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食べるしあわせ
蔵元に生まれ、蔵人になる
蔵人の会
第2回 蔵人、蔵を巡る
 蔵元の後継者であることに以前は多少なりとも抵抗感があった“蔵元後継者”たち。その意識が変わるきっかけとなったのが、同じ境遇の若者で結成した「蔵人の会」でした。座談会2回目となる今回は、実際にどんな活動をしているのかを聞きました。

神戸・灘の「菊正宗酒造」にて


――もともと「蔵人(くらんど)」というと、日本酒や醤油の醸造にかかわる職人のこと。それを「蔵人の会」では「くらびと」と呼び、「日本の醸造食品産業を担い、受け継いできた人々のこと」と定義している。そこに込めた思いは?

焼酎の蔵元 重家酒造
大竹 味噌や日本酒、ワインなど、それぞれ業種も違えば作る工程や商品も違いますから、会として明確な目的があるわけではありません。醸造蔵の後継者や醸造食品に関心を持つ一般の学生が、会を通していろいろな経験をし、成長できればと思っています。

――ホームページでは全国の蔵を訪問して、そのレポートを掲載している。

内田 会のメンバーの蔵は大小さまざまな規模です。同じ業種でも蔵が違えば、扱う機械や製造工程が違ったりもする。まずは、そういうことを僕たち自身が学ぶということが目的です。加えて、サイトを見てくれた方には蔵についてもっと知ってもらいたいという思いがあります。東京には出ていない商品もたくさんあり、まだ知られていないおいしい味噌や醤油、酒などを少しでも広めたいという思いもあります。

昔ながらの製法に欠かせない木桶
三浦 私の実家は日本酒の蔵元です。以前、規模が小さくてそれほど機械化もされていない蔵におじゃましたことがあります。その中で分析室というそこだけ最先端の部屋があったのには驚きました。それまで蔵元というのは職人技が支えていると思っていましたが、かなり近代化されていて、意図した酒造りにアプローチすることが可能なのだとカルチャーショックを受けました。

醸造食品に欠かせない麹づくり
大竹 わかる、わかる! 僕が今まで訪問した蔵で印象に残っているのは、種麹を製造販売している大阪の樋口松之助商店です。種麴は、醸造食品に欠かせない麴を作る過程で蒸し米などに加えるもの。ちなみに、うちの蔵でも樋口さんの種麴を使っています。150年以上前に創業した会社ですから昔ながらの雰囲気を想像していたのですが、入ってみたら超最先端! 見たこともない機械がズラリと並んでいて驚きました。

石井 その蔵では次期社長から話を聞く機会がありました。長い留学経験のある人ですが、印象的だったのは「醸造業界は厳しい状況。自分たちが“絶滅危惧種”だったことに気づけなかった蔵は何軒もつぶれている」という言葉。それを聞いて、自分は絶滅危惧種になる手前で気づける人でありたいと奮い立ちました。

――絶滅危惧種!? そもそも、蔵元の数は減ってきているのだろうか。

ワイン醸造所 白百合醸造
内田 減っており、生き残りをかけた厳しい業界です。そういう意味では、以前訪れた日本酒の蔵元は興味深かったですね。うちのワイナリーではお客さまの要望に応えて多様な商品をお出しするスタンスですが、その蔵元は純米大吟醸のような高級品に特化し、一般の方には販売せずにその県に1つしかない特約酒販店にだけ卸している。そういう方法もこれからの蔵を考えるヒントになるような気がしました。

 蔵を巡ることで業界全体のことが見えてきた――メンバーは口をそろえます。こうした積み重ねは、彼らが家業を継ぐときも、さらには未来の醸造食品業界を担う存在になってからもきっと役立つはず。次回は、蔵を継ぐことを決意した参加者たちの「若い今だからこそ言いたい」ことや、自身が描く未来予想図を語ってもらいます。

(構成:小野哲史、写真提供:蔵人の会)

【蔵人の会ホームページアドレス】
http://kurabito.info/
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【くらびとのかい】
日本の醸造業を支える蔵元の大学生後継者を中心に構成された会。2014年の結成以来、蔵元めぐりや実家の商品の品評会を兼ねた酒宴「樽俎(そんそ)の会」を開催している。現在は蔵元の後継者以外にも、首都圏の大学から酒造りや発酵食品に関心を持つ20人ほどの学生が参加。岐阜県で6代続く味噌・醤油蔵の後継者、大竹令馬(東京農業大学4年)が代表を、山形県で創業150年の味噌蔵の後継者、鈴木昴徳(同3年)と長崎県壱岐市にある焼酎の蔵元の後継者、横山龍太郎(同)が共同副代表を務めている。
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