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美しいくらし
フランスの花の村こぼれ話 写真と文
木蓮
第4回 フロマージュその2 カンタル


 前回ご紹介したサレールと、原料もつくり方も同じフロマージュがあります。それが「カンタル」。当然、両方つくっているフロマージュ農家が数多くあります。
 では、なぜ名前が違うのでしょうか?
 サレールの生産期間は毎年4月15日から11月15日までとはっきりと決められています(AOCとAOP*では若干、日にちがずれます)。生産者も農家のみという規定もあります。この基準以外の時期につくられたものがカンタルというわけです。

 初めてサレールを食べたとき、「なんだか複雑な味をしているな」と思ったのですが、それもそのはず。春、一斉に花を咲かせるオーヴェルニュの大地。そのおいしい牧草を食べる牛たちは、一緒に多くの花も食べるからなのです。

食欲旺盛な牛たち
  どのような草花か少しご紹介すると……甘草、ゲンチアナ、アネモネ、アルニカなど。牛たちが放牧される場所も農家によって異なるわけですから、当然、ミルクも違った味になる。そのため、同じサレールでも味が微妙に違うので、それぞれの農家は自分たちの味わいの特徴を紹介するパレットを作っています。
 大自然の中でおいしい牧草を食べ、花の香りがするミルクでつくられたフロマージュ。あなたも食べてみたくなりませんか?

 余談ですが、私の家の近くにあるヤギのフロマージュをつくっている農家を訪れたときのこと。「やってみる?」と声をかけられ、ヤギの乳搾りに挑戦してみました。エサを食べてもらっているうちにお乳を搾るのですが、私のヘタなことといったら……。思わず、農家の皆さんと大笑いしてしまいました。
 こうして実際に体験させてもらうと、私たちがいかに自然の恩恵を受けているのかを、心から実感することができます。

花咲く草原で放牧される
 ヤギのフロマージュの多くは、ご主人が放牧に出かけ、奥さんがつくっているところがほとんど。ヤギのフロマージュはクセがあると思われがちですが、出来立てホヤホヤは、むしろクセがないくらい! 私は2週間ほど熟成されたものが好きなのですが、試食してみると、熟成期間によって驚くほど味が変わっていくのです。
「ヤギのフロマージュはクセがあって苦手……」。そう思われている人にこそ、一度食べてみていただきたと思います。この農家の常連さんたちは熟成の日数も指定するそうで、こういうところにもフランス人のこだわりが垣間見られます。

 さまざまな種類があるフロマージュ。自分の好みに合ったフロマージュを見つけるのは、楽しみの一つです。皆さんもぜひ、オーヴェルニュでいろいろなフロマージュを味わってみてください。きっと、今まで知らなかった花の味に出会えると思いますよ。(つづく)

*AOPフロマージュについて
AOP(Appéllation d’Origine Protégée)は、 原産地保護呼称であるフランスの「AOC」に倣って、1992年に生まれたヨーロッパの原産地保護呼称。AOCはAOPの一部を構成しています。気候条件、日照、土壌、植生、飼料、先祖伝来の飼育や生産法などの地域特性が産品に反映されるという考え方から、産品が該当する地域で正当に生産されたものであることを証明するもの。フランスのAOCはおおむねAOPと見なされ、フランスのフロマージュも現在はAOP制度に組み込まれています。


(構成:編集部、写真提供:木蓮)

★木蓮さんのブログ【フランス小さな村を旅してみよう!】
http://ameblo.jp/petit-village-france/

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【もくれん】
神戸出身。フランスの「おへそ」にあたるオーヴェルニュの人口200人に満たない小さな村に在住する日本人女性。フランス人の夫との結婚を機に渡仏。さまざまな地域に接しているオーヴェルニュの地の利を生かし、名もなき小さな村を訪ねる旅にどっぷりはまる。フランスの小さな村の美しさに魅了され、「パリだけではないフランスの美しさを伝えたい」と、訪ねた村々をブログで紹介。みずみずしい写真と住んでいる人間ならではの視点で人気を呼んでいる。著書に『フランスの小さな村を旅してみよう』『フランスの花の村を訪ねる』(東海教育研究所)。
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