× close

お問い合せ

かもめの本棚に関するお問い合せは、下記メールアドレスで受けつけております。
kamome@tokaiedu.co.jp

かもめの本棚 online
トップページ かもめの本棚とは コンテンツ一覧 イベント・キャンペーン 新刊・既刊案内 お問い合せ
にっぽん醤油蔵めぐり
「職人醤油」代表
高橋万太郎
最終回 富士山の名水で子どもたちを育む(天野醤油・静岡県)

富士山のふもとにある天野醤油

 静岡県御殿場市にある天野醤油の看板商品「甘露しょうゆ」のラベルには、富士山をモチーフにしたイラストが描かれています。さらに「富士山湧水仕込み」の文字も。
 そのラベルどおりに、雄大な富士山に見守られながら醤油の仕込みをしている蔵を訪ねると、「今日はちょうど水をくみに行くので一緒にきますか?」と天野栄太郎社長から思いがけないお誘いが。
 「え? 水をくみに行く……?」。そう思いながら同行することにしました。

 天野醤油では軽トラックに大きなタンクを積んで、仕込みに使う湧き水をわざわざくみに行くのです。くねくねと何度も道を曲がりながら到着したのは、驚くほど透明な湧き水が満たされ、小さな池のようになっている場所。水面ぎりぎりまでコケで覆われているのですが、のぞくと底まではっきり見通せるほどです。この水を使って育てられるワサビは絶品で、池から流れ出す小川の下流にはワサビ棚が広がっているそうです。

こんこんと湧き出す「銀名水」

 この湧き水は、富士山の雪解け水が何十年もの年月をかけて湧き出る名水で、年間を通して14~15度という一定の水温を保っているそうです。だから、夏場は冷たく、空気が冷たい冬場は湯気が立つほど。訪ねたのは早春でしたが、周囲の木々が水面から立ち上る湯気にうっすら包まれていました。きっと、いつ見ても幻想的な光景が広がっていることでしょう。

 天野醤油で1週間の仕込みに必要な水は、約6トン。それを3回に分けて運ぶために、天野醤油のトラックが往来します。持ち運び式の電動ポンプを使って湧き水をくみ上げる作業は大変な手間。それでも、この水が変わると醤油の出来も変わってしまうといいますから、水くみ作業は醤油造りの大切な工程の一つになっているのです。

天野栄太郎社長

 雄大な自然の恵みを大切にして原料にこだわり、一度造った生一本の醤油を食塩水の代わりとして、再び麹の中に入れて二度目の発酵・熟成をさせるという真面目な醸造方法で2年以上をかけて造られる再仕込み醤油。ほかにも国産丸大豆を原料にして「本丸亭」という濃口醤油なども造り、静岡県東部(御殿場市・沼津市・三島市・裾野市)の公立保育所、小学校、中学校で使用されています。

 「子どもたちの口に入るものなので、細心の注意を払わなくてはいけません。責任を感じるとともに、地域の子どもたちに届けられることを誇りに思います」
 天野社長は胸を張って話してくれました。(おわり)


☆この1本でこの料理☆

天野醤油(静岡県)



甘露しょうゆ

価格:514円(税込み)

餃子


 国産大豆と小麦を使用し、2年以上の歳月を費やす。濃厚な味わいと酢のバランスが絶妙の酢醤油は、餃子の油とのなじみがほどよく、いくらでも食べられる。

?焼き餃子や水餃子など、好みの餃子を用意する
?「甘露しょうゆ」と酢、ラー油を準備
?醤油と酢の比率を変えると、さまざまな味の餃子が楽しめる

【職人醤油―こだわる人の醤油専門サイト】
http://www.s-shoyu.com/

『にっぽん醤油蔵めぐり』
本体1,400円+税

☆蔵めぐりの連載が本になります☆



※2016年11月から2017年11月まで連載された「職人醤油のつくり方」と、2018年8月から続いた本連載をまとめた書籍『にっぽん醤油蔵めぐり』コチラからどうぞ。
ページの先頭へもどる
【たかはし・まんたろう】
1980年群馬県生まれ。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は、一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100mlの小瓶で販売する「職人醤油」を運営。これまでに全国の400以上の醤油蔵を訪問した。
新刊案内