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きれいをつくる
カラダ美人のつくり方 東海大学医学部教授
石井直明×西崎泰弘
最終回 健やかに、豊かに、老いるために
 老化学の権威・石井直明先生とアンチエイジングドックの第一人者・西崎泰弘先生による対談もいよいよ最終回。アンチエイジングの可能性や近未来の話題をめぐり、若々しく老いるためのヒントを探ります。

※WEB連載原稿に加筆してまとめた単行本『アンチエイジング読本』を好評発売中です(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)。WEB連載「見た目年齢は体内の老化に比例する」はこちらをご覧ください。

――6月で開設9周年となる東海大学医学部付属東京病院「抗加齢(アンチエイジング)ドック」は、これまで多くの受診者の方々の協力と医師・受診者双方の信頼関係により、貴重なデータの蓄積があるとのことです。そこから新たなアンチエイジングの可能性が見えてきそうな予感がします。

石井 特にリピーターの方のデータは貴重です。5年、10年と一人の人を追跡することによって、初めてわかることがあるからです。例えば、持って生まれた遺伝子は生涯変わらないと思われがちですが、その働き方が環境によって変化するものもあります。さらにデータが蓄積されれば、10年後くらいには、ある病気のリスクがある遺伝子を持っていたとしても「こういう生活をすれば大丈夫です」と健康指導ができるようになるかもしれません。

西崎 アンチエイジングドックでは、健診の結果を説明するときに医師が30分ほど時間をとって説明します。すると、ほとんど受診者が納得して私たちの助言を守り、一生懸命に健康増進に努めてくれるようになる。その結果として多くは翌年のデータが改善します。このように、食事や運動などのアンチエイジング対策が実際によい結果に結びつくことをデータで確かめられるのは、私たちを信じて真面目に取り組んでくれる受診者のおかげだと思います。受診者が前向きになり心身ともに若くなって明らかに変わった姿を目の当たりにすることは、私たちの大きな喜びでもあります。

――アンチエイジングは、究極の予防医学ということを裏づけるものだと思います。一方、最近では、女優のアンジェリーナ・ジョリーが遺伝子変異による乳がんや卵巣がんのリスクをさけるために手術したことが大きな話題になりました。日本でも手軽な遺伝子検査キットが流通し始め、予防医学をめぐる情報は錯綜しているように思えます。

西崎 現状の遺伝子検査では、「あなたはこのような病気になる可能性が何パーセントあります」という形で結果が出ます。なんだか天気予報みたいな言い方ですが、どのように利用するかはその人自身の考え方でもありますね。アンジェリーナ・ジョリーの場合は乳がんと卵巣がんのリスクでしたが、たとえば大腸がんのリスクを指摘された場合、大腸を取り去ってしまうわけにはいきません。リスクを把握したうえで大腸がんになりにくい生活習慣を送り、定期的に検査をして備えることが必要となるわけです。

石井 ある病気を単体で考えると、確かに遺伝子の解析が進んでいます。しかし、アンチエイジングや生活習慣病は、必ずしも遺伝子だけではなく環境が大きく関与していることがわかっています。ある病気になるリスクの高い遺伝子を持っているからもうだめだ、というのではなく、アンチエイジングドックを受診して体の状態を知り、病気のリスクを避ける生活習慣に改善することが大事です。科学的根拠に基づく生活改善のアドバイスは、このアンチエイジングドックの約10年にわたるデータの蓄積で可能になりつつあると思います。

西崎 アンチエイジングに関する研究が医学の一分野として確立してきたことで、それを専門とする医師や看護師、栄養士などの医療従事者が増えています。また、日本ではビッグデータを活用して国民の健康増進を効率的に進め、保健指導を行うことで医療費を抑制しようという「データヘルス計画」が厚生労働省の主導で始まります。これは、メタボ健診やレセプト(診療報酬明細書)から集めたデータにより、健康保険加入者の健康保持・増進につながる事業計画を立案し、実施しようという取り組み。つまり、国がらみで一次予防に取り組もうとしていうわけです。究極の一次予防であるアンチエイジングは、ますます重要になってきますから、若い世代を含む多くの人に関心を持ってもらいたいと思います。

――石井先生の新著『アンチエイジング読本』では、老化のメカニズムやその対処法、アンチエイジング・ライフのために大切な食生活のことなどがわかりやすく解説されています。巻末には、西崎先生が東海大学医学部付属東京病院の「抗加齢(アンチエイジング)ドック」についての詳しい紹介もあります。ぜひお読みください!

「抗加齢(アンチエイジング)ドック」がある東海大学医学部付属東京病院の前で
石井教授(左)と西崎教授


(構成・編集部)
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【いしい・なおあき×にしざき・やすひろ】
石井直明:1951年神奈川県生まれ。東海大学医学部教授。同大学ライフケアセンター長。日本基礎老化学会理事長。医学博士。著書に『分子レベルで見る老化』(講談社)、『専門医がやさしく教える老化判定&アンチエイジング』(共著、PHP研究所)など。
西崎泰弘:1961年兵庫県生まれ。東海大学医学部教授。同大学医学部付属東京病院副院長。同大学ライフケアセンター副センター長。日本総合健診医学会副理事長。著書に『イラスト図解 検査の仕組み・検査値の読み方』(日本実業出版社)、『専門医がやさしく教える老化判定&アンチエイジング』(共著、PHP研究所)など。
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