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食べるしあわせ
ようこそマナブちゃん食堂へ 東海大学農学部名誉教授
片野 學
最終回 千客万来、来る人拒まず
 農学部の研究室で8年間、ほぼ毎日のように続いた片野先生と学生との手づくりお昼ごはん――「マナブちゃん食堂」の魅力を紹介する連載の最終回。「とにかくしっかり噛む食事」を続けることで、学生たちにある変化が出てきたそうです。

※この記事は、好評発売中の『頭が良くなる食生活』(発行:東海教育研究所、発売:東海大学出版部)の第6章・第7章を再構成し、その一部を書籍未掲載の写真や文章とともにまとめたものです。WEB連載「頭が良くなる食生活」はこちらをご覧ください。

便秘・吹き出物・冷え症さんも大歓迎

撮影:新本真太郎(スタジオ サラ)
 2006年度の男子学生はとても仲がよく、玄米十穀ご飯の食べる量を面白がって競い合っていました。どんぶり鉢にてんこ盛り、おかげでウンコの量も半端ではなくなっていたようです。
 ある日のこと、四年生の一人が「今朝、和式水洗トレイで用を足したのですが、トグロが尻の穴にくっつきました」と報告してくれました。トグロが一重や二重では尻に到達することはできません。とすると五重、六重になっていたことが想像されます。きっとスッキリ感も抜群だったことでしょう。

撮影:新本真太郎(スタジオ サラ)
 このように、食物繊維たっぷり、見た目にも鮮やかなマナブちゃん食堂のお昼ごはんを毎日食べていると、学生諸君にさまざまな変化が現れます。イライラしなくなり、便秘も解消、肌の色つやもよくなるといいます。玄米飯ですから腹持ちがよく、スナック菓子やアイスクリームなどを間食する必要もなくなります。過剰な砂糖と油、塩分、食品添加物の摂取量も当然減ります。

手づくり料理で笑顔の花が咲く
 「来る人拒まず、去る人追わず」が私のモットーです。そのため、マナブちゃん食堂の利用者は、私の研究室(作物学研究室)の学生だけではありません。学生たちの友人や私の授業を受講する学生もマナブちゃん食堂の噂を聞きつけ、「ぜひ、食べてみたい」ということでランチタイムにやって来るようになりました。もちろん、彼らの食事代も私のポケットマネーから捻出。ただし、「食べに来るなら、調理や後片づけを手伝ってください」という条件を付けました。

撮影:新本真太郎(スタジオ サラ)
  そのうち、農業関係者や卒業生や学生の両親、出版社や新聞社など、学外のお客さんにもできるだけお昼どきに来ていただき、一緒にごはんを食べながら用件をうかがうようになりました。マナブちゃん食堂を開店したおかげで、作物学研究室にはさまざまな分野のお客さんがやってきました。その方々とお昼ごはんを食べながら懇談する時間は、学生諸君にとってもまたとない社会勉強の機会になったと思います。

        * * * * * *

2014年2月28日、マナブちゃん食堂・最後の食事 ※撮影:片野 學
 毎日の食事は「食べればいい」「おなかはいっぱいになればいい」というものではありません。まして、「先生、私たちの食事はエサですよ」と、学生たちからしばしば聞いてきた世界ではありません。マナブちゃん食堂は「食は芸術なり」という世界があることを知らせ、教える実践でもあったのです。

(構成・編集部)
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【かたの・まなぶ】
1948年東京都生まれ。東京大学農学部農業生物学科卒業後、イネの根に魅せられて大学院に進学。農学博士。食生活の実践と研究を通して、食と農の重要性を訴えている。
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