「若いうちが花」という言葉がありますが、そんなことはありません。いくつになっても新しいことを始められるし、変わることはできます。そんな女性を力強く応援する松尾さんの思いを紹介します。100歳まで元気にハイヒールを履き続けたい
写真提供: 日本ソワサンタンウォーキング協会
日本ソワサンタンウォーキング協会の目標は、「100歳まで生きて、ハイヒールを履きこなす女性になること」です。この仕事を始めた当時、100歳という年齢はまだあまり身近ではありませんでした。しかしこの6年で「100歳まで生きる」ことが現実的に感じられるようになりました。スクールでも「100歳じゃなく120歳を目標にしましょうよ」と言う受講生もいるくらいです。ウォーキングの練習で鍛えていると心も体もどんどん元気になっていくので、歩けなくなる日が来るとはとても思えないからです。
目標に「100歳」を設定したのは、いずれ平均年齢が100歳に到達すると聞いたからです。日本において、今現在の100歳以上人口に女性が占める割合は85%(*)。これからますますシニアの女性が増えるということですね。
自分の気持ちに正直になる
年齢を重ねると、どうしても「年だからもう無理だわ」とか「年相応にふるまわないと“イタイひと”と思われてしまう」などと自分で枠をつくってしまいがちです。特に日本の社会は年齢で分類されることが多い。ある程度の年齢になると洋服はミセスの服のコーナーで買うという暗黙の了解があったり、仕事も年齢によって選択肢が急に少なくなったりするのが現状です。
ハイヒールを若者の特権と考え、足や体のトラブルがなくても「今さらハイヒールなんて履けないわ。履いていく場所もあまりないし」とあきらめ、地味な洋服を選び、行動範囲も狭くなり、気がつけば消極的な生き方を選んでいることはありませんか。
でも、自分は自分です。私がいつもお伝えしているのは『「今さら」を「今から」に変えましょう』という言葉。ハイヒールを履きたいと思ったら、その気持ちを大切にしてください。そしてぜひ1歩踏み出してほしいですね。
元気な女性が明るい未来を作る
「クリスチャン・ルブタン」直営店で販売されているハイヒール
写真提供: 日本ソワサンタンウォーキング協会
私はシニア女性が今まで以上に元気になれば、社会はもっとよくなると信じています。何歳になっても輝いている、仕事や役割を持って社会に貢献している格好いい大人の女性、若い人に憧れを持ってもらえるような女性が増えれば素晴らしいと思いませんか。私はそんな女性のお手伝いをしたい。これが「100歳までハイヒールを履いて颯爽と歩く前向きな人生を!」という理念に込めた思いであり、この協会を立ち上げた最大の理由です。私にとって、ハイヒールウォーキングはそれを実現するためのツールなのです。
レッスンを受けているうちに受講生はみるみる明るくなります。ハイヒールを履きこなせるようになっておしゃれが楽しくなると、外出したくなる。いろいろな人に出会う機会が増える。何か新しいことを始めたくなる。こんなふうに積極的に行動し、生き生きと変化していく姿を見ていると、「私が掲げている理念は間違っていなかった」と思えます。「年齢にこだわらずに好きなことにチャレンジしたい」と思う人が少しでも増えれば、これほどうれしいことはありません。
健康な体を維持してハイヒールを履きおしゃれを楽しみ、最後まで美しく女性として輝きながら生きていきたいと願う女性を心から応援していますし、私自身もそうあり続けたいと強く願っています。
(*)総務省統計局が発表した平成26年10月1日現在の「年齢別人口」による
—取材を終えて
低めのよく通る声で、ハイヒールウォーキングと女性の生き方について熱く語る松尾さんこそ、日本のシニア女性のロールモデルではないかと感じました。歳をとるにしたがって、「世間」の常識や価値観をいっそう気にしてしまいがちですが、松尾さんの「自分は自分です」という言葉を忘れずに自然体で生きていこうと思います。
次回は、編集部Yのハイヒールウォーキング講座体験奮闘記をお送りします。ハイヒールを履かなくなってウン十年のY。はたして颯爽と歩ける日はくるのでしょうか。(構成・正岡淑子)
【日本ソワサンタンウォーキング協会オフィシャルサイト】
http://www.60ans-walk.com/