そこで問題になるのが、お金の問題。僕らの場合、旅のコストはそれほどかからないけれど、店舗も自宅も借りていたから両方の家賃負担が結構大きい。それをどうにかしたいと思ったんです。もう一つの理由は、思いどおりに店をつくる自由がほしかったこと。テナントはやはり借り物だから、改装するのにも限界があります。そうしたことを総合的に考えると店舗と自宅を所有するしかないという結論に達し、「ととら亭リニューアルプロジェクト:Totoratei Renewal Project=TReP(トレップ)」を立ち上げたのが7年ほど前。ようやくここまでたどり着きました。

―― 構想7年! すごいですね。いろいろとご苦労があったのでは?

智子 まずは、移転先を決めるのが大変でした。土地を探し始めて2年くらい経っても見つからない。私はもう無理なんじゃないかと思い始めていたけど、えーじは、「いや、何があっても探すんだ」と……。

えーじ あきらめの悪いオトコなんです(笑)。とはいえ、途方に暮れることは多かったですよね。お金を借りるのも、土地を買うのも、家を建てるのも初めてだから、何をどうすればいいのかわからない。新店舗に選んだ柴又駅周辺は景観地区で、僕たちが建てるのは店舗併用住宅。しかも既製品ではない“こだわりの建物”だったためにより多くのルールがあって、建築基準法や消防法などの関係でお役所から“ものいい”がつきまくりでした。
 でも、これまで訪れたアフリカの国などと違い、日本には秩序がある。命が危険にさらされることはありません(笑)。だからまずは相手のところに出向いて話を聞くところから始めて、「それはダメです」と言われたら、先方の納得が得られて自分たちの希望を満たせる方法を考えて提案する。そんなことを繰り返しました。

2022年6月下旬撮影

智子 旅行中のハプニングに通じるものがあるんですよね。だから、トラブルが起きたときの合言葉は、「アフリカの旅行だから」。アフリカでは信じられないような出来事が頻発したので、そういう大変なことを経験していると何があっても乗り越えられると思えちゃう。

えーじ 下町の不動産屋のおじいさんに、いきなりどなられたこともあったなあ。スーツでばっちり決めて行ったんだけど、地上げ屋だと思われたみたい。それならば、とポロシャツ姿で「ちわ~っす」というノリで訪ねたら、すごくフレンドリーに対応してくれました。まあ、一つずつ学習を重ねたということです。とにかく営業開始までは毎日、「なんだこりゃ!?」みたいなハプニングの連続。柔軟な発想で切り抜けるしかなかったですね。目的だけは見失わないようにして。

智子 新型コロナウイルスの影響で営業も旅もできない期間が長かったのですが、逆に時間に余裕ができたので、店舗の構想を考えたり、次の旅のルートを考えたり……。昨年(2021年)11月末に野方の店をクローズしてからはとにかく時間がたっぷりあったので、新しい看板を手作りしたりして、ハプニングはたくさんあったけれど楽しく準備を進めました。

―― 前に住んでいた野方のアパートを引き払って柴又へ引っ越してきたのはいいけれど、店舗兼住宅はまだまだ工事中。住環境が整うまではキャンプみたいな生活だったとか……。

智子 引っ越した時点では水道、ガス、電気は使えなかったんです! そのためお風呂は銭湯で、トイレは近所の公園、そして食事はたいていお弁当。実は、ファストフードを生まれて初めて食べたのですが、「ホカホカの牛丼がこの値段で食べられるなんて」と、そのコストパフォーマンスの良さにビックリ! 中にはエスニック風の“旅っぽい味”のメニューもあって、勉強になりました。

建築中の店内

時にはキャンプ飯も!


えーじ 前の通りを歩く人の反応も面白かったね。外から中は見えないんだけど、建物の中から外の声はすごく聞こえるんです。最初は、「あんなにちっちゃい家つくってるよ~」なんて言われて……。アプローチを造り始めたら、「ここにガレージを造ってどうやって出入りするんだ!?」とも。ポスト代わりに大きなタッパーを家の前に置いておいたら、道行く人がしげしげと見て、「すげ~な、これポストだよ」って感心していました。実は、初めは段ボールをポスト代わりにしていたのですが、雨が降ったらドロドロにとけちゃった(笑)。

右下に小さく見えるのが「話題」の手づくりポスト


智子 お店の機材と一緒に、うっかり家のポストも倉庫に預けちゃったのよね。家庭用ゴミなのに、建設現場から出たゴミと間違えられて回収してもらえなかったこともありました。「家庭ゴミです」っていちいち袋に大きく書いたりして。

2022年6月下旬撮影


……と、延々続く笑い話、じゃなくて苦労話。後編では2022年7月20日に柴又にオープンしたばかりの新店舗のこだわりや2人の旅の未来について話してもらいます。

(構成:川島省子)

2022年7/20 葛飾柴又にオープン!「旅の食堂ととら亭」



【住所】東京都葛飾区柴又4-8-10
   (京成電鉄金町線「柴又駅」徒歩1分)

【営業時間】火曜定休、金曜はディナーのみ
《平日》
ランチ11:30~13:30(L,O)~14:30(Close)
ディナー18:00~21:00(L,O)~22:00(Close)
《土・日・祭日》
ランチ11:30~13:30(L,O)~14:30(Close)
ディナー17:30~21:00(L,O)~22:00(Close)

※ランチの営業は8月3日(水)から
※オープン後、しばらくは混雑が予想されます。また、ソーシャルディスタンスを確保する都合上、すべての席を使用していません。ランチは早めの来店、ディナーはなるべく早めの予約をおすすめします。

旅の特集メニューや営業日などの詳細は、ととら亭のホームページをご覧ください
【「旅の食堂ととら亭」ホームページ】http://www.totora.jp/

定価1,980円(税込)

好評販売中!
『世界まるごとギョーザの旅』



 これまで50以上もの世界の国々を旅してきた久保さん夫婦が営む『旅の食堂ととら亭』は、2人が旅先で出会った感動の味を再現した“旅のメニュー”を提供するお店。元会社員のえーじさんが広報&フロア担当で、料理人の妻・智子さんが調理を担当。そんな彼らが追いかけ続けているのが、世界のギョーザだ。トルコのマントゥ、アゼルバイジャンのギューザ……国が変われば名前や具材、包み方も変わる! 個性豊かな世界のギョーザをめぐる旅と食のエッセイ。

◎『世界まるごとギョーザの旅』の詳細はコチラ⇒

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【くぼ・えーじ】
1963年神奈川県横浜市生まれ。ITベンチャー、商業施設の運営会社を経て2010年、妻で旅の相棒であり料理人でもある智子とともに、現地で食べた感動の味を再現した“旅のメニュー”を提供する「旅の食堂ととら亭」を開業。同店の代表取締まられ役兼ホール兼皿洗い。これまで出かけた国は70以上、旅先で出会った料理の再現レシピは140以上にもなる。開店11年目の2021年11月、新たな街へと旅立つために東京・中野区野方の店を閉店。2022年7月20日、葛飾・柴又に「旅の食堂ととら亭」新店舗をオープンさせる。
【くぼ・ともこ】
1970年群馬県高崎市生まれ。食品成分分析会社、求人誌営業を経て料理業界へ転身。フランス料理、ドイツ料理のレストランで修業した後、旅の料理人となる。見かけは地味だが、スリルとサスペンスに満ちたジリ貧の旅を好む。特技は世界中どこでも押し通す日本語を使った値切り。
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