
※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『あんずとないしょ話』が2017年5月22日に発売されます(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。
子どもたちとのアートワークショップを数多く手がける版画家・蟹江杏さんが、子どもたちからこっそり聞いた「今」や「これから」を一枚の版画に仕立てる新連載です。前回は、東京・立川で老舗のすき焼きしゃぶしゃぶ専門店を経営する「じいじ」が作ってくれるオムライスが大好きなゆいちゃんとのないしょ話をご紹介。さて、どんな版画になったのでしょうか。ゆいちゃんじいじはオムライスをつくってくれます!
ケチャップでハートとか“ゆい”ってかいてくれるの。
それをくずすと、ゆい、ちょっとだけナミダでます。

版画:蟹江 杏
杏からゆいちゃんとないしょばなし。
小さな体、大きな声で、ごあいさつ。
パッツパツにいっぱい詰まった想像力。
私をワクワクしたお目々でジッと見つめて、「好き!」って言ってくれました。
今までされたどんな告白(残念ながら数少ないのですが)よりもピキッと心にささりました。
こんな子とお話すると、正しくいなきゃいけないと感じます。
正しいという定義は人それぞれだと誰かもいっていましたが、やっぱり正しく生きたいな、と思います。
私には具体的な神様はいないけど、ゆいちゃんが大人になって、悲しいことや辛いことがあったとき、持ち前の想像力でおじいちゃんのオムライスの味を思い出して、どんな事も乗り越えられる大人になってほしいな~、って一生懸命祈らずにはいられないのです。

写真:高尾 斉
杏さんが子どもたちからそっと聞き出すあんなこと、こんなこと。次回は、どんなアンズ・ワールドを描き出してくれるのでしょう。お楽しみに。【蟹江杏さんのホームページアドレス】
http://atelieranz.jp/
【かにえ・あんず】
画家。東京都出身。「NPO法人3.11こども文庫」理事長。「自由の森学園」卒業。ロンドンで版画を学ぶ。美術館、全国の百貨店や画廊で個展を開催。小説や絵本、エッセイなど著書多数。企業とのコラボレーションも多数手がけている。東日本大震災以降は、被災地の子どもたちに絵本・画材を届ける活動に携わり、福島県相馬市に絵本専門の文庫「にじ文庫」を設立。文部科学省復興教育支援事業のコーディネーターを務めるなど、全国の子どもたちとアートをつなぐ活動を展開している。これらの活動は、2021年にNHK BS1スペシャル「10年目の約束~福島の子どもたちが描いた“未来”~」で紹介された。雑誌「pen」クリエイターアワード2021「日本と世界を変えていく、2021年最も輝いた7組」で審査員特別賞を受賞。2023年、絵本『ハナはヘビがすき』(福音館書店)が「第14回ようちえん絵本大賞」を受賞。2024年5月末に初の小説『あの空の色がほしい』(河出書房新社)、6月に25周年記念『eyes -25th being an artist』(東海教育研究所)を刊行予定。