第1回:後編 お絵描きモンスター (文・蟹江 杏)

※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『あんずとないしょ話』が2017年5月22日に発売されます(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。
りおんくん、しおんくんとはもう、3年のおつきあいになるお友達です。
私が大きな壁画を描くときに、いつも先頭に立ってお手伝いしてくれます。
頼りになる双子のかわいいお絵描きモンスター。
びっくりさせる線と色を使い、大胆に、一心不乱に描く二人の姿は、私にとっては脅威であり、まさに小さなモンスター。

二卵性の二人は、どこか不思議。
似てないようで、時々ドキッとするほど似ています。
無意識に突然同じ動作をするし、顔を見合わせるタイミングなんてぴったり申し合わせたみたい。
「自閉症なんです」ってお母さんに聞いたのは出会って一年経ったころ。
尋常ではない集中力と独特の時間感を持った子どもたちだなぁって思ってはいたけれど、自閉症とは気づかない。
「自閉症」って実際どんな子どもの事を指すのかな・・・。
調べてみると、
「自閉症は、視線が合わなかったり、人とかかわろうとするとパニックになったり言葉が出ない、といった社会性や他者とのコミュニケーション能力に障害や困難が生じたり、特定のものに強いこだわりを持つ発達障害の一つ」なのだそう。
でも、これって、なんだか、私も思い当たる。
学校になじめず、就職にもなじめず、すべてやめてしまい、絵ばかり描いて、いまだに浮世離れしている私。
私だけかな・・・。
みんな、少なからず、何かしらの、社会との不一致に気づかないふりをして生きていませんか。
私は、時々、とってもグッタリするときがあります。
だからなのか、欠けていたり、足りなかったり、どこか他と違うことを、堂々と、これでもかって、できる人が、私をグッと引き寄せ、虜にします。

りおんくん、しおんくんもそういう人。
一緒に遊んでいると、こちらもとても自由な気分になる。
今回、石川さんと、りおんくん、しおんくんとお話ししてみたら、バラバラなのに、言葉にはできない心地よい時間が流れて、つい、時間を忘れて話し込んでしまいました。
双子の彼らはやっぱり不思議です。
私が大好きな、りおんくん、しおんくんの描く恐竜の絵は、二人自身によく似ているようにも見えるし、よく見ていたら、私にも、石川さんにも、いろんな人に見えてきました。
みんな、この絵の恐竜みたいに、自由に優しく吠えられたら、楽しいだろうな、とおもいます。
りおんくん、しおんくんは、やっぱりお絵描きモンスターです。

版画:蟹江 杏
【石川浩司のひとりでアッハッハー】
http://ukyup.sr44.info/【蟹江杏さんのホームページアドレス】
http://atelieranz.jp/