「裸足でスパイス」の店先に並ぶスパイスやハーブは、すべて店主の井上由香さんが実際に使って心からおすすめするものばかり。ベーシックな使い方から井上さんが発見した新しい使い方まで、イラスト入りで具体的にアドバイスしてくれるので、家に帰って早く試してみたくなります。スパイスやハーブを使ったレシピも掲載されている井上さん手づくりの小冊子
――「裸足でスパイス」では、商品を購入すると井上さん手づくりの小冊子がもらえる。実はこの小冊子を目当てにしているお客さんも少なくない。移動販売のお店を始めた2014年8月から1カ月に1冊ほどの割合で発刊し続けて、この4月で21号となった。
小冊子といってもA3用紙を8等分に折って文章とイラストを手書きしただけ。創刊当初は、自分が勉強したスパイスについての知識をまとめたメモ帳のような形で書き始めました。毎号異なるスパイスやハーブを特集して、それぞれの特徴やおすすめの使い方をまとめて紹介し続けているうちに、次第にお客さんにも楽しみにしてもらえるようになったんです。
――「新しいのに懐かしいミスターメリック」「SUPERスターアニス大暴れ」「ドレスなメース」などインパクトあふれる独特の表現でつづられた小冊子は、思わずクスッと笑ってしまう面白さ。随所に登場するイラストもユーモア満点。それなのに肝心なところは流暢な筆文字がきりりと引き締めている。そういえば店頭で販売している商品のパッケージや値札にも、オリジナルのイラストや文字が筆で描かれていた。
アフリカから家族に送り続けた手紙
実は私、子どものころから書道を習っていて書道歴は30年。まだまだヒヨッコなので今でも師匠に指導されてばかりですが、とにかく今でも続けています。文字を書くことだけでなく、手紙を書くことも大好き。仕事にできるならば、誰かの代わりに手紙を書く「手紙屋さん」になりたいくらい。だから私にとってこの小冊子は、スパイスを買ってくださる皆さんへの絵手紙なんです。
――「絵手紙といえば……」と言って井上さんが見せてくれたのが、アフリカを旅していた間に日本にいる家族に送り続けた手紙の束。半紙に書かれたそれは、文字あり、イラストあり、コラージュあり。普通の手紙とは全く違う。まるで一つの作品のようだ。 訪れた町の特徴や旅先で発見したことなどを気ままにつづり、何枚かまとめて日本に送っていました。アフリカといえども今は電話やインターネットもできる時代です。でも、私は書くことが大好きだから絵手紙を送り続けました。帰国してからそれを一緒に見返して語り合うことで、アフリカでの体験を共有することもできました。

――新しい世界に軽やかに飛び込む行動力と、時代や環境の変化にとらわれずにやりたいことをやり続ける強い意志を併せ持った井上さん。これから先、どんなことに興味を持って、それをどのような形にしていくのか。井上さんの好奇心はきっと人生を豊かにするスパイスなのだ。(構成:山下あつこ、人物撮影:街道健太)
【「裸足でスパイス」のホームページアドレス】
http://hadasidespice.jimdo.com/